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Ⅳ.追う者、追われる者
2対2
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「…だったらどうした?」
ヴァルスの声色は自然、段々と低く、不機嫌なものへと変化してゆく。
そして、それにさして構うこともなく、ケイオスはヴァルスを煽り続ける。
「つまり…だ、お前の弱点は、それ以外の属性だと言うことだ。
風と土以外… となるとお前に一番てきめんに作用するであろう属性は──」
「…僕の、水だ」
勝ち誇ったように高飛車な笑みを見せたゼオンが、目を細める。
その手には力を持て余したかのような、水の魔術があった。
「…これに見覚えがあるだろう? ヴァルス…
そう、恐らくはお前が最も苦手とするであろう、六花の氷だよ」
「!…っ」
刹那、先程の様子からは打って変わって、ヴァルスが忌々しげに歯を軋ませた。
そんなヴァルスを嘲笑うかのように、その水の魔術は、若干の不確定要素を孕みながらも、その規模自体はゼオンの手の中で、徐々にではあるが肥大していく。
…ヴァルスの頬には、得体の知れない冷や汗が伝う。
しかし、そんなヴァルスの怯みを、そして攻勢へと出なかったことを…
それら全てを纏めて叩き潰したのは、更に冷酷なものへと変化した、ユイの言葉だった。
「ヴァルス! 怯むくらいなら戦うな!
初めから恐れを抱き、怯む者の加勢など、必要ない!」
「!ユイ…」
ヴァルスが驚きながらも、一方で、どこか突き放された感を、その表情に露呈する。
それに、ユイはわずかに殺気を込めることで鋭くなった目で、ヴァルスを威嚇しながらも、頑なな態度を崩すことなく、厳しく先を続ける。
「それでもまだ俺と共闘するつもりなら、迷いや怯みは捨てろ!
ヴァルス、お前、それでも幹部クラス…
否、Break Gunsの副総統か!」
『!?』
瞬間、このユイの檄に、反射にも近い速さで顔を見合わせたのは、言うまでもなくケイオスとゼオンの二人だった。
その二人の頬には意図せぬ冷や汗が伝う。
それは組織の幹部クラス内でも、“副総統の正体”…
それ自体が、幹部クラスにも知らされていない、全くのトップシークレットだったからに他ならない。
「…な…何だと…!? ヴァルスが… ヴァルスが、副総統…!?」
「あのヴァルスがっ…!?」
狂犬コンビの名に相応しく、それまで好戦的だったはずの二人は、あまりの驚きに絶句し…
攻撃を仕掛けることも忘れたまま、ヴァルスの顔を、穴のあくほどまじまじと見つめた。
その当のヴァルスは、軽く息を付きつつも肩を竦めた。
「悪かったよ… だけどユイ、それを今ここでバラしてどうするの?
本来、副総統の正体は、トップシークレットなはずだろう?」
「…まあな」
ヴァルスにちょっとした報復を食らったユイは、どこか投げやりにそう答えると、一転してヴァルスの正体を聞いて怯んだ、ケイオスとゼオンに鋭い目を向けた。
「場所を変えるぞ。ここでなど戦ったら、言うまでもなくログランドが黙ってはいないからな」
「そうだね…雷くらいは落ちるかもね」
あはは、と屈託なく笑ったヴァルスに、ログランドはそれのみで射殺すことが可能な程の、冷めた視線を向けた。
「当たり前です」
「…やっぱりね」
先程から、密かに怒っているが故に、自分に向けても敬語を使っているログランドの嫌味な精神攻撃に、それに気付かないはずもないヴァルスの笑みが凍りつく。
対して、この一連の言動からして、やはり彼が組織の副総統とは思えない…と暗に判断したらしい、その当の組織からの刺客二人は、顔を見合わせると、瞬時にその攻の感情を盛り返す。
「…ログランドに睨まれるのは、こっちも御免だからな。
場所を移すことには賛成だ」
ヴァルスの声色は自然、段々と低く、不機嫌なものへと変化してゆく。
そして、それにさして構うこともなく、ケイオスはヴァルスを煽り続ける。
「つまり…だ、お前の弱点は、それ以外の属性だと言うことだ。
風と土以外… となるとお前に一番てきめんに作用するであろう属性は──」
「…僕の、水だ」
勝ち誇ったように高飛車な笑みを見せたゼオンが、目を細める。
その手には力を持て余したかのような、水の魔術があった。
「…これに見覚えがあるだろう? ヴァルス…
そう、恐らくはお前が最も苦手とするであろう、六花の氷だよ」
「!…っ」
刹那、先程の様子からは打って変わって、ヴァルスが忌々しげに歯を軋ませた。
そんなヴァルスを嘲笑うかのように、その水の魔術は、若干の不確定要素を孕みながらも、その規模自体はゼオンの手の中で、徐々にではあるが肥大していく。
…ヴァルスの頬には、得体の知れない冷や汗が伝う。
しかし、そんなヴァルスの怯みを、そして攻勢へと出なかったことを…
それら全てを纏めて叩き潰したのは、更に冷酷なものへと変化した、ユイの言葉だった。
「ヴァルス! 怯むくらいなら戦うな!
初めから恐れを抱き、怯む者の加勢など、必要ない!」
「!ユイ…」
ヴァルスが驚きながらも、一方で、どこか突き放された感を、その表情に露呈する。
それに、ユイはわずかに殺気を込めることで鋭くなった目で、ヴァルスを威嚇しながらも、頑なな態度を崩すことなく、厳しく先を続ける。
「それでもまだ俺と共闘するつもりなら、迷いや怯みは捨てろ!
ヴァルス、お前、それでも幹部クラス…
否、Break Gunsの副総統か!」
『!?』
瞬間、このユイの檄に、反射にも近い速さで顔を見合わせたのは、言うまでもなくケイオスとゼオンの二人だった。
その二人の頬には意図せぬ冷や汗が伝う。
それは組織の幹部クラス内でも、“副総統の正体”…
それ自体が、幹部クラスにも知らされていない、全くのトップシークレットだったからに他ならない。
「…な…何だと…!? ヴァルスが… ヴァルスが、副総統…!?」
「あのヴァルスがっ…!?」
狂犬コンビの名に相応しく、それまで好戦的だったはずの二人は、あまりの驚きに絶句し…
攻撃を仕掛けることも忘れたまま、ヴァルスの顔を、穴のあくほどまじまじと見つめた。
その当のヴァルスは、軽く息を付きつつも肩を竦めた。
「悪かったよ… だけどユイ、それを今ここでバラしてどうするの?
本来、副総統の正体は、トップシークレットなはずだろう?」
「…まあな」
ヴァルスにちょっとした報復を食らったユイは、どこか投げやりにそう答えると、一転してヴァルスの正体を聞いて怯んだ、ケイオスとゼオンに鋭い目を向けた。
「場所を変えるぞ。ここでなど戦ったら、言うまでもなくログランドが黙ってはいないからな」
「そうだね…雷くらいは落ちるかもね」
あはは、と屈託なく笑ったヴァルスに、ログランドはそれのみで射殺すことが可能な程の、冷めた視線を向けた。
「当たり前です」
「…やっぱりね」
先程から、密かに怒っているが故に、自分に向けても敬語を使っているログランドの嫌味な精神攻撃に、それに気付かないはずもないヴァルスの笑みが凍りつく。
対して、この一連の言動からして、やはり彼が組織の副総統とは思えない…と暗に判断したらしい、その当の組織からの刺客二人は、顔を見合わせると、瞬時にその攻の感情を盛り返す。
「…ログランドに睨まれるのは、こっちも御免だからな。
場所を移すことには賛成だ」
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