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Ⅳ.追う者、追われる者
属性相性
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…その、路地裏にしてはそれなりにスペースのある場所で、先にその場に足を運んだユイは、立ったまま、軽く腕を組む形で、後続の三人を待っていた。
程なく三人がそれに追いついて来る。
ヴァルスはユイに追い付き、その全身を間近で確認出来る位置まで来ると、ユイの左隣に並ぶ形で、後から来た二人と向き合った。
形式としては2対2。
知り得るこちらの属性は、自分の持つ魔術・雷。
対して、相手側は風と水。
…かの台詞通りとなるが、ヴァルスは風と土の、両属性の魔術を極めている。
つまり、風を操るケイオスを相手にするのなら、言うまでもなく、単純にどちらの風の魔術の力量が上か…
ただそれのみで、勝敗が決まる。
問題はゼオンを相手どる場合だ。
本人も再三提示している通り、ゼオンの属性は水。
水の魔術は、基本となる風火水土の四属性のうち、唯一、水という名の液体を媒介として興される。
すなわち風のみでは、防ぐことこそ出来ても、攻撃として出来るのは、“切り裂くこと”、それ止まりだ。
ただ、当然ながら、幾ら切り裂いたところで、水としての実体は確実に残る。
つまり、風の魔術を水の魔術にぶつけることは得策ではない。
更に、こちらには不確定要素がひとつだけある。
それはユイの魔術の属性だ。
ふつう、組織の…それも幹部という高位の位置にあれば、その使う魔術の規模も、魔力を基盤にした元々のレベルも、一般の者とは遥かにかけ離れているのが事実だ。
そしてその魔術は、ケイオスやゼオンのように、ひとつの属性を極限まで高め得た者、或いは、自分のように2つの属性を極めることで、新しい属性を使えるようになった者…
そのどちらかに、確実に分かれる。
それ故に今まで組織は、四属性を、そしてそれ以上の属性を極めた力ある者を、意図的に幹部として組み込んで来たのだ。
…それがどうだ。
同じ幹部クラスに属している自分でさえが、未だにユイの属性は分からない。
組織内で小耳に挟んだ話では、ヴィルザーク家にちょっかいを掛けたカインが、ユイの風の魔術によって、腕を切り飛ばされ敗北したらしいが、それが事実だとすれば、ユイの持つ魔術とは、間違いなく風の──
…と、そこまでヴァルスが考えた時。
ユイの呟きがそれを遮った。
「ヴァルス…また女のことでも考えているのか?」
「!」
あまりにも唐突な指摘に、ヴァルスは瞬間、勢い良く首を左右に振った。
「まさか! 今はそんなことを考えてる場合じゃ──」
「珍しく分別はついているようだな」
「…相変わらず一言余計だよね、ユイ」
ヴァルスは半眼でユイを見やる。
そのユイは口元に不敵な笑みを浮かべた。
「奴らを甘く見るのは勝手だが、要らんとばっちりを食うのだけは御免だからな。
まあ、好きこのんで死にたければ、それも構わないが」
「…全く…いつもながらフォローもへったくれもないよね、ユイは。
そんなところも相変わらず…か」
ヴァルスがたまらずに息をつくと、ユイはじろりとヴァルスを睨んだ。
「いちいち煩いぞ。お前、本当に応戦する気があるのか?」
「勿論!」
ヴァルスは楽しげに、しかしきっぱりと答える。
「幹部クラスと公然と戦える機会なんて、滅多にないからね。
いい機会だから、とことんやらせて貰うさ」
言いながらもヴァルスは、その右手に、見た目からして畏怖に戦慄するような、強力な雷の魔術を編成する。
ヴァルスの手を覆う、小さいが途方もない威力を持つであろう、眩い雷の蔦。
その光と、それと対極とも取れる術のあまりの刺々しさに、ケイオスとゼオンの瞳には、ほんの一瞬ながら、深い警戒の色が露わに浮かんだ。
程なく三人がそれに追いついて来る。
ヴァルスはユイに追い付き、その全身を間近で確認出来る位置まで来ると、ユイの左隣に並ぶ形で、後から来た二人と向き合った。
形式としては2対2。
知り得るこちらの属性は、自分の持つ魔術・雷。
対して、相手側は風と水。
…かの台詞通りとなるが、ヴァルスは風と土の、両属性の魔術を極めている。
つまり、風を操るケイオスを相手にするのなら、言うまでもなく、単純にどちらの風の魔術の力量が上か…
ただそれのみで、勝敗が決まる。
問題はゼオンを相手どる場合だ。
本人も再三提示している通り、ゼオンの属性は水。
水の魔術は、基本となる風火水土の四属性のうち、唯一、水という名の液体を媒介として興される。
すなわち風のみでは、防ぐことこそ出来ても、攻撃として出来るのは、“切り裂くこと”、それ止まりだ。
ただ、当然ながら、幾ら切り裂いたところで、水としての実体は確実に残る。
つまり、風の魔術を水の魔術にぶつけることは得策ではない。
更に、こちらには不確定要素がひとつだけある。
それはユイの魔術の属性だ。
ふつう、組織の…それも幹部という高位の位置にあれば、その使う魔術の規模も、魔力を基盤にした元々のレベルも、一般の者とは遥かにかけ離れているのが事実だ。
そしてその魔術は、ケイオスやゼオンのように、ひとつの属性を極限まで高め得た者、或いは、自分のように2つの属性を極めることで、新しい属性を使えるようになった者…
そのどちらかに、確実に分かれる。
それ故に今まで組織は、四属性を、そしてそれ以上の属性を極めた力ある者を、意図的に幹部として組み込んで来たのだ。
…それがどうだ。
同じ幹部クラスに属している自分でさえが、未だにユイの属性は分からない。
組織内で小耳に挟んだ話では、ヴィルザーク家にちょっかいを掛けたカインが、ユイの風の魔術によって、腕を切り飛ばされ敗北したらしいが、それが事実だとすれば、ユイの持つ魔術とは、間違いなく風の──
…と、そこまでヴァルスが考えた時。
ユイの呟きがそれを遮った。
「ヴァルス…また女のことでも考えているのか?」
「!」
あまりにも唐突な指摘に、ヴァルスは瞬間、勢い良く首を左右に振った。
「まさか! 今はそんなことを考えてる場合じゃ──」
「珍しく分別はついているようだな」
「…相変わらず一言余計だよね、ユイ」
ヴァルスは半眼でユイを見やる。
そのユイは口元に不敵な笑みを浮かべた。
「奴らを甘く見るのは勝手だが、要らんとばっちりを食うのだけは御免だからな。
まあ、好きこのんで死にたければ、それも構わないが」
「…全く…いつもながらフォローもへったくれもないよね、ユイは。
そんなところも相変わらず…か」
ヴァルスがたまらずに息をつくと、ユイはじろりとヴァルスを睨んだ。
「いちいち煩いぞ。お前、本当に応戦する気があるのか?」
「勿論!」
ヴァルスは楽しげに、しかしきっぱりと答える。
「幹部クラスと公然と戦える機会なんて、滅多にないからね。
いい機会だから、とことんやらせて貰うさ」
言いながらもヴァルスは、その右手に、見た目からして畏怖に戦慄するような、強力な雷の魔術を編成する。
ヴァルスの手を覆う、小さいが途方もない威力を持つであろう、眩い雷の蔦。
その光と、それと対極とも取れる術のあまりの刺々しさに、ケイオスとゼオンの瞳には、ほんの一瞬ながら、深い警戒の色が露わに浮かんだ。
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