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Ⅵ.因縁の魔窟
最側近対策
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「…で? その“ロゼ様”が来るだろうと踏んだこっちは、今後はどう動くつもりなわけ?」
「粗方の予測は付いているだろう?」
ユイはセレンの様子を見やりながら呟く。
セレンは相変わらず墓をきつく抱きしめ、小刻みに肩を震わせている…
泣き声すらも枯れ果て、次々に湧き上がる悲しみを抑えきれない。
やり場のない絶望と悲しみが、今の彼女の全てを包んでいるのは、端から見ても…
後ろ姿からでも、痛い程に…分かる。
…だが、そんな思いをさせたのは組織。
全ての負の感情を味わわせたのは組織。
そしてその“組織”・Break Gunsに、以前の自分は副総統として、当然のように存在していた…!
陰で泣き、怒りに吠え、憎しみにまみれ…
更には絶望にうちひしがれる人間のことを、全く知らなかった訳ではない。
だが…痛い。こうまで間近で、その感情を見たことが無かっただけに。
身をずたずたに引き裂かれそうな悲しみを
底の底にまで突き落とされる程の絶望を…
“知らなかっただけに”。
「…そっか」
…ヴァルスが、悲嘆にくれ、肩を落としたままのセレンを、瞳に映すユイの複雑な心境を察したのか、ふと、寂しげな笑みを浮かべた。
「そういえばお前は、組織に居た時…
外に姿を見せることなんか殆どないまま、組織内で、加害者の断罪ばかりやって来たんだもんな…」
「……」
…そうだ。
殺して来たのは、組織に盾突く者。
自分に牙を剥く者。
その、全て──
「セレンを見て、迷いが出たんだろう?」
ヴァルスが的確にユイの心情を看破する。
「…、それは正直、俺も同じだよ…ユイ。
セレンを見てると、今までの自分は、一体何をしてたんだろうかって…
…今更ながら、相手を殺す以外の選択肢は無かったんだろうかって…
そんなふうに思えて来る」
「…、ああ、そうだな…
そして、それがまともな人間の…
組織以外の人間が持つ感情なんだろう」
「だったら… ユイ、俺が今、何を考えているのか、分かる?」
「ああ。その当の、“組織の人間”には、あるまじきことだろう?」
「…正解」
ヴァルスは軽く頷いた。
「ユイ、ロゼ様の… いや、ロゼの相手は俺がする。
総統の最側近である奴の動きを止めれば、軒並み怪我を負っているはずの幹部連中の動きは、しばらくの間は凍結するはずだ。
…ある意味、これが最大にして最高のチャンスだろうな…
…、俺にやらせてくれるか? ユイ」
「だが、構わないのか? ロゼは──
奴の存在は、お前にとっては…」
ヴァルスは頷いた。
「うん…確かにあの人は、組織内ではそれこそ兄貴みたいな、絶対的に上の存在だ。
けど、だからこそ、セレンを害し、ユイと敵対して事を構えるあの人は…許せないってのがあるんだよ」
「…気持ちは分かるが、ロゼは強いぞ。
お前が弱いなどとは決して思ってはいないが…ロゼの強さは、幹部クラスの中でも、群を抜いている。
俺の見立てでは、お前と奴の魔力は、ほぼ互角…
それでもやるのか?」
「やるよ」
「実質、殺されることになってもか?」
「やるってば」
「…女が絡んでいなくてもか?」
「!あのねぇ、ユイ!」
瞬間、さすがにこめかみがひきつったヴァルスが、声を上げた。
それをユイは、片手を挙げることで抑え、宥めると、次には不敵に笑った。
「冗談だ。…どうやら本気らしいからな。
こうなれば俺も、そのバックアップを前提として動かせて貰うか」
「…さり気なく試す辺りが、いつもながら性悪な…」
「何か言ったか?」
ユイの言葉による茨の棘に、ヴァルスは、拗ねた子どものように口を尖らせて返す。
「粗方の予測は付いているだろう?」
ユイはセレンの様子を見やりながら呟く。
セレンは相変わらず墓をきつく抱きしめ、小刻みに肩を震わせている…
泣き声すらも枯れ果て、次々に湧き上がる悲しみを抑えきれない。
やり場のない絶望と悲しみが、今の彼女の全てを包んでいるのは、端から見ても…
後ろ姿からでも、痛い程に…分かる。
…だが、そんな思いをさせたのは組織。
全ての負の感情を味わわせたのは組織。
そしてその“組織”・Break Gunsに、以前の自分は副総統として、当然のように存在していた…!
陰で泣き、怒りに吠え、憎しみにまみれ…
更には絶望にうちひしがれる人間のことを、全く知らなかった訳ではない。
だが…痛い。こうまで間近で、その感情を見たことが無かっただけに。
身をずたずたに引き裂かれそうな悲しみを
底の底にまで突き落とされる程の絶望を…
“知らなかっただけに”。
「…そっか」
…ヴァルスが、悲嘆にくれ、肩を落としたままのセレンを、瞳に映すユイの複雑な心境を察したのか、ふと、寂しげな笑みを浮かべた。
「そういえばお前は、組織に居た時…
外に姿を見せることなんか殆どないまま、組織内で、加害者の断罪ばかりやって来たんだもんな…」
「……」
…そうだ。
殺して来たのは、組織に盾突く者。
自分に牙を剥く者。
その、全て──
「セレンを見て、迷いが出たんだろう?」
ヴァルスが的確にユイの心情を看破する。
「…、それは正直、俺も同じだよ…ユイ。
セレンを見てると、今までの自分は、一体何をしてたんだろうかって…
…今更ながら、相手を殺す以外の選択肢は無かったんだろうかって…
そんなふうに思えて来る」
「…、ああ、そうだな…
そして、それがまともな人間の…
組織以外の人間が持つ感情なんだろう」
「だったら… ユイ、俺が今、何を考えているのか、分かる?」
「ああ。その当の、“組織の人間”には、あるまじきことだろう?」
「…正解」
ヴァルスは軽く頷いた。
「ユイ、ロゼ様の… いや、ロゼの相手は俺がする。
総統の最側近である奴の動きを止めれば、軒並み怪我を負っているはずの幹部連中の動きは、しばらくの間は凍結するはずだ。
…ある意味、これが最大にして最高のチャンスだろうな…
…、俺にやらせてくれるか? ユイ」
「だが、構わないのか? ロゼは──
奴の存在は、お前にとっては…」
ヴァルスは頷いた。
「うん…確かにあの人は、組織内ではそれこそ兄貴みたいな、絶対的に上の存在だ。
けど、だからこそ、セレンを害し、ユイと敵対して事を構えるあの人は…許せないってのがあるんだよ」
「…気持ちは分かるが、ロゼは強いぞ。
お前が弱いなどとは決して思ってはいないが…ロゼの強さは、幹部クラスの中でも、群を抜いている。
俺の見立てでは、お前と奴の魔力は、ほぼ互角…
それでもやるのか?」
「やるよ」
「実質、殺されることになってもか?」
「やるってば」
「…女が絡んでいなくてもか?」
「!あのねぇ、ユイ!」
瞬間、さすがにこめかみがひきつったヴァルスが、声を上げた。
それをユイは、片手を挙げることで抑え、宥めると、次には不敵に笑った。
「冗談だ。…どうやら本気らしいからな。
こうなれば俺も、そのバックアップを前提として動かせて貰うか」
「…さり気なく試す辺りが、いつもながら性悪な…」
「何か言ったか?」
ユイの言葉による茨の棘に、ヴァルスは、拗ねた子どものように口を尖らせて返す。
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