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Ⅵ.因縁の魔窟
果てしない力
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「どうせ聞こえてんだろ。俺だってねぇ、やる時ゃやるってことだよ」
「槍が降るな」
「ひと言多いんだよ。それより、ここまで言えばもう分かるだろ?
…俺がロゼの相手をするから、ユイはその間に──」
「…総統と、か…」
ユイは我知らず拳を固める。
…あの日、袂を分かった時から…
いつかこんな日が来ることは解っていた。
…思い出すのは、絶対零度の冷気を帯びた瞳。
その、尋常ならぬカリスマ性──
こちらの言い分を聞いて貰うという意味合いでの“話し合い”が、一切、通用しない相手なのは、とうに理解している。
それは彼が暗殺組織の総統という立場で、広範囲に渡っての裏の人間の頂点に立ち、纏める人物であることからも、疑いようはない。
…気に入らぬ者、意に染まぬ者は容赦なく殺し、更に逆らい遮る者をも、ことごとく殺める…
自身すらも超一流の犯罪者でありながら、なおかつ平然と人々を抹殺・虐殺する裏の残虐な人種を、事もなげに纏め使役する、冷美な組織の長。
暗殺組織・Break Gunsの“総統”…!
「…確かに、トカゲの尻尾切りを繰り返されるよりは、総統ひとりを潰した方が、遥かに効率がいいのは確かだ」
「…へぇ、その口振りだと──」
「俺は元々、組織を潰すつもりでいた」
ユイが自意識を、はっきりと口にする。
「当初から光に当たらず、常に裏に、闇に徹していた組織ではあったが…
その“組織”としての、ここ数年の歪みと権力の拡大は、明らかに度が過ぎている。
…Break Gunsは、もはやひとつふたつの国どころでは済まないスキルを持つ所まで来ている。
となれば言うまでもなく、これ以上の巨大化と増長は、阻止しなければならない…」
「…で、そこに降って湧いたかのような、今回の件…ね。
ユイ…、今更だけど、これって何だかきな臭くない?」
「確かにな。俺の意図は総統も読んでいるんだろうし…
だが、だとすれば…だ、俺が自身の意思で動いていたつもりが、実は誘導されていた、といった事実も、今までの言動であったのかも知れないな」
「それは…まんまと思惑に乗せられたってことか?」
「いや、それは総統側の捉え方次第だ。
俺は彼の思惑通りに動いてやる気は、更々ないからな」
「例え、結果がそうなっていたとしても…か?」
「? …何をそう懸念する」
ユイは、強く覚えた疑問を、そのまま表情へとさらけ出した。
「セレンの存在だよ」
ヴァルスはきっぱりと答えた。
「確かに、ユイは元からBreak Gunsを潰すつもりでいたのかも知れない…
でも、その“元から”に、セレンの存在は入っていた?」
「……」
ユイは伏せ目がちに黙り込む。
ヴァルスはそんなユイに、自答を求めるように問い続ける。
「…総統がセレンをどう見るか、どういう扱いをするかは分からないけど、今のままじゃ、明らかにこちらが不利…ってことは分かるだろ?」
「分かっている」
ユイは即答した。
…その瞳が、組織に居たあの頃のように…
鋭く、それでいて無機質に冷たく尖ってゆくのを、ヴァルスは何かを確信するかのように見据えていた。
「…けど、その状態なら無用の心配かな」
「ああ。お前の言う所の“元から”には、お前自身がロゼを相手にするという筋書きは無かったからな」
「!」
ヴァルスは驚きに、大きく目を見開いた。
「ってことは…何? ユイ。
もし俺がロゼの相手をしなければ、お前が…だったってこと?」
「…? 当然だろう?」
ユイは、その問いそのものに、何を今更と眉をひそめる。
「お前が自らの意思で、そう言い出すとは思わなかったからな」
「槍が降るな」
「ひと言多いんだよ。それより、ここまで言えばもう分かるだろ?
…俺がロゼの相手をするから、ユイはその間に──」
「…総統と、か…」
ユイは我知らず拳を固める。
…あの日、袂を分かった時から…
いつかこんな日が来ることは解っていた。
…思い出すのは、絶対零度の冷気を帯びた瞳。
その、尋常ならぬカリスマ性──
こちらの言い分を聞いて貰うという意味合いでの“話し合い”が、一切、通用しない相手なのは、とうに理解している。
それは彼が暗殺組織の総統という立場で、広範囲に渡っての裏の人間の頂点に立ち、纏める人物であることからも、疑いようはない。
…気に入らぬ者、意に染まぬ者は容赦なく殺し、更に逆らい遮る者をも、ことごとく殺める…
自身すらも超一流の犯罪者でありながら、なおかつ平然と人々を抹殺・虐殺する裏の残虐な人種を、事もなげに纏め使役する、冷美な組織の長。
暗殺組織・Break Gunsの“総統”…!
「…確かに、トカゲの尻尾切りを繰り返されるよりは、総統ひとりを潰した方が、遥かに効率がいいのは確かだ」
「…へぇ、その口振りだと──」
「俺は元々、組織を潰すつもりでいた」
ユイが自意識を、はっきりと口にする。
「当初から光に当たらず、常に裏に、闇に徹していた組織ではあったが…
その“組織”としての、ここ数年の歪みと権力の拡大は、明らかに度が過ぎている。
…Break Gunsは、もはやひとつふたつの国どころでは済まないスキルを持つ所まで来ている。
となれば言うまでもなく、これ以上の巨大化と増長は、阻止しなければならない…」
「…で、そこに降って湧いたかのような、今回の件…ね。
ユイ…、今更だけど、これって何だかきな臭くない?」
「確かにな。俺の意図は総統も読んでいるんだろうし…
だが、だとすれば…だ、俺が自身の意思で動いていたつもりが、実は誘導されていた、といった事実も、今までの言動であったのかも知れないな」
「それは…まんまと思惑に乗せられたってことか?」
「いや、それは総統側の捉え方次第だ。
俺は彼の思惑通りに動いてやる気は、更々ないからな」
「例え、結果がそうなっていたとしても…か?」
「? …何をそう懸念する」
ユイは、強く覚えた疑問を、そのまま表情へとさらけ出した。
「セレンの存在だよ」
ヴァルスはきっぱりと答えた。
「確かに、ユイは元からBreak Gunsを潰すつもりでいたのかも知れない…
でも、その“元から”に、セレンの存在は入っていた?」
「……」
ユイは伏せ目がちに黙り込む。
ヴァルスはそんなユイに、自答を求めるように問い続ける。
「…総統がセレンをどう見るか、どういう扱いをするかは分からないけど、今のままじゃ、明らかにこちらが不利…ってことは分かるだろ?」
「分かっている」
ユイは即答した。
…その瞳が、組織に居たあの頃のように…
鋭く、それでいて無機質に冷たく尖ってゆくのを、ヴァルスは何かを確信するかのように見据えていた。
「…けど、その状態なら無用の心配かな」
「ああ。お前の言う所の“元から”には、お前自身がロゼを相手にするという筋書きは無かったからな」
「!」
ヴァルスは驚きに、大きく目を見開いた。
「ってことは…何? ユイ。
もし俺がロゼの相手をしなければ、お前が…だったってこと?」
「…? 当然だろう?」
ユイは、その問いそのものに、何を今更と眉をひそめる。
「お前が自らの意思で、そう言い出すとは思わなかったからな」
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