†Break Guns†

如月統哉

文字の大きさ
56 / 65
Ⅵ.因縁の魔窟

果てしない力

しおりを挟む
「どうせ聞こえてんだろ。俺だってねぇ、やる時ゃやるってことだよ」
「槍が降るな」
「ひと言多いんだよ。それより、ここまで言えばもう分かるだろ?
…俺がロゼの相手をするから、ユイはその間に──」

「…総統と、か…」

ユイは我知らず拳を固める。
…あの日、袂を分かった時から…
いつかこんな日が来ることは解っていた。


…思い出すのは、絶対零度の冷気を帯びた瞳。
その、尋常ならぬカリスマ性──


こちらの言い分を聞いて貰うという意味合いでの“話し合い”が、一切、通用しない相手なのは、とうに理解している。
それは彼が暗殺組織の総統という立場で、広範囲に渡っての裏の人間の頂点に立ち、纏める人物であることからも、疑いようはない。

…気に入らぬ者、意に染まぬ者は容赦なく殺し、更に逆らい遮る者をも、ことごとく殺める…
自身すらも超一流の犯罪者でありながら、なおかつ平然と人々を抹殺・虐殺する裏の残虐な人種を、事もなげに纏め使役する、冷美な組織の長。


暗殺組織・Break Gunsの“総統”…!


「…確かに、トカゲの尻尾切りを繰り返されるよりは、総統ひとりを潰した方が、遥かに効率がいいのは確かだ」
「…へぇ、その口振りだと──」
「俺は元々、組織を潰すつもりでいた」

ユイが自意識を、はっきりと口にする。

「当初から光に当たらず、常に裏に、闇に徹していた組織ではあったが…
その“組織”としての、ここ数年の歪みと権力の拡大は、明らかに度が過ぎている。
…Break Gunsは、もはやひとつふたつの国どころでは済まないスキルを持つ所まで来ている。
となれば言うまでもなく、これ以上の巨大化と増長は、阻止しなければならない…」

「…で、そこに降って湧いたかのような、今回の件…ね。
ユイ…、今更だけど、これって何だかきな臭くない?」
「確かにな。俺の意図は総統も読んでいるんだろうし…
だが、だとすれば…だ、俺が自身の意思で動いていたつもりが、実は誘導されていた、といった事実も、今までの言動であったのかも知れないな」
「それは…まんまと思惑に乗せられたってことか?」

「いや、それは総統側の捉え方次第だ。
俺は彼の思惑通りに動いてやる気は、更々ないからな」

「例え、結果がそうなっていたとしても…か?」
「? …何をそう懸念する」

ユイは、強く覚えた疑問を、そのまま表情へとさらけ出した。

「セレンの存在だよ」

ヴァルスはきっぱりと答えた。

「確かに、ユイは元からBreak Gunsを潰すつもりでいたのかも知れない…
でも、その“元から”に、セレンの存在は入っていた?」
「……」

ユイは伏せ目がちに黙り込む。
ヴァルスはそんなユイに、自答を求めるように問い続ける。

「…総統がセレンをどう見るか、どういう扱いをするかは分からないけど、今のままじゃ、明らかにこちらが不利…ってことは分かるだろ?」
「分かっている」

ユイは即答した。
…その瞳が、組織に居たあの頃のように…
鋭く、それでいて無機質に冷たく尖ってゆくのを、ヴァルスは何かを確信するかのように見据えていた。

「…けど、その状態なら無用の心配かな」
「ああ。お前の言う所の“元から”には、お前自身がロゼを相手にするという筋書きは無かったからな」
「!」

ヴァルスは驚きに、大きく目を見開いた。

「ってことは…何? ユイ。
もし俺がロゼの相手をしなければ、お前が…だったってこと?」
「…? 当然だろう?」

ユイは、その問いそのものに、何を今更と眉をひそめる。

「お前が自らの意思で、そう言い出すとは思わなかったからな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...