†血族たちの秘密†

如月統哉

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†六星の系譜†

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「お前ら行動力あるよな。まさかもう来てるとは思わなかったぜ」
「…言いたいことはそれだけなの? この馬鹿…」

サリアの棘のある低い呟きに、カイネルが眉根を寄せてそちらを見やる。

「あぁ? …何だよ、人がせっかく誕生日祝いに来てやったってのに、いきなり馬鹿呼ばわりか?」
「あのね…あたしだってこんな催促まがいのこと言いたくないわよ。
でも貴方、どこからどうみても普段と変わらない上に手ぶらじゃないの! しかもまだお酒の匂いなんか残ってるし!
どうせ盛大に寝過ごした挙げ句に二日酔いなんかして、あたしの誕生日のことなんか綺麗さっぱり忘れてたんでしょ!」
「!」

まるで一部始終を見ていたかのような的確な物言いに、カイネルの表情が引きつった。
それを見たサリアは、やっぱり、といった様子をまともに顔に張り付ける。

「…全くもう…、そんなことじゃないかと思ったわよ。まぁ、そんな感じじゃ期待できないからいいけど」
「…良くねぇよ」
「え?」

サリアは耳を疑った。

「良くねぇ…って」

サリアが問い返すと、カイネルは跋が悪そうに頭を掻いた。

「遅れて来た挙げ句、手ぶらなのは悪かったと思ってる」
「…?」
「でも、気の効いたプレゼントってのがどうも思い付かなくてな…
だからサリア…、俺の休日を一日、お前にやるよ。
買い物の荷物持ちにさせるなり、六魔将としての任務を代行させるなり…
俺を一日、お前の好きに使って構わない」
「!…な…!?」

まるで予測もしていなかったこの申し出に、サリアの顔色はそれこそ赤にも青にもなった。
その様を見ていたレイヴァンが、そっと残りの三人に目配せする。
すると三人はレイヴァンの意図が分かったのか、彼と共にそうっとその場を離れた。

…しかし、気恥ずかしいことを柄にもなく言ったカイネルと、そのカイネルの爆弾発言によって思考回路が混乱しているサリアには、もはや周囲の様子に気を使う余裕はない。
結果、現在その場に二人きりであるといった自覚も、この二人には皆無だった。

…サリアが、上擦った口を開く。

「…それって、本当?」
「ああ」

カイネルは二つ返事で頷く。

「俺を煮るなり焼くなり肘鉄食らわせるなり、お前の好きなようにして構わねぇよ」
「…本当に?」
「!くどいな、お前…だからマジに好きにして構わねぇって言っ」
「分かった。…有難うカイネル」

言葉を遮ったサリアは、そのままカイネルに抱きついた。
ふわりと、サリアの髪から甘い香りが漂い、カイネルはぎしりと身を強張らせる。

「!おま…」
「…嬉しい、カイネル」
「…、そんならいいけどよ…
こんなことぐらいしか、俺には思いつかねぇし」
「…いいの。それで充分だから」
「…サリア」

カイネルは意外そうにサリアを見下ろした。
…普段はああでも、やはり自分の誕生日ともなると多少は違…

「じゃ、何か考えておくから」
「…あ?」
「さぁて、何か面倒な執務とか、命がけの任務とかなかったかしら?」
「……」


“こいつは…早まったかも知れねぇな”。

カイネルが心中で唸るのと、サリアが目を輝かせるのとは、ほぼ同時だった。

…が。


この時のカイネルには知るよしもなかったのだ。


この時の軽率な約束が、やがてこれ以上の厄介事の発端となるであろうことを──


†完†


執筆開始日:2006/08/05
執筆終了日:2007/03/14


【後書き】

今回はキリ番25555の時の作品です。
六魔将が六人名前を出せて、やっと書けたような気がしていたのを朧気に覚えています。
日付けを見ると、これは結構、間が開いてますね…
しかしながら、これらの作品が、東日本大震災の前、つまり2011年前に書かれたものであるというだけで、今思えば、相当に平和だった気がします。
以前は地震、津波。そこからの余震、今(2021年5月中旬現在)は、書くまでもない某ウイルスの蔓延。
それ以前は当然に出来ていたことが今は出来ない。
平穏というのがどれだけ有り難かったのかが分かります。
当たり前のように過ごしていたその日々は、今から見れば、決して当然ではなかったのだなと。

読者様においては、この他愛ない作品を読まれる間だけでも、そんな日常のストレスが、少しでも緩和されることを願ってやみません。

お読み頂きまして誠にありがとうございます。
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