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†聖夜の煌めき†
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★☆★☆★
「…、本当に懲りるということを知らないな、お前は」
そう、深々とカミュが息をつく傍らで…
精の黒瞑界の城の内部にある中庭で、何故か草むらからこっそりと前方を窺っていた唯香は、瞬間的に片目を閉じ、人差し指を口に当てる形で、そんなカミュを黙らせようと試みた。
「!…駄目、カミュ。声が大きい…!
既にここまで近付いてるんだから、小さい声で話すようにしないと、完全に向こうに気付かれちゃうでしょ?」
唯香が小声でカミュをたしなめるも、その当のカミュはこうして毎度、唯香に付き合わされ、相当なまでに憮然としていた。
「かと言って毎回馴染みの覗き見か?
しかもよもや、俺までそれに駆り出されるとはな…」
…そう。
世間では、奇しくも今日はクリスマス。
なのに何故、既に見慣れる程に見慣れ、飽きるくらいに馴染んだはずの、生まれ育った城にある中庭に、自分は居るのだろう…
この寒空の下、わざわざ。
人間とは体の作りが多少は異なるとはいえ、それでもそれなりに寒暖の差を感じるカミュは、毎度のパターンに近く、唯香に付き合わされる形で担ぎ出されたが為、もはやその表情は言うまでもなく、完全な鉄面皮と化していた。
しかし、そんな不機嫌絶頂のカミュを物ともせず、唯香は手を崩し、なおも真剣に前方の様子を窺う。
…そしてそこに立つ、唯香の視界に入る人物二人。
それは六魔将のうちのふたり・【幻雷】のカイネルと、【傀儡】のサリアだった。
「…クリスマスだからと、あの二人に何を期待している?」
カミュが唯香の背後で、近くにあった高い木に体を預けるようにして腕を組む。
途端に唯香の体は、自らの考えを見透かされた気がして、ぎくりと強張った。
「!だ、だって今回は、珍しくカイネルからサリアを呼び出しているんだもの!
折しも今日はクリスマスだし… やっぱり女のコだったら、例え内容が違っていたとしても、普通、呼び出しだけで期待しちゃうじゃない」
「……」
そんな唯香の言葉を、何故か量るように聞いていたカミュは、瞬間、前方の二人が動きを見せたことを察知し、無言のままそちらに目をやった。
慌てて、唯香も再び二人の様子見に張り付く。
…そんな中、寒空の下で向かい合っていた二人のうちのひとり…
サリアが先に口を開いた。
「…カイネル、話って何?」
そう言ったサリアの口調は、クリスマスというイベントを意識しない程に淡々としている。
しかしそれも恐らくは、これまで散々カイネルに肩透かしを食ったため…
いくら世間一般での一大イベントといえど、こと、この極と超の字が頭に付くほどに、そっち系の事には疎いカイネルが相手なだけに、今までの経験からも、過度な期待は無用と判断したからに他ならない。
その考えが根底にあるが故、サリアの問いは極めて単調なものとなったのだが、それをいい意味で裏切るかの如く、次にもたらされたカイネルの言葉は、まさしくサリアにとっては意外なものだった。
「…サリア… 俺…さ、お前に謝らなきゃならねぇと、ずっと思ってたんだ…」
いつになく神妙な面持ちのカイネルに、鳩が豆鉄砲を食らうが如く、珍しく面食らったのはサリアだ。
「なに…ちょっと…カイネル…
いきなり何よ?」
…言いながらもその最後は、動揺のあまり、微妙に声が裏返っている。
しかしそんなサリアの様子の変化に気付くこともなく、カイネルは目を伏せながらも先を続けた。
「俺、今まで鈍すぎたよな…
お前の気持ちに、ちっとも気付いてやれなくて」
「!え…」
サリアの心臓が跳ねる。
しかし、この言に過剰反応を示したのは、サリアだけではない。
唯香もそうだった。
唯香はよほど嬉しかったのか、これ以上はない程に顔を綻ばせ、興奮気味に背後にいるカミュにまくし立てる。
「!か、カミュ… 今の聞いた!?
カイネルがサリアに、あんなこと言うなんて!
それも、クリスマスに城の中庭で二人っきりでよ!?」
「…ああ、聞こえた」
カミュは腕を組むのを解き、そのまま何かを考えるように、自らの銀髪にその右手を埋めた。
…カイネルの性格は嫌というほど分かっている。
束縛を嫌い、奔放と自由をこよなく好む男。
普段は飄々としているようだが、ここ一番の働きには、誰もがその実力を認め、それによって、その存在と彼に対する認識を、より強烈に、絶対的なものとする…
そんな男。
しかしそんなカイネルにも、致命的ともいえる欠点がある。
…それは恋愛関係のそれ、つまりそちら方面全般に、どうしようもなく鈍いこと。
例え本人がひた隠しにしていようと、サリア側の気持ちは、傍らで見ている誰もが容易に理解出来る。
…しかし、一番気付いて然るべきな、その当事者のはずのカイネルが、全く気付いていない。
となれば…果たしてこの告白劇、普通に捉えていれば、再び肩透かしを食うのは、他ならぬサリアと唯香の方だろう…
「…、本当に懲りるということを知らないな、お前は」
そう、深々とカミュが息をつく傍らで…
精の黒瞑界の城の内部にある中庭で、何故か草むらからこっそりと前方を窺っていた唯香は、瞬間的に片目を閉じ、人差し指を口に当てる形で、そんなカミュを黙らせようと試みた。
「!…駄目、カミュ。声が大きい…!
既にここまで近付いてるんだから、小さい声で話すようにしないと、完全に向こうに気付かれちゃうでしょ?」
唯香が小声でカミュをたしなめるも、その当のカミュはこうして毎度、唯香に付き合わされ、相当なまでに憮然としていた。
「かと言って毎回馴染みの覗き見か?
しかもよもや、俺までそれに駆り出されるとはな…」
…そう。
世間では、奇しくも今日はクリスマス。
なのに何故、既に見慣れる程に見慣れ、飽きるくらいに馴染んだはずの、生まれ育った城にある中庭に、自分は居るのだろう…
この寒空の下、わざわざ。
人間とは体の作りが多少は異なるとはいえ、それでもそれなりに寒暖の差を感じるカミュは、毎度のパターンに近く、唯香に付き合わされる形で担ぎ出されたが為、もはやその表情は言うまでもなく、完全な鉄面皮と化していた。
しかし、そんな不機嫌絶頂のカミュを物ともせず、唯香は手を崩し、なおも真剣に前方の様子を窺う。
…そしてそこに立つ、唯香の視界に入る人物二人。
それは六魔将のうちのふたり・【幻雷】のカイネルと、【傀儡】のサリアだった。
「…クリスマスだからと、あの二人に何を期待している?」
カミュが唯香の背後で、近くにあった高い木に体を預けるようにして腕を組む。
途端に唯香の体は、自らの考えを見透かされた気がして、ぎくりと強張った。
「!だ、だって今回は、珍しくカイネルからサリアを呼び出しているんだもの!
折しも今日はクリスマスだし… やっぱり女のコだったら、例え内容が違っていたとしても、普通、呼び出しだけで期待しちゃうじゃない」
「……」
そんな唯香の言葉を、何故か量るように聞いていたカミュは、瞬間、前方の二人が動きを見せたことを察知し、無言のままそちらに目をやった。
慌てて、唯香も再び二人の様子見に張り付く。
…そんな中、寒空の下で向かい合っていた二人のうちのひとり…
サリアが先に口を開いた。
「…カイネル、話って何?」
そう言ったサリアの口調は、クリスマスというイベントを意識しない程に淡々としている。
しかしそれも恐らくは、これまで散々カイネルに肩透かしを食ったため…
いくら世間一般での一大イベントといえど、こと、この極と超の字が頭に付くほどに、そっち系の事には疎いカイネルが相手なだけに、今までの経験からも、過度な期待は無用と判断したからに他ならない。
その考えが根底にあるが故、サリアの問いは極めて単調なものとなったのだが、それをいい意味で裏切るかの如く、次にもたらされたカイネルの言葉は、まさしくサリアにとっては意外なものだった。
「…サリア… 俺…さ、お前に謝らなきゃならねぇと、ずっと思ってたんだ…」
いつになく神妙な面持ちのカイネルに、鳩が豆鉄砲を食らうが如く、珍しく面食らったのはサリアだ。
「なに…ちょっと…カイネル…
いきなり何よ?」
…言いながらもその最後は、動揺のあまり、微妙に声が裏返っている。
しかしそんなサリアの様子の変化に気付くこともなく、カイネルは目を伏せながらも先を続けた。
「俺、今まで鈍すぎたよな…
お前の気持ちに、ちっとも気付いてやれなくて」
「!え…」
サリアの心臓が跳ねる。
しかし、この言に過剰反応を示したのは、サリアだけではない。
唯香もそうだった。
唯香はよほど嬉しかったのか、これ以上はない程に顔を綻ばせ、興奮気味に背後にいるカミュにまくし立てる。
「!か、カミュ… 今の聞いた!?
カイネルがサリアに、あんなこと言うなんて!
それも、クリスマスに城の中庭で二人っきりでよ!?」
「…ああ、聞こえた」
カミュは腕を組むのを解き、そのまま何かを考えるように、自らの銀髪にその右手を埋めた。
…カイネルの性格は嫌というほど分かっている。
束縛を嫌い、奔放と自由をこよなく好む男。
普段は飄々としているようだが、ここ一番の働きには、誰もがその実力を認め、それによって、その存在と彼に対する認識を、より強烈に、絶対的なものとする…
そんな男。
しかしそんなカイネルにも、致命的ともいえる欠点がある。
…それは恋愛関係のそれ、つまりそちら方面全般に、どうしようもなく鈍いこと。
例え本人がひた隠しにしていようと、サリア側の気持ちは、傍らで見ている誰もが容易に理解出来る。
…しかし、一番気付いて然るべきな、その当事者のはずのカイネルが、全く気付いていない。
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