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†聖夜の煌めき†
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カミュは一時、知識を反復するかのように目を閉じたが、やがてそれを確固たる意思の元に、静かに開いた。
「我々皇族も、いつまでも六魔将ばかりに責を負わせては居られないだろう…
その点は、これから俺が少しずつ変えてゆく。
…否、それは絶対的に、俺が変えなければならないことだ」
「!カミュ…」
驚きと共に何かを期待した唯香が、はっと顔を上げる。
それにカミュは、安心させるかのように、はっきりと頷いて見せた。
「皇族を護ることが六魔将の存在意義。
それ自体を崩すつもりはない…が、その庇護下にいつまでも甘んじるようであれば、それこそ皇族たる資格はない」
「…うん…!」
今度は唯香が頷く番だった。
前者の枠を砕かないのは、今まで尽くしてくれた、過去の六魔将たちに対する配慮。
しかし、皇族が常に、六魔将の『六人全てに』護られなければ存在出来ないようであれば、それこそ頂点に立つ権利も、資格もない。
──吸血鬼皇帝・サヴァイスと、その妻のライザ。
そしてその次世代に当たる、子のカミュとマリィ。
これまで精の黒瞑界を統治し、皇族の名の下に存在していた者は、それまでたったの四人にしか過ぎなかった。
…だが。
今は皇族は更に増え、次の世代の者が次々と、木々の若葉が芽吹くかのように光を帯びる形で息づいている。
だから今なら、過去の掟や律を覆すことが可能なのだ。
…否、その地位に束縛され、時には自らの心情全てを殺すことを余儀なくされた、歴代六魔将の心を解き放つには、今をおいて他にはない。
恋愛によって六魔将のひとりが欠けるなら、それを補えるだけの実力を、皇族が身に付ければいい。
勿論、かつては『護るもの』、それそのものが多く、例え皇族といえど、とてもそこまでは手が回らなかった…
だが、今は違う。
人員が増えたことにより、戦闘人数の穴埋めが…
何よりも少しばかりではあるが、以前よりも、全てにおいて余裕を与えることが可能になった“今”では──
「…恋愛が発展し、例え六魔将のひとりが一時的に欠けたとしても…
それは結果的には命を紡ぎ、ひいてはこの世界をも繋ぐ糧となる。
誰にも否やは言わせない。そして我々皇族こそは…そんな者たちを護る為にある」
「!…カミュ…っ」
「約束しよう、唯香…
俺はあの二人の仲を承認する。
例え父上が否を唱えようとも、俺は…
俺の心は、考え全ては…お前と同じだ」
「…っ」
唯香は、堪らなくなってカミュへと抱きついた。
…普段のカミュはあの通りで、その心境をあまり吐露することはない。
だからこそ、カミュが滅多に見せない自らの一部を…
それも、唯香にとってはこれ以上ない、有り難くも嬉しい本音を口にしたこと。
それ自体が既に、唯香にとっては──
「カミュ…ありがとう」
唯香が再び目を潤ませる。
そんな唯香に、カミュは頷くように瞬きをすると、緩やかにその頬に軽いキスを落とした。
「!…カミュ…」
唯香が感無量のあまり、それっきり言葉に詰まる。
それにカミュは、珍しく柔らかく、暖かく微笑むと、そのまま前方を見つめた。
そこには、呆然と口を開いたまま立ち竦むカイネルと、口に手を当てたまま、絶句するサリアの姿があった。
…代表するように、カイネルが意思を口にする。
「カミュ様、今の…」
「…ああ」
カミュは、唯香の頭を片手で抱えるようにして抱き締めたまま、軽く、それでいて明確に頷いた。
「お前たちはもっと奔放に生きるべきだ。
そして我々皇族は、そんなお前たちに仕え誇られる存在であるべく、心身共に、更に強い者でなければならない」
「!…っ、でも…!」
なおも言を続けるカイネルを、カミュはその一瞥のみで静止する。
「…お前の言いたいことは、痛い程によく分かっている。
だから我々… ことに俺は、そう六魔将に頼る訳にはいかない。
それはこの世界の堕落を意味するからだ…
それが解らないお前ではないだろう?」
「…、カミュ様、貴方は…俺たちが唯香の気配に気付いていると知っていて…」
「……」
カミュは口を閉ざすと、そのまま伏せる形で唯香に視線を落とした。
「…己の感情が思うままにならないのは、悲しすぎるだろう…」
淡々としているが、確実に痛みを帯びたその呟き。
それにカイネルがふと、何かに気付いて再びカミュに声掛けようとした…その時には既に、カミュと唯香、二人の姿はその当のカミュの魔力によって、溶けるように消え失せていた。
それは恐らく唯香を、ひいてはカイネルとサリアを慮り、カミュが下した決断なのだろうが…
カミュの考えを、そして唯香の思いを偶発的にも知ったカイネルは、その意図を汲みながらも、否、汲めるだけに尚更、どうしたものかと、更に増して茫然と竦んだ。
…が、やがて我(ガ)を取り戻すと、つと、サリアの方へと向き直る。
「我々皇族も、いつまでも六魔将ばかりに責を負わせては居られないだろう…
その点は、これから俺が少しずつ変えてゆく。
…否、それは絶対的に、俺が変えなければならないことだ」
「!カミュ…」
驚きと共に何かを期待した唯香が、はっと顔を上げる。
それにカミュは、安心させるかのように、はっきりと頷いて見せた。
「皇族を護ることが六魔将の存在意義。
それ自体を崩すつもりはない…が、その庇護下にいつまでも甘んじるようであれば、それこそ皇族たる資格はない」
「…うん…!」
今度は唯香が頷く番だった。
前者の枠を砕かないのは、今まで尽くしてくれた、過去の六魔将たちに対する配慮。
しかし、皇族が常に、六魔将の『六人全てに』護られなければ存在出来ないようであれば、それこそ頂点に立つ権利も、資格もない。
──吸血鬼皇帝・サヴァイスと、その妻のライザ。
そしてその次世代に当たる、子のカミュとマリィ。
これまで精の黒瞑界を統治し、皇族の名の下に存在していた者は、それまでたったの四人にしか過ぎなかった。
…だが。
今は皇族は更に増え、次の世代の者が次々と、木々の若葉が芽吹くかのように光を帯びる形で息づいている。
だから今なら、過去の掟や律を覆すことが可能なのだ。
…否、その地位に束縛され、時には自らの心情全てを殺すことを余儀なくされた、歴代六魔将の心を解き放つには、今をおいて他にはない。
恋愛によって六魔将のひとりが欠けるなら、それを補えるだけの実力を、皇族が身に付ければいい。
勿論、かつては『護るもの』、それそのものが多く、例え皇族といえど、とてもそこまでは手が回らなかった…
だが、今は違う。
人員が増えたことにより、戦闘人数の穴埋めが…
何よりも少しばかりではあるが、以前よりも、全てにおいて余裕を与えることが可能になった“今”では──
「…恋愛が発展し、例え六魔将のひとりが一時的に欠けたとしても…
それは結果的には命を紡ぎ、ひいてはこの世界をも繋ぐ糧となる。
誰にも否やは言わせない。そして我々皇族こそは…そんな者たちを護る為にある」
「!…カミュ…っ」
「約束しよう、唯香…
俺はあの二人の仲を承認する。
例え父上が否を唱えようとも、俺は…
俺の心は、考え全ては…お前と同じだ」
「…っ」
唯香は、堪らなくなってカミュへと抱きついた。
…普段のカミュはあの通りで、その心境をあまり吐露することはない。
だからこそ、カミュが滅多に見せない自らの一部を…
それも、唯香にとってはこれ以上ない、有り難くも嬉しい本音を口にしたこと。
それ自体が既に、唯香にとっては──
「カミュ…ありがとう」
唯香が再び目を潤ませる。
そんな唯香に、カミュは頷くように瞬きをすると、緩やかにその頬に軽いキスを落とした。
「!…カミュ…」
唯香が感無量のあまり、それっきり言葉に詰まる。
それにカミュは、珍しく柔らかく、暖かく微笑むと、そのまま前方を見つめた。
そこには、呆然と口を開いたまま立ち竦むカイネルと、口に手を当てたまま、絶句するサリアの姿があった。
…代表するように、カイネルが意思を口にする。
「カミュ様、今の…」
「…ああ」
カミュは、唯香の頭を片手で抱えるようにして抱き締めたまま、軽く、それでいて明確に頷いた。
「お前たちはもっと奔放に生きるべきだ。
そして我々皇族は、そんなお前たちに仕え誇られる存在であるべく、心身共に、更に強い者でなければならない」
「!…っ、でも…!」
なおも言を続けるカイネルを、カミュはその一瞥のみで静止する。
「…お前の言いたいことは、痛い程によく分かっている。
だから我々… ことに俺は、そう六魔将に頼る訳にはいかない。
それはこの世界の堕落を意味するからだ…
それが解らないお前ではないだろう?」
「…、カミュ様、貴方は…俺たちが唯香の気配に気付いていると知っていて…」
「……」
カミュは口を閉ざすと、そのまま伏せる形で唯香に視線を落とした。
「…己の感情が思うままにならないのは、悲しすぎるだろう…」
淡々としているが、確実に痛みを帯びたその呟き。
それにカイネルがふと、何かに気付いて再びカミュに声掛けようとした…その時には既に、カミュと唯香、二人の姿はその当のカミュの魔力によって、溶けるように消え失せていた。
それは恐らく唯香を、ひいてはカイネルとサリアを慮り、カミュが下した決断なのだろうが…
カミュの考えを、そして唯香の思いを偶発的にも知ったカイネルは、その意図を汲みながらも、否、汲めるだけに尚更、どうしたものかと、更に増して茫然と竦んだ。
…が、やがて我(ガ)を取り戻すと、つと、サリアの方へと向き直る。
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