DRAGON FOURTH

如月統哉

文字の大きさ
17 / 21
第一部【蠢く敵】

去るのは、一難では済まない

しおりを挟む
するとルーファスは平然と嘲笑った。

「全てはゲームという観点から始まったのだよ、皇子。父親の、“ウインダムズ皇帝を殺した”のは、その第一段階だ。そして皇子と接触したのも、所詮は第二段階の軌道に過ぎない…」
「…!」
「…殺しをゲームの代用に…か」

怒りで声すらも出なくなったシグマに変わって、リックが胸糞悪そうに呟く。
それを受けるように、そして更にルーファスの真意を探るべく、今度はライムがルーファスを攻めた。

「そして、その舞台が…ウインダムズでの“過去”? いや、貴方にとってみれば、それが…それそのものが発端だったのね!?」
「…そうだな。そして俺にとっては、それもひとつの楽しみだ。皇家の過去を、少しでも掌握していること…それ自体がな」

ルーファスの口からこぼれ落ちる残酷な言葉は、シグマの耳に否が応にも滑り込む。
そしてそのシグマのやり場のない怒りは、全て剣を握る手に込められた。

「!それが本当なら、俺は…お前を…お前だけは許さない!
許す訳にはいかない!」

シグマは沸き上がる怒りに任せて剣を構えた。
その様を見たルーファスが、せせら笑う。

「そんなもので…俺を殺すつもりか?」
「お前は、相当の仕打ちを俺に──そして父親にしたはずだ! だから俺は、持てる力の全てを失ってでも…結果的に自らが死ぬ事になろうとも…お前を全力で殺すと決めたんだ!」

父親の仇を目の前にして、
その仇の前で真実を突きつける事で、
シグマは自らの決意を新たに固めた。

するとルーファスは、意外にも動揺することもなく、むしろ完全なまでの余裕を見せながら呟く。

「皇子には無理だ。お前には…俺は殺せない」
「殺せないかどうかは──やってみれば分かる!」

シグマは強く言い捨てると、すぐさま攻撃を仕掛けるべく剣を引いた。
…すると。

現時点で、一触即発という言葉がぴたりと当てはまる程に、切迫し空気に緊張を漂わせ対峙している、シグマとルーファス。
そのルーファスの隣に、不意に魔術で姿を見せた少女がいた。

まさかこの状況下で、第三者に割って入られるとは思わなかったシグマが、意外と畏怖を合わせたような絶句の声をあげる。

「なっ…!?」

シグマの視線の先が気になったのか、つられてルーファスもそちらに自然、目を向ける。

「!フレア…」

先程まで繰り返し余裕を見せていたはずのルーファスが、ここに来て、今までにない激しい動揺を見せた。
そんなルーファスを、リックとライムは油断なく視線で捉え続ける。

「フレア…? 何者だ、こいつ…!?」
「この人、もしかして…ルーファスの仲間!?」

リックとライムは同じ事を危惧していた。
敵の数。…当然ながら、ひとりを相手にするのと、二人を相手にするのとでは、まるで訳が違う。
しかも、この場合、フレアと呼ばれた少女の実力や能力は、まるで分からず…
それこそ、“まるっきり見当も及びもつかない”。

…そんな裏事情から、リックがそれこそ穴の開くほどにフレアを凝視し、警戒していると、そのフレアと呼ばれた少女は、突然、負傷したルーファスを躊躇いなく支え、焦り気味に声をかけた。

「父上、大丈夫ですか!? ──父上っ!」

この呼びかけに一番度肝を抜かれたのは、言うまでもなくシグマだった。

「!…父上…!? ルーファスの…娘!?」

するとルーファスは、己を助けに来たはずの娘に向かって、罵声に近い、激しい苛立ちの声をぶつけた。

「この程度、怪我のうちには入らん! …それよりもフレア、お前、何故…姿を見せた!?」
「!それは、父上が負傷した気配がしたものですから…」

まさか叱られるとは思ってもみなかったフレアは、既にしどろもどろだ。
そんな様を一瞥したルーファスは、彼には似つかわしくなく、きつく歯を軋ませた。

「もういい! …今回ばかりは分が悪いようだ。──皇子!
今回は勝ちを譲るが、次はないと思え! 退くぞ、フレア!」
「!はっ…、はい、父上!」

ルーファスが魔術によって姿を消したのを見定めて、フレアが慌ててその後を追う。
後には重苦しいという表現が最もぴったりな程の、異様な空気がその場を支配する。

すると、ようやくルーファスの威圧から解放されたらしいリックが、心底ほっとしたように息をつく。

「…ふう、行ってくれたか…」
「とりあえず、命拾いしたわね…」

ライムが冷や汗をハンカチで拭きながら安堵する。
それにシグマは、頷いた。

「ああ。──それにしても、気になるのは、あの…」

…そう言いかけたシグマの声は、けたたましく扉を開け放つ音によって遮られた。

「お兄様っ! シグマ様が来てるんですって!?」

壊れそうな勢いで扉を開き、高らかにそう言い放った少女を見た瞬間、リックは思いきり引きつった。

「う"っ…、リアナ!?」

…そう。
そこに颯爽と現れたのは、リックの妹であり、ここファルスの第一王女でもある、リアナ=ファルスだった。

しかし、リックのリアナを見た反応もさることながら…
その傍らでは何故か、シグマが柄にもなく硬直していた。

「り…、リアナ…!」
「シグマ様っ! お久しぶりです♪」
「その能天気な性格は相変わらずだな…、リアナ」

シグマが目を据わらせて皮肉げに呟くが、それがこのファルスの王女に通用する訳もなかった。

「えーっ? もう、失礼ねぇシグマ様っ。でも、そのクールさが私には堪えられませんわ♪」
「………リック………」

心中の疲れを反映させ、ほぼ半眼になりつつも、シグマはリックに、言いようのない感情の矛先をやつ当たる。

「!済まないシグマっ。非常に申し訳ないっ! …バカな妹で──本っ当に!」
「…分かっているなら、何とかしてくれると嬉しいんだが」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

ある女性の願いごと

篠月珪霞
ファンタジー
祖父の家に遊びに来た琴音は、蔵にあった巻物によって異世界に飛ばされてしまう。 同じような境遇にあった女性に、ひとまず保護されるが…。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...