151 / 214
†闇の継承†
意味するものは
しおりを挟む
★☆★☆★
…その頃。
カミュは、レイセが空間の一部を破壊したことによって立ち込める煙の中に、唯香の姿を見ていた。
酷くうちひしがれて肩を落とすその様は、人間的な脆さをカミュの目に焼き付けた。
その脆さは、互いに意識もせぬまま、知らぬ間にカミュを苛立たせた。
…あまりにも人間の弱さを引き継ぎすぎて。
だからあまりにも脆すぎる…!
だからこそ簡単に…ヴァルディアスに堕ちてしまう…!
けれどそれを咎める程の興味は残されていない。
浮かび上がるのは、裏切られたその事実。
そこに湧き上がるのは、激しい嫌悪と憎悪だけ──
だが。
こう考えてしまう自分こそが、もしかしたら最も人間に近いのかも知れない。
些細なことで一喜一憂する己こそが…
確実に人間であるのかも知れない。
…カミュを構成するもの全てが揺らいでいた。
そんな折り、ヴァルディアスは爆撃の爪痕から足を踏み入れる息子に、咎めるような声をかける。
「…戯れが過ぎるぞ」
「ごめんなさい、父上…」
答えるレイセの声は、まるで悪びれてはいない。
それどころかむしろ、その声には感情というものが凡そ含まれてはいなかった。
その刺すような視線の先にいるのは、ただ一人。
その視線に気付いたカミュは、紫の瞳を鋭利にすることで心境を表す。
精の黒瞑界の後継と、闇魔界の後継の紫と蒼が、冷たく絡み付いた。
瞬間、唯香はその視線の睨み合いを断ち切るように、悲痛に声をあげた。
「やめて! …お願いだから…
お願いだから、二人とも…争わないで…!」
…言葉の最後は、どうにもならない絶望感で、消え入りそうになる。
愛している者。
血を分けた者。
どちらも自分にとっては──
「…そう、気に病むこともないだろう?」
唯香の全てを知ったヴァルディアスが笑う。
冷たく残酷に細められた瞳が、唯香を雁字搦めに捕えた。
…その笑みは、さながら堕ちた大天使の笑み。
慈愛すらも慈悲もなく、己の欲望のみを露に、見る者にぶつける。
「…っ」
さすがに唯香は術もなく動きを止める。
よもや制止する立場の自分が制されるとは思わなかった、他愛ないながらも致命的な油断がそこにはあった。
その隙をついて、ヴァルディアスは魔力によって唯香を我が元へと引き寄せる。
そしてそのまま軽く顎を押さえ…さも愉しげに上を向かせた。
唯香は突然の出来事に、抵抗もままならないままに、ヴァルディアスに一方的に唇を奪われる。
己が浸る暇も、そして相手に余韻すら与えず、ただ、口付けをしたという事実のみを強く周囲に見せつけて、ヴァルディアスは唇を離した。
…薔薇のような美しい容姿とは真逆の、カオスな雰囲気を纏いながら。
ただ残酷に…冷たく呟く。
「…お前がレイセを制する意味はない」
「!…っ、そんなことない!」
唯香は先程の感情を引きずりながらも、激しくも必死に否定する。
「レイセばかりじゃないわ! 貴方もそうよ!
…お願いだからこんなことはもう止めて、ヴァルディアス! …もう、充分でしょう!?
こんな戦いなんて…誰かが傷つくだけで、意味がないじゃない!
…後に残るものなんて…何もないじゃない…!」
「…唯香…」
唯香の訴えに、意外にもヴァルディアスはその耳を貸した。
それに僅かながらも手応えを感じた唯香は、己の心情を切々と訴える。
「父親の貴方なら、レイセを止められるはずよ! だから、お願いだからレイセを止めて!
…あたしは…レイセには、カミュと戦って欲しくないの!
二人には…絶対に争って欲しくないのよ!」
「──母上がそう思っていてもね、僕は嫌なんだよ」
不意に、レイセの嘲笑う声が唯香の耳元で響いた。
唯香が驚いてそちらを見やると、そこにはいつの間に移動したのか、左手に強大な魔力を収縮させもて遊ぶ、レイセの姿があった。
「…レイ…セ…!」
その力の規模に、そしてその氷にも似た冷たい表情に、唯香は蒼の目を見開いて驚く。
その瞳に少なからず怯えと恐れが含まれているのを、レイセは見逃さなかった。
…忌々しげに歯を軋ませ、次いでカミュの方を見やる。
「カミュ皇子を殺さなければ、母上の心は彼に囚われたままだ…!」
「そんな…っ! …嫌、お願いだからやめて! レイセ!」
唯香はもはやなりふり構わず、レイセに縋りついた。
戦いを回避出来るのなら、それこそ自分の姿が周囲にどう見えていようと関係なかった。
──醜悪でも、見るに耐えなくても構わない。
この戦いを避けられるのなら、そんなことはもう、どうでも…!
「…くっ…」
不意に、先程から押し黙っていたカミュの笑い声が響いた。
それは徐々に大きくなり、静まり返った空間に波紋のように広がった。
カミュはさもおかしげに一頻り笑うと、その表情に嘲りを残したまま、視線を唯香に向ける。
「…大した茶番だな、唯香。お前ごときに、そいつとヴァルディアスが止められるとでも、本気で思っているのか?」
「!カミュ…」
唯香の顔色が青ざめる。
「…ど…うして、そんな…」
「戦いなどよりも、お前の取るその言動の全てが無意味であると気付かないのか?
俺はお前に興味が失せたと言ったはずだ。その当のお前に割って入られる筋合いはない」
「!…」
カミュから、こうまではっきりと拒絶の意志を示された唯香は、思わず息を飲んで立ち竦んだ。
…血の気が引いてふらついたその体を、背後からヴァルディアスが絡めとるように支える。
それを見てもまるで表情も変えることなく、カミュは先を続けた。
「それに、お前はひとつ勘違いをしている」
「…か…んちが…い…!?」
また更に突き放されるのかと、唯香の声には絶望が混じる。
そんな中、カミュはほんの少し黙り込み、やがて静かに口を開いた。
「…俺がお前を得た証は、当のお前自身に刻み込んだはずだ。
それでもなお、俺の示唆するところが分からないと言うのであれば──」
カミュは一時、瞳を伏せた。
だが次に唯香を見据えたその瞳は…
まるで他人を見ているように、冷めきっていた。
「…俺を理解せぬお前など、もはや人形にも劣る」
「!…」
唯香は声にならずに口元を押さえた。
…どうして?
何故、こうまで拒まれなければならない?
ヴァルディアスの手に落ちたから?
彼に汚されたから…?
カミュの本心が分からない。
何故、こうまで突き放されなければならない…!?
鍵となるのは、恐らくはカミュのいうところの『示唆』。
“お前に”刻み込んだ…、『何を?』
“お前を”『得た証』…、それは何?
それが分からなければ…
“…自分は永劫、カミュに赦されることはない”。
「…カミュ…!」
「…まだ、名を呼ぶのか」
愚かだな、と呟いて、カミュは唯香から目を逸らした。
それは言葉通り、唯香への興味が完全に失せたことの証明に他ならなかった。
「…カミュ!」
それでも唯香は叫んでいた。
この距離ならば聞こえるはずだ。…否が応にも。
確実に、その呼びかけは…耳に入るはずだ。
だがカミュは、そんな自分の呼び声に、まるで興味も反応も示さない。
…唯香の目から、大粒の涙がこぼれた。
何かが音を立てて軋み、壊れた──…
そんな気がした。
だが、そんな母親の姿を見て、レイセが苛立たないはずもない。
…その頃。
カミュは、レイセが空間の一部を破壊したことによって立ち込める煙の中に、唯香の姿を見ていた。
酷くうちひしがれて肩を落とすその様は、人間的な脆さをカミュの目に焼き付けた。
その脆さは、互いに意識もせぬまま、知らぬ間にカミュを苛立たせた。
…あまりにも人間の弱さを引き継ぎすぎて。
だからあまりにも脆すぎる…!
だからこそ簡単に…ヴァルディアスに堕ちてしまう…!
けれどそれを咎める程の興味は残されていない。
浮かび上がるのは、裏切られたその事実。
そこに湧き上がるのは、激しい嫌悪と憎悪だけ──
だが。
こう考えてしまう自分こそが、もしかしたら最も人間に近いのかも知れない。
些細なことで一喜一憂する己こそが…
確実に人間であるのかも知れない。
…カミュを構成するもの全てが揺らいでいた。
そんな折り、ヴァルディアスは爆撃の爪痕から足を踏み入れる息子に、咎めるような声をかける。
「…戯れが過ぎるぞ」
「ごめんなさい、父上…」
答えるレイセの声は、まるで悪びれてはいない。
それどころかむしろ、その声には感情というものが凡そ含まれてはいなかった。
その刺すような視線の先にいるのは、ただ一人。
その視線に気付いたカミュは、紫の瞳を鋭利にすることで心境を表す。
精の黒瞑界の後継と、闇魔界の後継の紫と蒼が、冷たく絡み付いた。
瞬間、唯香はその視線の睨み合いを断ち切るように、悲痛に声をあげた。
「やめて! …お願いだから…
お願いだから、二人とも…争わないで…!」
…言葉の最後は、どうにもならない絶望感で、消え入りそうになる。
愛している者。
血を分けた者。
どちらも自分にとっては──
「…そう、気に病むこともないだろう?」
唯香の全てを知ったヴァルディアスが笑う。
冷たく残酷に細められた瞳が、唯香を雁字搦めに捕えた。
…その笑みは、さながら堕ちた大天使の笑み。
慈愛すらも慈悲もなく、己の欲望のみを露に、見る者にぶつける。
「…っ」
さすがに唯香は術もなく動きを止める。
よもや制止する立場の自分が制されるとは思わなかった、他愛ないながらも致命的な油断がそこにはあった。
その隙をついて、ヴァルディアスは魔力によって唯香を我が元へと引き寄せる。
そしてそのまま軽く顎を押さえ…さも愉しげに上を向かせた。
唯香は突然の出来事に、抵抗もままならないままに、ヴァルディアスに一方的に唇を奪われる。
己が浸る暇も、そして相手に余韻すら与えず、ただ、口付けをしたという事実のみを強く周囲に見せつけて、ヴァルディアスは唇を離した。
…薔薇のような美しい容姿とは真逆の、カオスな雰囲気を纏いながら。
ただ残酷に…冷たく呟く。
「…お前がレイセを制する意味はない」
「!…っ、そんなことない!」
唯香は先程の感情を引きずりながらも、激しくも必死に否定する。
「レイセばかりじゃないわ! 貴方もそうよ!
…お願いだからこんなことはもう止めて、ヴァルディアス! …もう、充分でしょう!?
こんな戦いなんて…誰かが傷つくだけで、意味がないじゃない!
…後に残るものなんて…何もないじゃない…!」
「…唯香…」
唯香の訴えに、意外にもヴァルディアスはその耳を貸した。
それに僅かながらも手応えを感じた唯香は、己の心情を切々と訴える。
「父親の貴方なら、レイセを止められるはずよ! だから、お願いだからレイセを止めて!
…あたしは…レイセには、カミュと戦って欲しくないの!
二人には…絶対に争って欲しくないのよ!」
「──母上がそう思っていてもね、僕は嫌なんだよ」
不意に、レイセの嘲笑う声が唯香の耳元で響いた。
唯香が驚いてそちらを見やると、そこにはいつの間に移動したのか、左手に強大な魔力を収縮させもて遊ぶ、レイセの姿があった。
「…レイ…セ…!」
その力の規模に、そしてその氷にも似た冷たい表情に、唯香は蒼の目を見開いて驚く。
その瞳に少なからず怯えと恐れが含まれているのを、レイセは見逃さなかった。
…忌々しげに歯を軋ませ、次いでカミュの方を見やる。
「カミュ皇子を殺さなければ、母上の心は彼に囚われたままだ…!」
「そんな…っ! …嫌、お願いだからやめて! レイセ!」
唯香はもはやなりふり構わず、レイセに縋りついた。
戦いを回避出来るのなら、それこそ自分の姿が周囲にどう見えていようと関係なかった。
──醜悪でも、見るに耐えなくても構わない。
この戦いを避けられるのなら、そんなことはもう、どうでも…!
「…くっ…」
不意に、先程から押し黙っていたカミュの笑い声が響いた。
それは徐々に大きくなり、静まり返った空間に波紋のように広がった。
カミュはさもおかしげに一頻り笑うと、その表情に嘲りを残したまま、視線を唯香に向ける。
「…大した茶番だな、唯香。お前ごときに、そいつとヴァルディアスが止められるとでも、本気で思っているのか?」
「!カミュ…」
唯香の顔色が青ざめる。
「…ど…うして、そんな…」
「戦いなどよりも、お前の取るその言動の全てが無意味であると気付かないのか?
俺はお前に興味が失せたと言ったはずだ。その当のお前に割って入られる筋合いはない」
「!…」
カミュから、こうまではっきりと拒絶の意志を示された唯香は、思わず息を飲んで立ち竦んだ。
…血の気が引いてふらついたその体を、背後からヴァルディアスが絡めとるように支える。
それを見てもまるで表情も変えることなく、カミュは先を続けた。
「それに、お前はひとつ勘違いをしている」
「…か…んちが…い…!?」
また更に突き放されるのかと、唯香の声には絶望が混じる。
そんな中、カミュはほんの少し黙り込み、やがて静かに口を開いた。
「…俺がお前を得た証は、当のお前自身に刻み込んだはずだ。
それでもなお、俺の示唆するところが分からないと言うのであれば──」
カミュは一時、瞳を伏せた。
だが次に唯香を見据えたその瞳は…
まるで他人を見ているように、冷めきっていた。
「…俺を理解せぬお前など、もはや人形にも劣る」
「!…」
唯香は声にならずに口元を押さえた。
…どうして?
何故、こうまで拒まれなければならない?
ヴァルディアスの手に落ちたから?
彼に汚されたから…?
カミュの本心が分からない。
何故、こうまで突き放されなければならない…!?
鍵となるのは、恐らくはカミュのいうところの『示唆』。
“お前に”刻み込んだ…、『何を?』
“お前を”『得た証』…、それは何?
それが分からなければ…
“…自分は永劫、カミュに赦されることはない”。
「…カミュ…!」
「…まだ、名を呼ぶのか」
愚かだな、と呟いて、カミュは唯香から目を逸らした。
それは言葉通り、唯香への興味が完全に失せたことの証明に他ならなかった。
「…カミュ!」
それでも唯香は叫んでいた。
この距離ならば聞こえるはずだ。…否が応にも。
確実に、その呼びかけは…耳に入るはずだ。
だがカミュは、そんな自分の呼び声に、まるで興味も反応も示さない。
…唯香の目から、大粒の涙がこぼれた。
何かが音を立てて軋み、壊れた──…
そんな気がした。
だが、そんな母親の姿を見て、レイセが苛立たないはずもない。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる