朝に弱い幼馴染は俺に起こされるのをいつもベッドの中で待っている

ハヤサカツカサ

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4話

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よって、

「せいやっ!」

「キャァ!」
 
 布団を一気に剥ぎ取ってやろうとする。が、くるまっていた布団を取られた梓は上体を起こすと、無意識のうちに追いかけ抱きつく。そこで、ようやく俺と目が合った。その薄いブルーの瞳は映っている景色がまだ夢の続きを見ているかのようにぼんやりとしていた。

「龍? なんで私の部屋に……。もしかして夜這い?」

「あぁ、まだ寝ぼけてるみたいだな。とっと顔を洗ってこい。ついでに言うと、もう朝だ」

「アサ……あさ……朝ぁ!?」

「なんだ、俺が外国語でも喋ってると思ったのか? ずっと日本語だぞ」

 腕を組む俺の前をはじき出されたパチンコ玉よろしく、ベッドから飛び出した小さな体が駆けていく。銀髪のショートにブルーの瞳。日本人離れしたその美貌は幼馴染というひいき目を差し引いても美少女だと認めざるをえない。

さすがクォーターといったところか。

梓の目がちゃんと覚めたのを確認した俺は伸びをすると、こちらに来るために通ってきた窓の方へ戻り始める。この関係はあとどれくらい続くのだろう。

人とヴァンパイア。その両方の血を受け継いだ彼女との関係は。そんなことを考えながら梓の家の窓から身をおどらせ学校の廊下に着くと、窓の鍵を閉めたのだった。

「はいはい、席に着きたまえ。今日から一年間、二年生になった君たちの担任を務める白百合沙希しらゆりさきだ。よろしく頼む。私の自己紹介は……去年も一緒だった奴が多いし省略でいいだろ。何より面倒くさい」

 いや、最後の一言は心の中にとどめとけよ。相変わらず自分を飾ることをしない先生の姿に苦笑しながら俺は視線を窓の外に滑らす。去年と変わらない、桜の花びらによってピンク色に染められたグラウンド。きっと今年も淡々と毎日を過ごして、気付けばあっという間に一年が終わるのだろう。そんなことを考えながらぼーっと話を聞いていると、不意に先生の話が止まり、廊下へその姿が消える。

 何してるんだ?

同じことを思った者は多いらしく、廊下側に座っているクラスメイトは首だけ出して廊下側を覗き込んでいる。やがて戻って来た先生は教壇の上から何かを探すようにクラスを見回し始めた。その目が俺とピタリと合う。

 「小島、今から生徒指導室に行ってくれ」

 「え? 俺何かしましたっけ?」

 「やらかしたのは君じゃない。隣だ」

 今まで窓の外ばかり見ていたせいで気付かなかったが隣の席が空いている。

 一体誰のだ?

 「あのー、まだ二年生になったばかりで、この席に誰が座っているとか知らないんですけど」

 「何を言っているんだ。そこは熊谷の席だよ。起こしてこなかったのか?」
 
 「あずさだって!? いや、俺ちゃんと起こしてきましたよ」
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