朝に弱い幼馴染は俺に起こされるのをいつもベッドの中で待っている

ハヤサカツカサ

文字の大きさ
5 / 16

5話

しおりを挟む
 梓が顔を洗いにベッドを飛び出していったのを見届けたのは確かだ。つい先ほどのことなのだから記憶違いということもない。

 まさかとは思うけど、顔を洗った後そのまま再びベッドにダイブしたのか!? 

 ……梓ならあり得る。

 「なんでも小島のせいだって連行された指導室でわめいてるらしいぞ」
 
 「俺のせい? そんなことあるわけ――」

 先生の言葉が俺の脳細胞を刺激し、梓を起こしてからの記憶が脳裏にフルスピードで再生されていく。そういえば俺……あいつの家から学校までの最短距離にある窓の鍵閉めちゃった。

 「ないじゃないですか。冤罪もいいところですよ。ははははは……」

 「大丈夫か? 冷や汗がすごいぞ」
 
 先生に指摘されて、俺は乾いた笑いを口からこぼしながらこめかみの汗を拭う。いや、これはあれだよ。確かに鍵をかけたのは俺の責任だけど、元々は時間に余裕を持って起きない梓が悪い! 

 そうか……俺は悪くないか。ものの数秒で責任転嫁を済ませると、俺は立ち上がる。

 「どうした小島?」

 「梓を迎えにいってきます。どうせいつもの指導室にいるんですよね?」
 
 「まぁ、そうだが。ふむ、そうだな。この後の全校集会まで時間があることだし、今のうちに連れてきてもらったほうがいいか。それじゃ、頼んだ」

 「はい」

 このまま教室にいたらやらかしたことが顔に出てしまいそうだった俺は、これ幸いとばかりに足速に教室を出たのだった。







 俺と梓が在籍する旭高校は正門に近い方から三つの建物があり、それぞれ一号館、二号館、三号館と呼ばれている。指導室は二年生の教室がある三号館とは反対側。一号館にあった。すでに通い始めて一年だ。俺は迷いなく指導室にたどり着くと、ノックの後扉を開く。目の前には机を挟んで座る、事務員と思われる女性と梓の姿があった。

 「では遅刻の理由をこの書類に書いて、後で担任の先生に渡しておいてください。何か分からないことはありませんか?」
 
 「大丈夫です。分からないところは一個もありません!」

 ああ、俺が勉強を教えている時もその答えが返ってきたらいいのに……。

 梓の返事を確認した女性は扉の近くで感傷に浸る俺と軽く会釈を交わすと部屋を出ていく。窓の外では鳥が軽快なリズムを刻んでいた。

 今から記入するとなると、少し時間がかかりそうだ。

 梓の向かい。女性が座っていた椅子を引き、俺は腰掛ける。この高校に入学してから何度目になるだろう。梓が遅刻届を受け取った姿を見るのは。そんなことを考えていると、梓は先ほどの言葉通りどうやって記入していいか分からないところは無いらしく、スラスラと空欄を埋めていく。テストの時とは正反対だ。途中でペンが止まることなどない。遅刻届に関しては梓は間違いなくプロだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...