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梓が顔を洗いにベッドを飛び出していったのを見届けたのは確かだ。つい先ほどのことなのだから記憶違いということもない。
まさかとは思うけど、顔を洗った後そのまま再びベッドにダイブしたのか!?
……梓ならあり得る。
「なんでも小島のせいだって連行された指導室で喚いてるらしいぞ」
「俺のせい? そんなことあるわけ――」
先生の言葉が俺の脳細胞を刺激し、梓を起こしてからの記憶が脳裏にフルスピードで再生されていく。そういえば俺……あいつの家から学校までの最短距離にある窓の鍵閉めちゃった。
「ないじゃないですか。冤罪もいいところですよ。ははははは……」
「大丈夫か? 冷や汗がすごいぞ」
先生に指摘されて、俺は乾いた笑いを口からこぼしながらこめかみの汗を拭う。いや、これはあれだよ。確かに鍵をかけたのは俺の責任だけど、元々は時間に余裕を持って起きない梓が悪い!
そうか……俺は悪くないか。ものの数秒で責任転嫁を済ませると、俺は立ち上がる。
「どうした小島?」
「梓を迎えにいってきます。どうせいつもの指導室にいるんですよね?」
「まぁ、そうだが。ふむ、そうだな。この後の全校集会まで時間があることだし、今のうちに連れてきてもらったほうがいいか。それじゃ、頼んだ」
「はい」
このまま教室にいたらやらかしたことが顔に出てしまいそうだった俺は、これ幸いとばかりに足速に教室を出たのだった。
★
俺と梓が在籍する旭高校は正門に近い方から三つの建物があり、それぞれ一号館、二号館、三号館と呼ばれている。指導室は二年生の教室がある三号館とは反対側。一号館にあった。すでに通い始めて一年だ。俺は迷いなく指導室にたどり着くと、ノックの後扉を開く。目の前には机を挟んで座る、事務員と思われる女性と梓の姿があった。
「では遅刻の理由をこの書類に書いて、後で担任の先生に渡しておいてください。何か分からないことはありませんか?」
「大丈夫です。分からないところは一個もありません!」
ああ、俺が勉強を教えている時もその答えが返ってきたらいいのに……。
梓の返事を確認した女性は扉の近くで感傷に浸る俺と軽く会釈を交わすと部屋を出ていく。窓の外では鳥が軽快なリズムを刻んでいた。
今から記入するとなると、少し時間がかかりそうだ。
梓の向かい。女性が座っていた椅子を引き、俺は腰掛ける。この高校に入学してから何度目になるだろう。梓が遅刻届を受け取った姿を見るのは。そんなことを考えていると、梓は先ほどの言葉通りどうやって記入していいか分からないところは無いらしく、スラスラと空欄を埋めていく。テストの時とは正反対だ。途中でペンが止まることなどない。遅刻届に関しては梓は間違いなくプロだった。
まさかとは思うけど、顔を洗った後そのまま再びベッドにダイブしたのか!?
……梓ならあり得る。
「なんでも小島のせいだって連行された指導室で喚いてるらしいぞ」
「俺のせい? そんなことあるわけ――」
先生の言葉が俺の脳細胞を刺激し、梓を起こしてからの記憶が脳裏にフルスピードで再生されていく。そういえば俺……あいつの家から学校までの最短距離にある窓の鍵閉めちゃった。
「ないじゃないですか。冤罪もいいところですよ。ははははは……」
「大丈夫か? 冷や汗がすごいぞ」
先生に指摘されて、俺は乾いた笑いを口からこぼしながらこめかみの汗を拭う。いや、これはあれだよ。確かに鍵をかけたのは俺の責任だけど、元々は時間に余裕を持って起きない梓が悪い!
そうか……俺は悪くないか。ものの数秒で責任転嫁を済ませると、俺は立ち上がる。
「どうした小島?」
「梓を迎えにいってきます。どうせいつもの指導室にいるんですよね?」
「まぁ、そうだが。ふむ、そうだな。この後の全校集会まで時間があることだし、今のうちに連れてきてもらったほうがいいか。それじゃ、頼んだ」
「はい」
このまま教室にいたらやらかしたことが顔に出てしまいそうだった俺は、これ幸いとばかりに足速に教室を出たのだった。
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俺と梓が在籍する旭高校は正門に近い方から三つの建物があり、それぞれ一号館、二号館、三号館と呼ばれている。指導室は二年生の教室がある三号館とは反対側。一号館にあった。すでに通い始めて一年だ。俺は迷いなく指導室にたどり着くと、ノックの後扉を開く。目の前には机を挟んで座る、事務員と思われる女性と梓の姿があった。
「では遅刻の理由をこの書類に書いて、後で担任の先生に渡しておいてください。何か分からないことはありませんか?」
「大丈夫です。分からないところは一個もありません!」
ああ、俺が勉強を教えている時もその答えが返ってきたらいいのに……。
梓の返事を確認した女性は扉の近くで感傷に浸る俺と軽く会釈を交わすと部屋を出ていく。窓の外では鳥が軽快なリズムを刻んでいた。
今から記入するとなると、少し時間がかかりそうだ。
梓の向かい。女性が座っていた椅子を引き、俺は腰掛ける。この高校に入学してから何度目になるだろう。梓が遅刻届を受け取った姿を見るのは。そんなことを考えていると、梓は先ほどの言葉通りどうやって記入していいか分からないところは無いらしく、スラスラと空欄を埋めていく。テストの時とは正反対だ。途中でペンが止まることなどない。遅刻届に関しては梓は間違いなくプロだった。
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