18 / 45
差し出された「役目」
研究発表から数日後、俺は学院長室に呼ばれた。
理由は、分かっている。
扉の前に立った瞬間、魔力の気配が多い。
教師だけじゃない。外部の人間がいる。
ノックをして中に入ると、学院長の他に三人。
魔法庁の徽章をつけた研究官と、王族派の文官、それから――王子。
「久しぶりだね、レオン」
柔らかな声。
でも、目は完全に“仕事”のそれだった。
簡単な挨拶のあと、本題に入る。
「君の研究構築を、実地で試したい」
魔法庁の研究官が言う。
「前線補助想定の模擬演習だ。危険はない」
“危険はない”。
その言葉が、逆に引っかかった。
学院長は黙っている。
つまり、判断は俺に委ねられている。
「……条件があります」
俺は、そう切り出した。
部屋の空気が、わずかに変わる。
「第一に、学院外に出ないこと」
「第二に、俺の構築を改変・提出しないこと」
「第三に――」
一瞬、言葉を選ぶ。
「同行者を、一人つけさせてください」
王子が、わずかに眉を上げた。
「同行者?」
「俺が、信頼している相手です」
すぐに名前は出さなかったけど、誰のことかは明白だった。
短い沈黙のあと、王子が笑った。
「いいだろう」
「君は、交渉も覚えたようだ」
そうして、条件付きでの試験的依頼が決まった。
部屋を出ると、廊下でアルトが待っていた。
「……どうだった」
少し不安そう。
「依頼、受ける」
そう言うと、アルトの耳が下がる。
「でも」
続ける。
「アルトも、一緒」
一瞬、きょとんとした顔をしてから、理解したらしい。
「……ぼく?」
「うん」
「断られるかと思った」
「俺が、断らない」
その言葉に、アルトは何度も瞬きをしてから、にへっと笑った。
「じゃあ、がんばる」
ぽのぼのした返事なのに、胸の奥が温かくなる。
模擬演習は、学院の結界区域内で行われた。
想定は「魔力消耗状態での防衛戦」。
俺の役目は、後方からの補助維持。
アルトは、前衛側の連携確認。
正直、アルトは目立つタイプじゃない。
でも、隣にいると分かる。
視野が広い。判断が早い。
俺の補助が最大効率で回る位置に、自然と動く。
「……噛み合ってるな」
研究官が呟いた。
結果は、予想以上だった。
補助魔法は最後まで崩れず、前衛の消耗も最小限。
演習終了後、評価は高かった。
だが――
「正式採用は、保留だ」
王族派の文官が言う。
「理由は?」
「君が、従順すぎない」
空気が、冷える。
俺は、静かに答えた。
「それが、欠点なら」
「俺は、王族向きじゃありません」
一瞬、場が凍った。
でも、王子が笑った。
「だからこそ、価値がある」
そう言って、その場を締めた。
帰り道。
アルトが、ぽつりと言う。
「れおん……こわくなかった?」
「少し」
正直に答える。
「でも、アルトがいたから、大丈夫だった」
その言葉に、アルトは耳まで赤くした。
「……そば、いる」
「ずっと」
その“ずっと”が、どういう意味か。
まだ、二人とも正確には分かっていない。
でも。
この日、俺は知った。
守られるだけの存在じゃない。
利用されるだけの人族でもない。
選んで、立つ場所を決められる。
その隣に、アルトがいる未来を――
少しだけ、はっきり想像できるようになった。
理由は、分かっている。
扉の前に立った瞬間、魔力の気配が多い。
教師だけじゃない。外部の人間がいる。
ノックをして中に入ると、学院長の他に三人。
魔法庁の徽章をつけた研究官と、王族派の文官、それから――王子。
「久しぶりだね、レオン」
柔らかな声。
でも、目は完全に“仕事”のそれだった。
簡単な挨拶のあと、本題に入る。
「君の研究構築を、実地で試したい」
魔法庁の研究官が言う。
「前線補助想定の模擬演習だ。危険はない」
“危険はない”。
その言葉が、逆に引っかかった。
学院長は黙っている。
つまり、判断は俺に委ねられている。
「……条件があります」
俺は、そう切り出した。
部屋の空気が、わずかに変わる。
「第一に、学院外に出ないこと」
「第二に、俺の構築を改変・提出しないこと」
「第三に――」
一瞬、言葉を選ぶ。
「同行者を、一人つけさせてください」
王子が、わずかに眉を上げた。
「同行者?」
「俺が、信頼している相手です」
すぐに名前は出さなかったけど、誰のことかは明白だった。
短い沈黙のあと、王子が笑った。
「いいだろう」
「君は、交渉も覚えたようだ」
そうして、条件付きでの試験的依頼が決まった。
部屋を出ると、廊下でアルトが待っていた。
「……どうだった」
少し不安そう。
「依頼、受ける」
そう言うと、アルトの耳が下がる。
「でも」
続ける。
「アルトも、一緒」
一瞬、きょとんとした顔をしてから、理解したらしい。
「……ぼく?」
「うん」
「断られるかと思った」
「俺が、断らない」
その言葉に、アルトは何度も瞬きをしてから、にへっと笑った。
「じゃあ、がんばる」
ぽのぼのした返事なのに、胸の奥が温かくなる。
模擬演習は、学院の結界区域内で行われた。
想定は「魔力消耗状態での防衛戦」。
俺の役目は、後方からの補助維持。
アルトは、前衛側の連携確認。
正直、アルトは目立つタイプじゃない。
でも、隣にいると分かる。
視野が広い。判断が早い。
俺の補助が最大効率で回る位置に、自然と動く。
「……噛み合ってるな」
研究官が呟いた。
結果は、予想以上だった。
補助魔法は最後まで崩れず、前衛の消耗も最小限。
演習終了後、評価は高かった。
だが――
「正式採用は、保留だ」
王族派の文官が言う。
「理由は?」
「君が、従順すぎない」
空気が、冷える。
俺は、静かに答えた。
「それが、欠点なら」
「俺は、王族向きじゃありません」
一瞬、場が凍った。
でも、王子が笑った。
「だからこそ、価値がある」
そう言って、その場を締めた。
帰り道。
アルトが、ぽつりと言う。
「れおん……こわくなかった?」
「少し」
正直に答える。
「でも、アルトがいたから、大丈夫だった」
その言葉に、アルトは耳まで赤くした。
「……そば、いる」
「ずっと」
その“ずっと”が、どういう意味か。
まだ、二人とも正確には分かっていない。
でも。
この日、俺は知った。
守られるだけの存在じゃない。
利用されるだけの人族でもない。
選んで、立つ場所を決められる。
その隣に、アルトがいる未来を――
少しだけ、はっきり想像できるようになった。
あなたにおすすめの小説
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
執着騎士団長と、筋肉中毒の治癒師
マンスーン
BL
現代日本から異世界へ転生した治癒師のレオには、誰にも言えない秘密がある。
それは「定期的に極上の筋肉に触れて生命力を摂取しないと、魔力欠乏で死んでしまう」という特異体質であること!
命をつなぐため、そして何より己のフェティシズムを満たすため、レオがターゲットに選んだのは「氷の騎士団長」と恐れられる英雄ガドリエル。
「あぁっ、すごい……硬いですガドリエル様ッ!(大胸筋が)」
「……っ、治療中にそんな熱っぽい声を出すなッ」
生きるために必死で揉みしだくレオを、ガドリエルは「これほど俺の身を案じてくれるとは」と都合よく勘違い
触られたいムッツリ攻め×触りたい変態受け
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、溺愛と溺愛の物語。
幼馴染み組もなんかしてます。
※諸事情により、再掲します。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。