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結界改修実証試験
実証試験の日は、曇っていた。
辺境結界の外縁。
古い魔石柱が並ぶ場所。
「失敗したら、どうなる?」
誰かが、わざと聞こえる声で言った。
「人族の限界が、証明されるだけだ」
「王都送りで済めば、まだ優しいな」
俺は、何も言わない。
アルトが、横に立つ。
「……見るだけで、手は出すな」
「わかってる」
そう言いながら、彼の気配は鋭い。
試験範囲は、結界の一節だけ。
――でも。
ここが壊れれば、魔獣が侵入する。
つまり。
失敗は、許されない。
「始めます」
俺は、魔石柱に手を触れた。
ざわめき。
「……触れるだけ?」
「詠唱は?」
「補助魔導具は?」
何も使わない。
必要ない。
ゆっくり、魔力を流す。
“押し込まない”。
“満たさない”。
――整える。
乱れた流れを、正しい方向へ。
魔法陣が、静かに光った。
「……?」
「光量が、低すぎないか」
「起動してるのか?」
次の瞬間。
風が、止まった。
結界の内側だけ、
空気が“安定”する。
ざわ……。
「……魔力消費、少なすぎる」
「維持率が、異常だ」
監査官の顔色が、変わる。
「これが……更新……?」
俺は、最後の調整を終えた。
「完了です」
一拍。
結界が、深く、静かに定着する。
派手な光は、ない。
爆発的な魔力反応も、ない。
――ただ。
“壊れる気配が、消えた”。
老獅子の貴族が、ゆっくり近づく。
結界に、爪を当てた。
ギィ……と嫌な音。
だが。
結界は、揺れもしない。
「……」
老獅子は、爪を引っ込めた。
「三割」
ぽつりと、言う。
「魔力消費、三割以下」
「維持年数、理論値で倍以上」
誰も、声を出さない。
さっきまで、笑っていた者たちが、
目を逸らしている。
「……人族だから、じゃない」
老獅子が言った。
「こいつは」
「技術だ」
その言葉が、落ちた瞬間。
「失礼ですが!」
文官が、慌てて声を上げる。
「前例がありません!」
「人族が、辺境結界の中核を担うなど――」
「前例を作った」
老獅子は、即答した。
「今だ」
視線が、俺に向く。
「約束だ」
「発言権を、与える」
胸の奥が、じんと熱くなる。
「ありがとうございます」
深く、頭を下げた。
その直後。
アルトが、俺の肩に手を置いた。
誇らしげに。
堂々と。
「……よくやった」
その一言で、全部報われた。
試験後。
人が散っていく中、
俺に近づいてくる影があった。
「……見誤っていた」
かつて、嘲った貴族。
「人族が、ここまでとは」
「謝罪を」
俺は、首を振る。
「必要ありません」
「これから、どうするかが大事です」
その言葉に、相手は何も言えなくなった。
これが。
俺の、初めての“ざまあ”。
怒鳴らない。
見下さない。
ただ、結果で黙らせる。
夜。
焚き火の前。
アルトが、ぽつりと笑った。
「……正直」
「惚れ直した」
「え」
「何回目か、わからないけど」
耳と尾が、正直すぎる。
俺は、少し照れながら言う。
「ぼくも」
「アルトが、隣にいなかったら」
「ここまで、来られなかった」
炎が、ぱちりと弾けた。
辺境の夜は、静かだ。
でも。
この日。
俺たちは確信した。
――もう、奪われない。
――もう、黙らされない。
辺境結界の外縁。
古い魔石柱が並ぶ場所。
「失敗したら、どうなる?」
誰かが、わざと聞こえる声で言った。
「人族の限界が、証明されるだけだ」
「王都送りで済めば、まだ優しいな」
俺は、何も言わない。
アルトが、横に立つ。
「……見るだけで、手は出すな」
「わかってる」
そう言いながら、彼の気配は鋭い。
試験範囲は、結界の一節だけ。
――でも。
ここが壊れれば、魔獣が侵入する。
つまり。
失敗は、許されない。
「始めます」
俺は、魔石柱に手を触れた。
ざわめき。
「……触れるだけ?」
「詠唱は?」
「補助魔導具は?」
何も使わない。
必要ない。
ゆっくり、魔力を流す。
“押し込まない”。
“満たさない”。
――整える。
乱れた流れを、正しい方向へ。
魔法陣が、静かに光った。
「……?」
「光量が、低すぎないか」
「起動してるのか?」
次の瞬間。
風が、止まった。
結界の内側だけ、
空気が“安定”する。
ざわ……。
「……魔力消費、少なすぎる」
「維持率が、異常だ」
監査官の顔色が、変わる。
「これが……更新……?」
俺は、最後の調整を終えた。
「完了です」
一拍。
結界が、深く、静かに定着する。
派手な光は、ない。
爆発的な魔力反応も、ない。
――ただ。
“壊れる気配が、消えた”。
老獅子の貴族が、ゆっくり近づく。
結界に、爪を当てた。
ギィ……と嫌な音。
だが。
結界は、揺れもしない。
「……」
老獅子は、爪を引っ込めた。
「三割」
ぽつりと、言う。
「魔力消費、三割以下」
「維持年数、理論値で倍以上」
誰も、声を出さない。
さっきまで、笑っていた者たちが、
目を逸らしている。
「……人族だから、じゃない」
老獅子が言った。
「こいつは」
「技術だ」
その言葉が、落ちた瞬間。
「失礼ですが!」
文官が、慌てて声を上げる。
「前例がありません!」
「人族が、辺境結界の中核を担うなど――」
「前例を作った」
老獅子は、即答した。
「今だ」
視線が、俺に向く。
「約束だ」
「発言権を、与える」
胸の奥が、じんと熱くなる。
「ありがとうございます」
深く、頭を下げた。
その直後。
アルトが、俺の肩に手を置いた。
誇らしげに。
堂々と。
「……よくやった」
その一言で、全部報われた。
試験後。
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俺に近づいてくる影があった。
「……見誤っていた」
かつて、嘲った貴族。
「人族が、ここまでとは」
「謝罪を」
俺は、首を振る。
「必要ありません」
「これから、どうするかが大事です」
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これが。
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怒鳴らない。
見下さない。
ただ、結果で黙らせる。
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「……正直」
「惚れ直した」
「え」
「何回目か、わからないけど」
耳と尾が、正直すぎる。
俺は、少し照れながら言う。
「ぼくも」
「アルトが、隣にいなかったら」
「ここまで、来られなかった」
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でも。
この日。
俺たちは確信した。
――もう、奪われない。
――もう、黙らされない。
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