真珠を噛む竜

るりさん

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第十六章 ジャーマンアイリス

水晶の竜

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 調理場から何やら美味しそうな香りが漂ってくる。
 その香りに触発されたのか、陽が山肌から出てきたころ、クロヴィスは目を覚ました。一晩中つきっきりで見ていたジャンヌが顔を覗き込んできたので、渋い顔をして朝を迎えた。
「なんだその顔」
 クロヴィスがそう言うと、ジャンヌは膨れっ面をしてクロヴィスを見下げた。
「お言葉じゃん。人が肌の心配しながら世を徹してついてやったのに」
 それを聞いて、クロヴィスは少しおかしくなった。
「今さら、肌もへったくれもないだろ」
 すると、ジャンヌは顔を真っ赤にして怒った。
「言わせておけば!」
 そう言って立ち上がったので、近くにいたセベルがジャンヌの肩に手を置いて落ち着け、と、一言添えた。
「師匠とエリクが朝食を作ってくれているみたいだな。彼らと交代しつつ食事にしよう」
 二人は喧嘩を一旦忘れてそれに従うことにした。夜中に出ていたクロヴィスの熱ももう冷めていたので、あとは傷が治るのを待つだけだ。
 調理場から漂ってくる香りは強くなっていく。いい香りだ。何を作っているかまではよくわからなかったが、朝食べるにはふさわしい、優しい香りのする料理が想像できた。
「お腹すいたなあ」
 ジャンヌはそう言って伸びをした。
 すると、そんなジャンヌを見ていたクロヴィスが、左手でジャンヌの服の裾を引っ張った。
「教わりたいんだったら、行ってこいよ。まだ間に合うだろうから」
 クロヴィスがそう言うので、ジャンヌは目を丸くして彼を見た。こちらに笑いかけてくるので、ジャンヌはもじもじとして目を逸らした。
「でも、私みたいな泥棒女なんか」
 ジャンヌがどうするか決めかねていると、クロヴィスは苦笑して、ジャンヌの手に触れた。そして、しっかりと握りしめると、こう言った。
「少しでもお前が手がけていた部分があるだけで、男だけで作った料理も華やぐんだ。にんじんの一つでも切ってきてくれよ」
 すると、ジャンヌは顔を一気に紅潮させた。
「あ、あんた、いつの間にそんなにキザったらしくなったんだよ!」
 すると、クロヴィスはニヤリと笑った。
「女の子らしいジャンヌも気味が悪いけどな」
 ジャンヌは、それを聞いて頭に血を上らせた。自分でも何を言っているのかわからないのか、訳のわからないことを叫びながら、立ち上がって部屋から出ていってしまった。
「こうでもしないと、ジャンヌは君のそばを離れなかったな」
 セベルが、洗濯物を畳みながら言うと、クロヴィスは疲れたようにベッドに体を埋めた。
「あの時アースは、しばらくゆっくり休めと言って寝かせてくれたが、そう易々と休ませてはくれないな」
 それを見て、セベルは笑った。
「モテモテだな、クロヴィスも」
 そんなやりとりをしていると、ドアをノックする音がした。誰なのかと聞くと、セリーヌだった。
 入ってくれと言うとドアが開いたので、セベルが迎えに出た。セリーヌを連れてくると、彼女は元気な様子で、クロヴィスとセベルに挨拶をした。
「クロヴィスは目を冷ましたのね。よかった。でも、ちゃんと休むのよ」
 セリーヌは、セベルに勧められて部屋の隅の椅子を持ってきて窓辺に置いた。そして、窓の外を見て、陽が昇っているのを見ながら伸びをした。
「エーテリエは、もっと寝ていたいから行っていいよって言っていましたが、なんだか心配で」
 セベルは、それを聞いて顔を曇らせた。
「あいつは、ナリアのためなら多少の無理は厭わないからな」
「彼女とナリアの間には、何かがあったのですか?」
 セリーヌはそう言ってセベルを見た。彼の後ろの方でクロヴィスが休んでいる。できるだけ小さな声で話す必要があった。
 セベルは、セリーヌの質問に少し寂しそうな顔をして答えた。
「特にこれといった出来事はないよ。それがまた悔しいんだけどね」
 その寂しそうな顔をいつもの笑顔に戻して、セベルはセリーヌを見た。
 その時、またドアを叩く音がしたので、セベルが応えると、エリクの声がこう告げた。
「食事を持ってきたので、開けてください。今、両手がふさがってしまっていて」
 セベルがそれを聞いて急いで戸を開けると、そこにはエリクが一人だけで立っていて、両手にはたくさんの料理が乗ったトレイを持っていた。
 セリーヌが走ってきて手伝うと、エリクはテーブルに料理を並べながら一つ一つの料理の説明をしていった。
「塩を振って焼いた鱒と、根菜のスープに雑穀のご飯、ルッコラのサラダにドレッシングはレモンと酢を混ぜてオリーブオイルを加えたもの。ゆで卵に、クロヴィスとエーテリエの分は和風だしのお粥だよ。途中でジャンヌが料理を教えてっていって手伝いに来てくれたから、ルッコラのサラダとドレッシングはジャンヌに作ってもらったんだ」
 エリクによると、ジャンヌはその後も熱心にアースから料理の作り方を教わっているのだという。
「先に食べていようか」
 セベルがそう言うので、エリクとセリーヌは同意した。クロヴィスのところには別のトレイを用意してベッドの上に置いてやった。お粥は薬膳らしく、ダシのほかに幾つかの生薬が入っていて、不思議な香りがした。
「医食同源、か。それでも味を犠牲にしないのはアースらしいな」
 クロヴィスはそういって、よく冷ましながらお粥を口に運んだ。右手が使えないので左手で不器用に匙を使っていた。
 そのうちに、アースとジャンヌがちょっとした料理を作ってやってきた。ジャンヌの練習用に作った野菜炒めだ。
「野菜がフライパンからこぼれるんだよ」
 ジャンヌはそう言いながら恥ずかしそうに野菜炒めの乗った皿を差し出した。アースが一緒に作ったためか十分に美味しかった。
 ここにいるメンバーの食事が終わった頃、ナリアとリゼットがどこからか帰ってきた。少し照れているエーテリエも一緒だった。
「原因がランサーの毒なのですから、解熱すれば問題ないと思うのですが」
 ナリアはそういってアースを見た。
 アースは、問題ない、と一言言って、ナリアを迎えた。
 ナリアは食事をしながら、リゼットと一緒に報告をした。
「夜のことでしたから、居酒屋に人が集まっていると思い、入りました。少しお酒も飲みましたが、有益な情報が手に入りましたよ」
 ナリアはそう言って鱒の塩焼きを口に入れた。びっくりした表情でそれを飲み込むと、幸せそうな顔をしてリゼットを見た。
 リゼットは、ナリアの視線を受けて話し始めた。
「湖には、湖の主ってのがいて、それがとても大きい怪物らしいの。みんなは大体その主ってのが今回の流行病の元凶だと思っているわ。でもそれがどうやら違うみたい。クロヴィスの怪我の原因になった出来事なんだけど、あれはこの広域の商人が対岸との交易対象にと、洞穴から少しだけはみでたあの老人の孫を攫ってきて取引に使ったみたいなの。相手は相手で、なんの恨みがあってか自分の住んでいる町にウイルスを蔓延させて困らせたかったみたいね。両方の利害が一致して今回みたいなことになって、イル・ランサーの老人を怒らせてしまったみたい。つまり、流行病の元凶のその老人をなんとかしない限りは、ここの船は出ないってこと」
 リゼットは説明をしながら朝食を食べ終えた。
「エーテリエとクロヴィスが良くなったら早々にここを引き払いましょ。この街、イル・ランサーの件といい、きな臭い匂いがする」
 皆は、リゼットのその意見に賛成をした。
 そして、荷物をまとめながら、アースがクロヴィスとエーテリエに治癒の練術をかけるのを見ていた。
 全ての準備が整ったのは、その日の夜のことだった。セベルが厩にフレデリクを迎えに行くと、一行は宿賃を人数分、計算して封筒に入れ、宿帳の横に置いた。部屋とキッチンはきちんと掃除しておいた。
 宿を発つとみんなはできるだけ荷物を減らしてフレデリクに預けた。湖のそばの美しい街は今、まさに宝石のように輝く街灯の光を湖面に映し、煉瓦造りの建物に反射してキラキラと輝いていた。一部の白壁に映える広葉樹は新緑に萌え、白い花をつけていた。
「見た目は綺麗な街なんだがな」
 少し疲れた様子のクロヴィスが、フレデリクの横を歩きながら街を眺める。すると、どこからか皆の前に背の高い老人が現れ、進路を邪魔し始めた。
「なんなの、あのお爺さん」
 エーテリエがイライラしていると、ナリアとアースが何かを話し始めた。
「このまま港に向かいましょう。考えがあります」
 ナリアがそう言うので、一行はそのまま船の休んでいる港へ向かった。漁へ出る船もなく、流行病のために向こう岸の土地へ渡る船も出ていない。そんな港へ行って何をするのだろう。
 港へ着くと、いまだに進路を塞ぐ老人は健在で、一行のすぐ先をふらふら歩いていた。しかし、港について皆がいったん荷物を下ろそうとすると、老人はその辺を歩いている街の人に向かって大きな声でこう言った。
「真珠を噛む竜がいるぞ! わしの後ろにいる若い少年が真珠を噛む竜だ!」
 その言葉に、エリクだけではなく、その場にいた全員が驚いて老人を見た。町の人も一度驚いて、なんのことなのか分からないといった顔をした。
 老人は続ける。
「わしにはランサーが分かるんじゃ!」
 そして、エリクを指差した。
「このエリクという少年は真珠を噛む竜じゃ! 無数の真珠を生み出すという、金のなる木じゃ!」
 それを聞いて、町の人が集まりだしてきた。アースがエリクのそばに来て右腕を握った。この老人が何を考えてこんなことを言ったのかはわからない。だが、皆が思いついたのはこの老人の正体だった。
「あんた、イル・ランサー」
 ジャンヌはそういって、エリクを守るように町の人から隠した。他の皆もそうしている。町の人は遠巻きにこちらを伺っている。
 老人は、こちらを見て不敵に笑った。
 それを見て、ジャンヌのはらわたは煮えくりかえりそうになった。
「あんた、エリクになんの恨みがあってこんなことするのよ!」
 そう言うと、庇っているエリクが自分の手を握ったことがわかった。エリクは今皆から守られている。しかも町の人やイル・ランサーに囲まれて身動きが取れない。
 そんな時だった。
 港が、急に荒れた。高い波が押し寄せて船を揺らし、陸上に乗り上げさせた。人々は散り散りになり、港から逃げていった。
「湖の主だ!」
 誰かがそう言って、港の沖の方を指差した。するとそこには大きな黒い影が現れていて、港の人々やエリクたちから星空や月を奪っていった。
「ありがたい。町の人たちはバラバラだわ。あのお爺さんもいない」
 セリーヌはそういって皆を見渡した。そしてふと、黒い影を見ると、それが非常に大きな、空飛ぶエイのようなもので、湖の上を低空飛行しているのが見えた。それは、湖を越えて地上へ上がり込み、セリーヌたちのところへやってきた。
「真珠を噛む竜とそのお連れさんたち」
 エイのような湖の主は、どこに顔があるのか、よく響く声でエリクたちにこう告げた。
「あなた方全員とその馬ならば、私の上に乗せられましょう。急ぎ乗りなさい。対岸にあなた方の噂が届く前に、この湖を抜けるのです。イル・ランサーの流行病はこの先もしばらく続くことでしょう。対岸への船は一ヶ月先になるでしょうから」
 一行はその申し出にびっくりしたが、従うことにした。
「俺も、傷は治ったが体力までは戻っていないから、心配だったんだ」
 クロヴィスはそう言って、湖の主に従うよう、一行を促した。
 町の人たちが見守る中、クロヴィスたちはゆっくりと湖の主の上に乗っていった。町の人たちは誰一人としてそれを妨げたり、自分も乗ろうとしたりしなかった。
 全員が乗り込むと、湖の主はふわりと舞い上がり、湖の上を人一人分の高さで低空飛行した。上に人が乗っているのでそんなに速くは飛ばなかった。
「み、湖の主さん、でいいんですよね」
 エリクが言うと、湖の主は嬉しそうに少し高い声で返してきた。
「私はクオーツ・ランサーですよ。水晶の仲間であればなんであれ生み出す癖があるのです、真珠を噛む竜よ。イル・ランサーはあなたの目的を知って、あなたをあの街から逃がすためにこうしたのです」
「イル・ランサー、あのお爺さんですか?」
 エリクは驚いてクオーツ・ランサーに大きな声で語りかけた。クオーツ・ランサーはそんなに声を張り上げなくても大丈夫ですよ、と一言付け加えてこう言った。
「あなたのことと、自分がイル・ランサーであることをバラしてしまうリスクはありましたが、ランサーを商売道具にし、さらってきては売り飛ばす癖のある町の人間からあなた方を遠ざけるためにはこれしかありませんでした。そんな商売を嫌う対岸の街は安全ですが、その街に病気を蔓延させて問題を起こそうとしていた商人がいるのも確か。あなたの噂はあの街では広まらないでしょう。イル・ランサーが押さえ込むはずです」
「どうやって、押さえ込むんですか?」
 すると、クオーツ・ランサーはこう言ってくすくすと笑った。
「ボケた老人のふりをすればいいのですよ。それに、このことについては星の人の采配もあるようです」
 星の人の采配。そうきいてエリクはふとナリアを見た。
 すると、ナリアはにこりと笑って自分の杖を指差した。
「忘却の練術、ある程度距離があっても有効ですよ」
 すると、クロヴィスが少し引いて、ナリアを恐ろしいものを見るような目で見た。
「あんた、それ、俺たちに一回も使ってないよな?」
 ナリアは、それを聞いて不気味に笑った。そこにいた全員が震えた。
 しかし、そのおかげで場の雰囲気も和んでいき、ゆっくりと対岸の街に向かう間に、皆はクオーツ・ランサーとずいぶん打ち解けていた。
 対岸の街が見えて来るともう明け方で、港を照らす街灯が薄くなって来ているのがわかった。小さい町ではあるが港はしっかりしていて、ランサーが近づく頃には何隻かの船が漁に出始めていた。ランサーの姿を見ても怖がらずに手を振ってくるのを見て、皆はびっくりした。
「ずいぶんとフレンドリーなんだね」
 ジャンヌが関心していると、ランサーは少し声のトーンを落とした。
「ランサーというのは伏せていますが、湖の主として、この町では私は慕われているんですよ」
 クオーツ・ランサーはそういって、陽が昇り始めた湖の町の港に、みんなを下ろした。そして、自分は人間の姿になって町を紹介してくれることになった。
 クオーツ・ランサーは名前をミラクといい、色黒の体格のいい男性だった。彼は、エリクたちの先頭をクロヴィスと共にいき、町の建物を指差しながら教えていってくれた。
「港から二番目の通りの、一番港に近いところに港宿があるんです。ここはチェックインが早い時間からできる。港を使う人間は朝早いから、その後を掃除したらすぐに部屋を使えるんですよ。もう一つ、港から一番東の通りを行くと、最も陸地側にもう一つ宿があります。ここはサービスがいいけど、チェックインは朝遅くから。もしこの宿にするのなら、町の中心部に朝までやっている酒場があるから、そこを使うといいですよ。酒場はお子さんには向かないですけど、ここには幸い未成年の方はいないみたいですね。この辺はビールとワインの醸造所が多いですから、何種類ものお酒を日替わりで飲めますよ。ランチタイム近くまでやっていますけど、それから夕方までは仕込みや仕入れで休みますから気をつけてくださいね」
 町の地面を覆う石畳はしっかり作ってあって歩きやすい。狭い路地を進んでいくと町の中心には大きな馬に乗ったたくさんの小人の石像があり、そこからいくつもの水が噴き出す噴水があった。低い家並の所々に芝生が整備された緑地があり、子供達が遊びに出てくる様子が窺えた。
「どっちのお宿がいいかしら? 私はサービスがいいほうがいいわ」
 町を案内してくれたミラクと別れ、広場にある噴水に腰掛けていると、リゼットが足をぶらぶらさせて頭を抱えていた。
「レイクビューを取るか、サービスを取るか」
 すると、エリクが手をあげた。
「僕は、町の酒場に行ってみたいよ。ビールっていうのも飲んでみたい」
 みんなは、それを聞いてびっくりした。
 ジャンヌとリゼットはビールが初めてだ。今までなかったわけではないのだが、あえて飲もうという空気にはならなかった。ワインと違って持ち歩きがしにくかったからだ。
「じゃあ、サービスのいい宿にしようか。この先、内陸に進むなら内陸に近い場所ってのもありがたいし」
 ジャンヌはそう言って立ち上がった。手には熱々に蒸したじゃがいもにバターと塩胡椒を振ったファストフードが握られていた。
「ランチタイムまで居酒屋が開いているなら、みんなもこれ食べてさ。美味しいよ」
 それを聞いて、他の皆も立ち上がった。昨日の朝食以来何も食べていない。お腹は空いていた。
 広場の隅にあるじゃがバターの屋台でそれぞれがそれぞれ好きな味のものを買うと、これからの相談を始めた。リゼットは宿を取るために町の外れまで行っている。宿の部屋割りは、一つだけ三人部屋があったのでナリアとセベルとリゼット、クロヴィスとジャンヌ、エーテリエとセリーヌ、エリクとアースということになった。
 それぞれ食べ終わると、セベルは厩にフレデリクを預けに行った。この町では、まだ売る物も買うものもなかったので、露店や商店には寄らなかった。ただ、町の中で食料品を売る市場に入って、いくつかの保存食は買わなければならなかった。
 そこの食料品店で、エリクは珍しいものをみつけた。
 それは、赤黒いりんごで、星のように散りばめられた模様が綺麗だった。青果を売る場所に売っていて、今までの場所にあったような緑がかった薄い赤のりんごとは打って変わって、濃い色のりんごだった。
 エリクは、そのりんごをリゼットにねだった。彼女は最初買い渋ったが、生で食べても美味しい大きなりんごであり、試食させてもらって感動的に美味しかったので、人数分買って帰ることにした。
 市場を出て綺麗な薄赤い色の石畳の道を少し進むと、宿が見えてきたので入った。荷物を預けると、一行は酒場に行くことにした。
 みんなでゾロゾロと道を歩いていると、道端の花屋に、ある花があった。
 花弁が炎のように萌えて見える花。様々な色があって見飽きない、虹色の種類を持つ華やかな花。
「ジャーマンアイリスだ」
 クロヴィスがそういって花屋の軒先で足を止めた。どんなにみていても見飽きないのだろう。顔を緩ませているクロヴィスの横で、ふと、ジャンヌが手を伸ばし、赤い花を手に取って店主を呼んだ。
 そして、涼しい顔でその赤いジャーマンアイリスを買うと、こちらを見るクロヴィスにそれを差し出した。
「花言葉は、焔、でしょ」
 そういって、驚くクロヴィスの背中を叩いた。
 一行はそのまま酒場に行った。楽しい時間が始まった。

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