森のスープレストラン

るりさん

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1.トマトのポタージュスープ

お金持ちと絵

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 スープレストランの店主は、画家の青年から絵を受け取って、店で一番いい場所に飾った。スープの代金はもらわなかった。その代わり、絵の売り上げから少しだけ頂戴して、それをスープ代に充てることにした。
 絵は、あれからすぐに売れた。
 森にできた細い道をはるばる辿ってやってきた一人の金持ちが、自慢の顎鬚をさすりながらニコニコと笑顔で絵を鑑賞していた。
 その時に出したトマトスープを味わいながら、店主はその金持ちに画家の話をした。
「向上心のある若者は良いな。その青年にはぜひ、自分の絵を好きになって欲しいものだ。才能あるなしにかかわらず、自分を高めようと言う人間の作るものは魅力的だよ。この絵も荒削りだがいいものがある」
 恰幅のいい金持ちは、嬉しそうにスープを口にした。あの時の青年に比べるとずいぶん上品な飲み方だが、どこか似ている部分を感じた。
 そんな感情からか、店主は金持ちに、ふとこんな提案をしてみた。
「あなたなら、あの絵をいくらで買いますか?」
 すると、金持ちは景気良く笑って、店主に耳打ちをした。
 店主は、その値段、いや、提案にびっくりしたが、すぐに納得した。
「では、画家にそう伝えましょう」
 店主は、金持ちが納得できるまで店にいてもらい、彼が満足した様子になると、壁の絵を外してきちんと布で包み、紙で包装して渡した。
 店主が絵の扱いについて説明しようとすると、金持ちはそれを遮った。
「こちとら絵の扱いには慣れているんだよ。心配いらない。その代わり、画家先生の取り扱いを後できちんと学ばなければならないけどね」
 そう言って、金持ちは笑顔でレストランを後にした。
 店主はその日のうちに、絵が売れたことと、金持ちの家に専属画家として仕事をしないかと打診する手紙を書いた。
 手紙のやり取りをするための、家の近くの郵便ポストには、週に一回郵便屋がくる。返事は一週間以上かかってしまうが、金持ちも画家も待つことができるだろう。
 そして、手紙を出してから一ヶ月後の夕方。
 画家と金持ち、両方から手紙が届いた。
 画家は、住み良い家に住まわせてもらっていることへの感謝と、自分の絵の未熟さを改めて知ったことを書いていた。
 金持ちは、画家を雇ってまた最初から絵の勉強をきちんとさせていること、そして、最近になって描いてもらった自画像がなかなか良かったことを書いていた。
 店主は、トマトのポタージュスープにすら感謝する二人の手紙に満足した。そして、自分が誰かの力になれたことに対する感謝に震えた。
 秋の日はつるべ落としの如く、山肌に沈むのが早い。寒くもなってきた。
 店主は、今日も深くなっていく森の夕暮れに一つ、礼をして、夜に灯りをつけてやってくる客を待つためにそっと、窓を閉めた。
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