押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery

文字の大きさ
4 / 43

凰条財閥

しおりを挟む


「零、お前に見合いの話が来たぞ!」

ある日の夕方。
お父様は嬉しそうに言った。

しかし、お姉様は興味なさげに紅茶を口に運びながら、ゆるく瞬きをする。

「またどこかの資産家?嫌なのよね~能力なくて金だけ持ってるタイプは」
「いや、ただの資産家ではないぞ!今回の縁談は日本経済を牛耳る一族からの縁談だ」

お父様は誇らしげに微笑みながら、一枚の書類をテーブルに置いた。

「相手は凰条財閥の長男、凰条一真」

凰条グループ――それは日本屈指の自動車メーカーであった。

名門財閥であり、その影響力は国内外に及んでいる。戦後の高度経済成長期には日本のモータリゼーションを牽引。

現在も国内トップシェアを誇るだけでなく、欧米やアジア市場でも圧倒的な地位を築いている。 

当主である凰条圭吾(おうじょう けいご)は、経営手腕に長けた冷徹な実業家であり、政財界とも強い結びつきを持つ。

その財力と権力は他を圧倒し、日本国内の大企業の多くが凰条家の影響を受けていると言っても過言ではない。

「本当すごいことだわ!零の魅力はやっぱり伝わるんだわ」

お母様が嬉しそうに笑みを見せるが、お姉様の反応はイマイチだった。

「えー……凰条財閥は確かにすごいけど、長男ってメディア露出を全くしないって有名よね。ウワサだとすごい醜男だって聞いたことあるけど……」

お姉様は少し不満げな声を出した。

「しかも、お金に汚い冷徹男だって言ってる人もいるくらいじゃない?……私、興味ないわ」

お姉様が眉をひそめ、あっさりと言い放つ。

「零……でもあの凰条財閥よ?嫁いだらうちにもたくさん利益があるわ」

そう凰条財閥と繋がりが持てるということは、国内に留まらず海外にも視野を向けることが出来るということだ。

おそらく支援だってたくさんしてもらえるだろう。

それは今の御堂家にとって1番求めていることだった。

今、御堂家は老舗としての地位はあるものの新しさに欠けていて、経営は右肩下がりの状況が続いている。

和菓子が売れなくなったという時代的背景も大きいだろう。

そんな中、凰条家と関わりを持てば必ず御堂家に大きな利益をもたらしてくれるとお父様たちは思っているのだろう。

「私はね、カッコよくて私の言うことをなんでも聞いてくれて自由にしてくれる旦那様がいいの。醜男と隣を歩くのも恥ずかしいし、メディアだって出たい!もっと私に似合う旦那様がいいわ」

「こんなにも素晴らしい縁談なのよ」

「そうだ、零。もう少し慎重に考えて欲しい。凰条家に嫁ぐことが、どれほどの意味を持つか……」

お父様とお母様は必死にお姉様を説得していた。

「あなたなら、きっと彼を手のひらで転がせるわ。零なら、御堂家の未来を支えられる。そうでしょう?」

「それは……そうだけど……」

お母様が問いかけると、お姉様はしぶしぶ納得したようだった。

縁談か……。
いいな。

私に縁談の話が来たことは今まで一度もない。

それもそうか……。
だって表に出ていないのだもの。

私の名前を知っているものはいない。
私はいない人間と同じなのだから。

そして約束の日。
母に命じられ、庭の掃除をしていた時、私はお母様に声を掛けられた。

「澪、もうすぐ時間よ。零の着付けをしてやって」

「はい」

私は家にいるだけなのだからと、家ではお手伝いさんと同じ仕事をすることを義務付けられていた。

特にお姉様の着付けやヘアアレンジ、メイクは私の仕事であった。
零お姉様の部屋に向かい、ノックをして声をかける。

「……零お姉様、着付けのお時間です」

双子の姉をお姉様と呼ぶのは、零お姉様に言われたからだった。

私とあなたは対等ではない。
お姉様と呼びなさいと。

だから私はお姉様と呼んで、零お姉様は私のことを澪と呼ぶ。

「お姉様……?」

彼女の部屋の扉を叩いても、返事がなかった。

人がいる気配さえない。

もしかして……!

「失礼します」

嫌な予感がして中に入ると、そこはもぬけの殻だった。

整えられたベッド、開け放たれた窓。
そこにお姉様はいなかった。

「何をしてるのよ、早く着付けを……」

痺れを切らしたお母様が私の元へやってくる。

「あの、お姉様が部屋にいなくて」
「零……?」

次の瞬間、背後から母の叫び声が響く。

「零!! 零はどこ!?」

お手伝いのめぐさんも慌ててやってきて屋敷の中を探すが、お姉様はどこにもいなかった。

「こっちにもいません」
「……逃げたな」


その騒動を聞きつけたお父様がやってきて低くつぶやいた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。 ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。 そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。 彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。 「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...