生徒会長と秘密のキス

cheeery

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第3章:逃れられない命令

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【生徒会長:吉永唯人】
【副会長:宇佐美直人】

「今年度の生徒会は以上のメンバーに決定いたします」

大きな拍手が送られる中。
俺は全校生徒の前で深く一礼をした。

あれから。
生徒会長に立候補した俺は、演説を終え投票の結果。
すんなりと生徒会長という座につくことが決定した。

すんなり決まった理由は単純だ。
宇佐美が生徒会長に立候補しなかったから。

生徒会長に立候補するはずだった彼は、かわりに副会長に立候補をした。
そして今、副会長という立場になって変わらず俺の側にいる。

「村井、今年の体育祭の予算を出しておいてもらえるか?」
「了解です」

今年。
メンバー編成は書記の2名だけが1年生から選出されただけで、後は変更無し。
下剋上などもなく、選挙結果は静かに伝えられた。

「会長、メンバー表の記入終わりました」
「ああ、ありがとう」

俺の犯した罪は、約束通り宇佐美の中だけに留まっている。

一見すると何も変わらないように見える日常。
しかし、見えないところで状況は大きく変わっていた。

「先輩、生徒会長就任おめでとうございます」

宇佐美がやってくる。

「……あ、ああ」
「先輩ならなれるって信じてましたよ」

笑顔でそんなことを言ってくる宇佐美。
俺はその笑顔の裏にある本性が怖くて仕方なかった。

「この書類、俺が提出しておきますね」

宇佐美はみんながいる時は、前と同じように優秀な後輩として仕事をこなしてくれた。
俺に変なことをすることもない。

しかし。

「じゃあ今日は解散で」
「先輩」

みんなが帰った後。
二人きりになると、彼の纏う空気が一変する。

そのことに気づいてからは、出来るだけ終わった後二人にならないようにみんなと一緒に帰宅していたのだが……。
今日はそうはいかなかった。

「帰ろ帰ろー」 
「今日は早いから寄り道してく?」

「いいね。会長も今日一緒にどうですか?」

書記の後輩の子が聞いてくれる。

「うん、俺も行こうか……」

チラリと宇佐美を見てカバンを持ったその時。

「唯人先輩」

宇佐美は書類を持って俺の元にやって来た。
俺を見てニコっと笑う。

「すみません。ちょっと残ってもらってもいいですか?体育祭の調整の方だけ今日中にしておきたくて」

逃げられない。
どうにか理由をつけて帰る方法はあったはずだ。

でもそれを許さない宇佐美の眼差し。

"残ってくれますよね?" 
そう無言で脅されているようだった。

「……っ、分かった」


彼が俺の弱みを握っている限り、俺は籠の中の鳥だ。

「…………」

みんなが帰ってしまい二人きりになると、シーンと静まり返った空気が流れる。

重苦しい沈黙。
早くこの時間を終わらせて帰りたい。

「その書類貸してくれ。今日中なんだろう?」

俺が手を差し出すと、宇佐美はクスリと笑った。

「分かってるくせに」
「分かってるって何が……」

 「こんな時間ですよ? 今日中にやったって誰が見てくれるんです?」
 「……っ」

騙された。
残ったのは仕事があるからじゃない。

そう悟ると、身体に力が入る。

「先輩、こっち来てください」

俺は手を引かれるがまま、彼の元に行った。

「なにをすればいいんだ。は、早く終わらせてくれ。今日はもう疲れてるんだ」 
「早く終わらせるかどうかは先輩次第ですよ」

すると彼は楽しそうに笑って、すぐ近くにあるイスに腰を下ろした。

「唯人先輩」

そして、ポンと自身の膝を叩く。

「俺の膝に座ってください」
「……なっ!なに言ってるんだ!?そんなところ座れるわけないだろう」

「へえ、忘れたんですか? 先輩は俺に脅されている立場なんですよ」 
「……っ」 

「選択肢なんてないんです」

冷たい笑顔を向ける宇佐美。
逃げられるわけなんて、なかった。

宇佐美はきっと気が済むまで俺を解放しないだろう。
俺は覚悟を決めて、宇佐美の膝の上に座った。

「こ、これでいいだろう!」

この体勢、屈辱的すぎる……っ。 

膝の先、出来るだけ彼に触れないように体重をかけないように腰掛けると、宇佐美は不満げに言った。

「もっとこっち」

グイッと引き寄せられて、後ろから包み込まれる。
すると、ふわりと宇佐美の匂いがした。

「な、なにして……」

宇佐美はなんでこんなことをするんだ?
こんなことしてなにが楽しい?

俺が嫌がっている姿を見て満足してるのか!?

宇佐美の考えていることが分からない。

「も、もういいだろ。放してくれ……っ」

それになんかドキドキする!
これはなんなんだ……。

背中に感じる胸板の厚みと、俺とは違う体温。
宇佐美の熱を全身に感じて、カァッと顔が熱くなる。

「耳、真っ赤」
「そ、んなところで喋るな……」

「先輩、耳……弱い?」

宇佐美の吐息が敏感な耳にかかる。

くすぐったくて身を寄せると、彼は意地悪く言った。

「もしかして感じてる?」
「……っ、ちが、う!」

俺はとっさに立ち上がった。

そんなわけない!

「これ以上は、人権侵害だっ!」

さっき、頭がボーッとしてなにも考えられなくなった。
おかしい。
こんなの、いつもの俺じゃない。

「ふふっ、そうですね。ちょっと意地悪しすぎちゃいましたね」

宇佐美は楽しそうに微笑んだ。
俺は視線を泳がせながらも言った。

「こ、こんなことしてなにが楽しいんだ?」

宇佐美だったら、いくらでもこうやって遊んでくれる女子がいるだろうに。
わざわざ男の俺にこんなことしてなんの得があるって言うんだ。

「うーん。なんだろう?しいて言うなら、先輩が俺のひとつひとつの行動で動揺するのを見ているのが楽しい……ってところですかね」

悪びれもせずに言う彼に毒気を抜かれる。
でもその言葉で確信した。

宇佐美は俺のことが嫌いなんだと。
だからこうして俺に罰を与えて楽しんでる。

そっか……。
俺、前から嫌われていたのか。

胸の奥がズキリと痛む。
それであんなことをして、さらに俺のことを嫌いになったのだろう。

自分がしたことに傷つく資格がないのは分かってる。

でも……。

『先輩』
『俺も手伝います』

やっぱりショックだな。

「も、もういいだろう。今日はもう帰る」

俺は目を逸らしながら言った。
逃げるように背を向け、歩き出そうとしたその時。

「……っ」

スッと手首を掴まれる。

「唯人さん」

こっちを強引に向かされ、振り返ると。
そこには、宇佐美の真剣な表情があった。

「先輩のその顔を見られるのは俺だけだ」
「……っ」

「先輩の弱みも、恥ずかしいところも全部。俺だけのモノですから」

俺は飲み込まれるような圧迫感に、ただ立ち尽くすことしか出来なかった──。


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