甘くて酸っぱいフルーツいかが。

ふわパカ

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中学校時代を振り返って ①(軽くr15っぽい)

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保育園、小学校と振り返ったのだから中学校時代の事も振り返る。勿論読者の方は想像できていたであろう。


例の双子は俺が中学2年の時に入学してきた。


中学になると外で遊ぶ事はなくなった。教室で友人と過ごす事が多くなった。だから学校で双子と過ごす事はあまりなかった。昼休みに偶に会って話すくらい。別に学校で会えなくてもなんせ家が隣だから会いたい時に会える。

後は部活が一緒だから部活で関わる事が多かった。


俺は小さい頃から祖母に料理を教わっていた。父は医師で母は看護師である。忙しい両親に代わって俺と祖母で家事をこなしていた。俺が作った料理を美味しいと言ってくれた事が嬉しくて、それから料理やお菓子作りにはまった。

中学に入って迷わず俺は料理・製菓部に入部した。先輩も同期もみんな優しくて、毎日楽しかった。


双子の入学式前日に、こんな話が出た。

「いち兄は料理・製菓部なんだっけ?」桃汰が俺に尋ねる。

「そう。毎日楽しいよ」俺が頷くと桃汰は真面目な顔になる。

「俺も同じ部活に入る」きっぱりと言い放つ桃汰。目が真剣そのものだった。

そういえば中学生になる事を機に桃汰は一人称を俺に変えた。なんか最初は違和感がありまくりで、慣れなかったけど。

「なら俺もいちと一緒の部活に入るわ」柚斗も便乗した。相変わらず2人は俺に合わせて来ようとする。2人のやりたい事はあったりしないんだろうか。

てか柚斗は急に俺の事をいちと呼ぶようになった。「兄」はどこいった。そう呼ばれるの結構好きだったのに。

「2人が入ってくれたら嬉しいけど…2人はほかにやりたい事は無いの?」2人の顔を見るも2人の意志は固まってるように感じた。

「俺はいち兄と一緒が良い。それに料理も好きだし…駄目かな…」少し悲しそうに桃汰が俺を見つめてくる。きっと否定されていると感じたのだろう。

「そっか、そう言ってもらえて嬉しいよ。でも中学には色々な部活があるからね。他にやりたいことも出てくるかも。焦らず色んな部活を体験しておいで」傷つけないように言葉を選びながら告げると桃汰は納得がいかないような表情のまま頷いた。

「…俺はお前らが心配だから同じ部活にする。それだけだ」柚斗は上からな物言いで言い放った。

「でも製菓もやるんだよ?甘い物苦手でしょ?」俺が心配そうに柚斗を見つめると柚斗は目を逸らさずに見つめ返してきた。

「料理は出来るから。甘いもんは他の奴にあげりゃ良いだろ。いちだって甘いもん好きじゃん」少し睨むかのように俺を見つめてくる。

「うん…ゆずがそれで良いなら良いんだよ。でもゆずはスポーツが得意だろ?俺の学校さ、結構運動部もあるし良い成績も残してるから…そういう道もありなんじゃないかって思ってさ」なんとなく柚斗には他に柚斗のやりたい事があるような気がしてならなかった。

「…俺はもう決めたから。いちと同じ部活に入るって。何言われても変えねーからな」とても強い口調で言われてしまった。頑固な彼はもう考えを変える事はないだろう。


結局2人は俺と同じ料理・製菓部に入部した。


部活では2人とも効率が良く料理も製菓も上手に作れていた。


3年生が引退して俺が顧問や部員の推薦で部長となった。ちょっとプレッシャー…いやかなりのプレッシャーだ。大丈夫だろうか。

「あの…いちにい…じゃなくて、一期先輩、教えてもらって良いですか?」部活中、桃汰が俺に尋ねてくる。どうやら皿のしまう場所が分からないらしい。

双子には部活中は一期先輩もしくは八乙女先輩と呼ぶように言った。一応上下関係とか気にしないと。

「それはここな。片付けありがとう」桃汰にしまう場所を教えると桃汰は嬉しそうに皿を片付け始めた。

「いち……先輩、トイレ行きたいっす」なかなか先輩というのが慣れない様子の柚斗。まぁ無理もないか。言葉を喋れるようになった時からずっといち兄と呼んできたのだから。

「トイレ?どうぞ。終わったらちゃんと石鹸で手洗いしろよ?」柚斗を見つめながら言うと柚斗は俺をじっと見つめる。

「分かってるっての。餓鬼じゃねーんだから」少しむくれたような表情のまま退室していった。そういう表情は子供っぽいけどな、と思いながら彼の背中を見送る。


部活では特に揉め事もなく毎日楽しく料理やお菓子作りに励み、作った料理やお菓子を食べた。


中学時代で一番印象に残ってるのは俺が中学3年で双子が中学2年の時の事だ。

音楽祭の休み時間の出来事である。毎年俺たちの学校では音楽祭が開催されるのだが、これは学校でなく市のホールで行う。

休み時間はホールの決められた部屋や晴れていればホール付近の公園で弁当を食べる事が許されている。

俺は友人たちと公園で弁当を食べる事になった。その道中、一人でホールの外のベンチに座っている桃汰を見つけた。そして桃汰に近寄る二人の20歳代の男の姿を認めた。男に話しかけられた桃汰は3人でどこかへ行こうとする。俺は不審に思って友人たちに先に行くよう伝えてから3人の後をつけた。なんとなく桃汰は怯えているように見える。何か脅されたのか…?

3人が人気のない場所で足を止めた。話し声が聞こえないが桃汰がどん、と押し倒されたのが見えた。血の気がさっと引くのを感じた。何も考えず俺は3人の前に躍り出た。

「何してる。彼から離れろ」いつもとは違う自分の声のトーンに驚いた。

「…い、いち兄…逃げて….」桃汰は怯えながら俺を見つめる。見ると学ランのボタンが外されている。…何だ?こいつら男なのに男を襲ってるのか?

「…やったー、ほんとに引っかかったよ」
「な、まさか本当に来るとはね」男たちは2人でにやにやと話している。

「聞こえなかったんですか?彼から離れろって言ってるんです」俺が男2人に近づくと男たちはすんなりと退いた。

「良いよ、俺たちの目的は君だしね。前から君に興味があったんだよ。この子と一緒にいるのをいつも見てたからさー、この子を利用すれば君に近づけるかなーって思って」目的が俺?何の目的?興味?どういう意味だ?つか桃汰を利用した?こんなに桃汰を怖がらせて…ふつふつと怒りが湧いてくるのが分かった。こんな感情は初めてだ。

「さっきから何言ってるんですか。彼にした事を謝ってください。俺に用があったなら直接会いに来れば良いでしょう」俺がそう言うと男2人は「じゃあお構いなく」と言って俺の腕を掴むと俺を押し倒した。

床に打ち付けられた背中が痛い。男2人に押さえられてしまうと流石に抵抗が出来なかった。桃汰だけでも逃げてくれればそれで良い。……怖い…男2人の顔が段々と近づいてくる。2人の手が俺の服にかかる。

「いち兄…っ…いち兄….」桃汰が泣きじゃくる。口元を男の手で塞がれた俺は桃汰に逃げてとも言えなかった。

怖さのあまり俺がぎゅっと目を瞑った瞬間だった。聞き慣れた声が聞こえる。

「いち…!兄貴…!てめぇ…!」息を切らした柚斗が男2人に蹴りを入れた。男はそそくさと逃げていく。思わず見惚れた。柚斗のかっこよさに。

「ゆず…ごめん、ありがと…」まだ礼を言い終わらないうちに柚斗が俺を起こして抱き締めてきた。とても震えている。きっと柚斗も怖かっただろう。自分より大きい大人に立ち向かうなんて。

「…馬鹿…何でお前らはいつも心配掛けんだよ…馬鹿….っ」俺を抱き締める腕に一層の力が込められる。あぁ、俺は何て馬鹿なんだろう。歳下の子に怖い思いをさせて。誰よりも大切な2人を傷つけて…

「ごめん…ごめんな…」柚斗の頭をそっと撫でる。柚斗は暫く俺を抱き締めていた。

「いち兄…ゆず、ごめんね。俺が酷い目に遭わせちゃった…ごめんね…何も出来なくてごめんね…」桃汰は自分を責めていた。自分も酷い目に遭ったというのに…

「桃汰は悪くない。俺が悪い。歳上なのに2人を怖い目に遭わせた俺が悪い。もも、おいで」優しく微笑みかけながら桃汰をこちらに呼ぶと俺は2人を抱き締めた。

桃汰は泣きじゃくり、柚斗は静かに俺を抱き締めていた。俺はただただ自分の不甲斐なさを感じていた。


暫くして教師にあった事を話した。直ぐに警察が来て事情聴取され、男2人の捜索が始まった。

気持ちがまとまらないまま歌を披露し、家に帰った。警察から連絡を受けて早く帰ってきた両親は黙って俺を抱き締めてくれた。

俺は双子を傷つけた。危ない目に遭わせた。酷い目に遭わせた。なんて最悪な男だろう。明日どんな顔をして2人に会えば良いのだろうか。


「いちごー、あの双子君が来てるよ」友人が俺の元へと来て廊下を指差した。今は昼休みで、俺はずっと考え事をしていた。指差された方を見ると2人が廊下に立って俺を見ていた。

きっと昨日の話をしようとしているんだ。直ぐに察しがついた俺は友人にお礼を言ってから廊下に出た。

俺たちは会議室に入った。普段使われていないこの部屋は三者面談などの時に使われている。

2人の顔がまともに見れない。どうしよう。いつもみたいに振る舞わなきゃ…

「「「昨日は…ごめん」」」3人が同時に謝った。思わず3人で顔を見合わせる。そうか…それぞれが自分を責めていたんだ。

「ごめん…ごめんなさい…俺があの時断りきれなかったから…一緒に来ないといち兄やゆずを傷つけるって言われて…」桃汰が小さな声で言った。やっぱ脅されたんだ。

「俺も悪かった。2人から目を離しちまったから直ぐに駆けつける事が出来なくて」助けてくれたのは柚斗なのに、柚斗はもっと早く来れてればと自分を責めていた。

「2人とも悪くないよ。桃汰は俺やゆずを助けようとしてくれたんだよな。ゆずも俺たちを助けてくれた。ありがとう。2人に助けられた。悪いのは全部俺だ。俺が原因でこんな事になった。ごめん…」俺は2人に頭を下げた。すると頭を軽く叩かれる。叩いてきたのは柚斗だ。

「…お前も被害者だろ。みんな悪くねぇって事で良いじゃねーか。一番悪いのはあの男たちだろ」少し優しげな瞳で俺を見つめてくる。そんな柚斗がかっこよく見えた。昨日の勇敢な柚斗も今の優しげな瞳を見せる柚斗も。

「…いつのまにかゆずかっこよくなったな。モテそうだわ。ありがとう、ゆず・もも」小さく微笑むと2人も微笑んだ。しかし桃汰は何かを考え込んでいる様子だった。

「俺も…強くならなきゃ」桃汰がぽそりと呟いた。この時にちょうどチャイムが鳴り、桃汰の言葉に気づけなかった。

そう、気づけなかった。俺がかっこいいと柚斗に言った時の柚斗の照れたような笑みに隠された本音と、柚斗を見つめる俺の姿を恨めしそうに見ている桃汰に。



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