異世界ワープしたら王様に求婚されました。

ふわパカ

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18.あまり実感が有りません

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「遙、部屋へ戻る前に話がある」王様が真剣な眼差しを向けてきた。噫、何となく何について言うのかが分かる。きっと俺が此の地へ来てしまった理由を言うんだ。

「…はい」俺は小さく頷くと王様を見つめた。何を言われるんだろう、少し怖い。

「光属性は選ばれし者がなるというのは前にも言ったな。光属性の中でも治癒魔法を出来るのはほんの数人に限られる。そして古来より言い伝えが有るのだ。"神に選ばれし者、異世界より舞い降りる。其の者は闇をも制す者となり、やがて世界に平和と光を取り戻さん"と。此れは昔から言い伝えられてきた伝承のような物。此の世界以外の異世界とやらが有るとは私も信じていなかったが…そなたが突然私の身の上に現れた事、そなたの話す話に出てきた学校などの聞き慣れぬ単語、見た事も無いような衣…如何考えても異世界から来たとしか考えられぬ。そなたは此処とは全く違う世界から来たのであろう?」王様から聞いた伝承をいきなり信じろと言うのは無理があるが、確かに俺は此処とは全く別の世界から来た。其れだけは確かだ。

「はい。此の世界とは別世界だと思われます。俺の話を信じていただけるかは分かりませんが…俺、自分の居た世界で高い所から転落してしまったんです。噫、此れは死ぬと悟ったのですが、目が覚めたら王様の身体の上にいて…現在に至ります」俺は王様を見つめながら経緯を説明した。

「そうか…其れは災難だったな。其れで最初あのような奇妙な事を言っていたのか。だが神に選ばれたそなたは死なずに此の世界へ飛ばされた…恐らくそういう事だろう」王様は頷きながら答えた。神に選ばれた…名誉な事なのかもしれないけど、説明くらいしっかりして欲しい。いきなり見知らぬ土地に飛ばすなんて。

「あ…!あの、俺転落した時1人じゃなかったんです。俺と一緒に落ちてしまった人が居るんです。もしかしたら其の人も此の世界に居るかもしれません」ハッと思い出した俺は早口で告げた。王様は少し驚いた顔をしたかと思うと、うーんと唸り始めた。

「だが遙の他に此の地へ降り立った者の話は私の耳には届いておらぬ。各地へ私の従者が情報を集めに常に動いてはいるが…そういった話が入れば直ぐにそなたに伝えると約束しよう。だが…そうでなければ其の人は…」王様は最後の言葉を言おうとして口をつぐんだ。分かってる、言いたい事は。もし此の世界に来ていないのであれば、俺の後輩は亡くなったという事になる訳だ。王様を見つめ、小さく頷いた。

「遙、そなたが気負う事はない。気にするな」王様は俺の頭を優しく撫でてくれた。何だか心地が良い。

「其れともう一つ伝承が有る。異世界より舞い降りた光属性の者は必ず治癒魔法を駆使でき、更には全属性の魔法を扱えると。本来であれば生まれつき属性が定められているのだがな。そなたは言い伝えによれば水や火など全属性を扱える筈。故に全属性の魔術師をそれぞれ今日そなたに紹介した次第だ」何だかとんでもない事になってきたな…俺、そんなに魔法使える系なの?

「そうなんですか…あまり実感がなくて。バリア?を張ったのも王様の傷を治したのも未だに信じられません」そう、確かに俺は魔法とやらを使ったのだ。だけど未だに信じられない。魔法の無い世界でずっと生きてきたのだから、急に信じるのは無理がある。

「遙の世界に魔法は無かったのか?」王様は不思議そうに首を傾げる。

「はい、そんなの夢の世界というかおとぎ話の世界というか…」小さく頷くと王様が俺の手を優しく包み込む。

「此の手でそなたは私の傷を癒したのだ。どれだけ其れが素晴らしく誇り高い事か。遙、試しに他の属性の魔法も此処で扱ってみるか」王様はまるで宝物に触れるかのように俺の手を優しく撫でてくる。其の手つきが凄く心地良くて、心が暖かくなる。

「へ…?そんなの、いきなり無理です」穏やかな気持ちになっていたのも束の間、王様の提案に俺はふるふると首を横に振った。いきなり他の属性の魔法を使えだなんて、無理があり過ぎる。

「傷を治癒出来る程の力が有れば容易な筈。私と同じ火属性の魔法を扱ってみせよ。私が見本を見せよう」そう言うと王様は指一本を俺の前に出し、そして指先に火を灯した。まるでライターやマッチのよう。小さな炎がゆらゆらと揺らめいている。

「凄い…でも、熱くないんですか?」心配そうに尋ねると王様は笑って首を横に振った。

見よう見真似で出来るかは分からないが、俺も彼がしたように指を一本前に出し、マッチに火が灯るようなイメージをしながら力を込めた。すると何と指先で炎が揺らめき始めたのだ。驚きを隠せず思わずあんぐりと口を開けてしまう。

「此れは…見事だな。遙は優秀だ。其の儘反対の手で雫を作り火を消してみろ」王様は感嘆の声を洩らすと身を乗り出すようにして俺の指先を見つめている。

意を決して頷き、俺は反対の指を一本前に出した。
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