異世界ワープしたら王様に求婚されました。

19.信じられないですね

火が灯る指先の上に反対の手の指をかざした。そして指先から雫を出すようなイメージをしてみた。

すると指先から雫が垂れ、ゆらゆらと揺れる炎が音も無く一瞬で消えたのだ。

此れ…俺がやったんだよな？火を出したのも水を出したのも。

「素晴らしいです遙様。違う種類の魔法を扱うのは初めて拝見しました」傍で見守ってくれていたカレンさんが感嘆の声を上げた。何かちょっと照れる。

「うむ…私も初めて見た。水や火の単体魔法は何度も見ているがこうやって全く異なる属性の魔法を一度に扱うとは…鍛えれば更に大きな力にもなるであろう」真っ直ぐに俺を見つめ王様は言った。

「何だか本当に信じられないですね…」目を丸くしながら俺は己の指を呆然と見つめる。

「そなたなら魔法を駆使して戦える筈だ。これからの遙に期待が高まるというもの」王様は満面の笑みを俺に向けた。何だか照れてしまう。

「あんまり期待はしないでください。でも、俺もっと強くなって王様を守れるように頑張ります」真っ直ぐ王様を見つめると王様は力強く頷いてくれた。

「遙様、あの方とお会いするまでの時間が無くなってしまいます。そろそろお部屋へ参りましょうか」カレンさんがちらりと時計を見て告げた。そうだった、俺はこれからシャインさんと会う約束があったのだ。

「そうだったな。遙、シャインには気をつけるように。カレン、遥を頼んだぞ」王様は俺とカレンさんを交互に見ては少し心配そうに眉根を寄せた。心配させまいと俺もカレンさんも力強く頷き部屋を後にした。