異世界ワープしたら王様に求婚されました。

ふわパカ

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20.多分ですけど

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カレンさんに案内され、俺用の部屋へと通された。部屋の中はとても煌びやかで、大人2.3人は寝れそうな大きなベッドがある。クローゼットの中にはキラキラとした、いかにも高そうな服で溢れており、近くの棚には色とりどりの宝石があしらわれたアクセサリーまである。

テーブルにはフルーツや見た事もないお菓子、高そうなティーポットなどが置いてあり、もう何だか眩暈がする。

「此れ、本当に俺が使って良い部屋…?」思わず本音が声に出てしまい、慌てて己の口を押さえた。傍に控えるカレンさんがくすりと笑う。

「ふふ、勿論遥様のお部屋ですよ。此処にある物全て王様からの贈り物です。どうぞお寛ぎください」彼は優しげな笑みを浮かべて俺を見つめている。

「そんな…眩しすぎて寛げそうにないです」苦笑を浮かべながら見つめ返すと、彼はまたくすりと小さく笑った。

「遙様、シャイン様にお会いする前にお召し物を着替えた方が宜しいかと。其方はお妃様に贈る大切な衣装ですし、其れに肌の露出も多いので…」と提案してくれた。確かに此の服は大切な服だし露出も多くてスースーする。着替えた方が良いかもしれない。

「そうですね、着替える事にします。どのような服でお会いするのが良いんでしょうか」此の国の礼装も分からないしクローゼット内には沢山衣装が有り過ぎて迷ってしまう。

「そうですね…此方は如何でしょうか?通気性も良く派手過ぎず、遥様の綺麗な黒髪によく似た漆黒の衣です。此方ならあまり肌の露出もありませんし安心かと」カレンさんがクローゼットから黒い服を取り出した。

「選んでくださってありがとうございます。では其方の服にしてみます」彼から服を受け取ろうとすると優しく手を握られた。

「遙様、お手伝い致します。此方の国の衣装は慣れないでしょう?」カレンさんは俺を見つめて問い掛けた。確かに此の今着てる服だって如何やって脱ぐのかすら分からない。少し恥ずかしいけどお願いする事にした。

「すみません、お願いします」申し訳なさそうに彼を見ると、彼は優しく微笑んでくれた。

「はい、喜んで」カレンさんは頷くと失礼します、と小さく告げてから俺の着てる服へと手を伸ばした。

ジーッと背中のチャックを下ろされては素肌が露わになり、ひんやりとした冷たい空気と時折温かいカレンさんの手が触れる。何か妙に緊張してしまう。

「遙様はとても綺麗なお肌ですね。其れにとてもすべすべして…」彼の手が俺の背中を優しく撫でる。擽ったくて思わず肩を竦めると、カレンさんが後ろでくすりと笑った。

「遙様、遙様は隙が有り過ぎます。本当に気を付けてくださいね。シャイン様は男好きで有名なんですから」服を脱がされると先程カレンさんが選んでくれた新しい服をふわりと着せてくれる。此の服なら俺でも着れそう。

「隙…ですか?俺、別に魅力とか無いですしシャインさんに目を付けられる事も無いんじゃないかと思うんですけど…」新しい服に袖を通しボタンを閉め、カレンさんからズボンを受け取り足を通す。最後に薄手のマントをカレンさんが来せてくれて着替えは完了。

「何を仰いますか。遙様はとても魅力的なお方だと思います。あの王様の心を射止めたお方ですし…其れに、遥様のお着替えをお手伝いする際、あろう事か貴方様の素肌に触れてみたいという欲に勝てず、お背中に触れてしまった。其れ程魅力のあるお方でございます」カレンさんは深く頭を下げながら告げた。

「そんな…褒め過ぎです。後、其の、背中触ったのは別に嫌じゃなかったので、気にしないでくださいね」言葉選びに迷いながらも答えるとカレンさんは小さくくすりと笑った。

「もう、本当に魅力的でお優しいお方ですね。調子が狂ってしまいます」少し困ったようにはにかむ彼の言葉の意図が分からず、微かに首を傾げて見つめているとカレンさんはまたくすりと笑った。

「では遙様、お着替えも済みましたしお時間が来る迄はどうぞゆっくりお休みになってください。紅茶淹れますね」カレンさんはにこりと笑うと紅茶を淹れる準備をし始めた。

「カレンさん、ありがとうございます。カレンさんが俺の傍に居てくれる人で良かった」カレンさんを見つめながら告げるとカレンさんは紅茶の入ったティーカップを置きながらまたくすりと笑った。

「遙様は本当にお優しいお方ですね。あまりそういう事を仰いますと勘違いしてしまいます。貴方様が私に気が有るのではないかと…」優しげな笑みを浮かべたまま真っ直ぐ見つめてくるカレンさんは、何だかいつもと違う人に見える。

「えっと…」俺が返す言葉に迷っているとカレンさんが急に俺との距離を詰め、ぐっと俺の腰を引き寄せたかと思うと傍にあったベッドへ俺を押し倒した。

「か、カレンさん…?」急な出来事に唯々驚き下から彼を見つめると、不敵な笑みを浮かべてカレンさんが俺を見下ろしていた。

「遙様、突然こうされたら貴方様は如何しますか?今みたいに大人しくしていたらあっという間に食べられてしまいますよ」耳元へと顔を寄せられればいつもより低い声で囁かれる。俺はもうパニックで頭の中が真っ白だ。

「カレンさん…あの、多分ですけど、本当に嫌な相手だったら流石に俺も抵抗してます」小さく今にも消えそうな声で返答すると、カレンさんは小さくくすりと耳元で笑った。

「ふふ、私の負けですね。貴方様には敵いません。無礼をはたらいてしまい申し訳ございませんでした。誰かにこのようにされたら必ず抵抗してくださいね、約束ですよ」カレンさんがいつもの優しい表情で俺を見つめ、優しく頬に触れてくる。そしてゆっくりと俺の上から退くと俺を起こしてくれた。今、何があったんだっけ?もう思考が停止してしまっている。

「さぁ、先程淹れた紅茶も良い具合に冷めて飲み頃になってるかと。此方へお掛けになってください、遙様」カレンさんが椅子を引いて俺が来るのを待っている。いつものあの優しい表情で。さっきのカレンさんと今のカレンさんはまるで別人のようで、狐に摘まれたような感覚。

「はい。ありがとうございます」促されるまま椅子に座るとカレンさんは耳元で告げてきた。

「遙様、私の事怖がらないでくださいね。何方の私も貴方様を大切に思っている事には変わりありませんから」彼の意図する言葉はまたもや俺には理解が出来なくて、微かに首を傾げるとカレンさんはまたくすりと笑った。

「ではまたお時間になりましたらお迎えに上がります。何か御座いましたら何時でも私をお呼びください」カレンさんは深く頭を下げると、いつもの優しい表情で部屋を出て行った。

何か此の部屋に来てから2人のカレンさんに会ったようで、混乱する。とりあえず気持ちを落ち着けようと彼の淹れてくれた紅茶に口を付けた。

其の紅茶は丁度良い温度で、鼻に抜ける風味がとても香り高く、優しく包まれるような心地良さを覚えた。しかし後味は微かに苦味の残る大人の味がした。


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