廃ラブホテル合宿の闇

ノーム

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第1章

17~18話

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17話:暴かれる「恐怖」

九条雅人の「昨夜感じた『恐怖』を表現してもらおう」という言葉に、ロビーには静かな緊張が走った。俺は内心、激しく動揺していた。昨夜の恐怖は、彼による身体的な支配だ。それをどう演じろというのか。

他の参加者たちは、文字通りの「心霊体験」を表現するだろう。俺だけ、全く違う意味での「恐怖」を演じなければならない。

九条雅人「さあ、誰から始める? 自ら進んで困難に立ち向かう者こそが、真の役者だ」

九条の挑戦的な視線が、俺たち全員を射抜く。真っ先に手を挙げたのは、高橋健太だった。

高橋健太「俺からやります!」

高橋は前に進み出ると、大きく息を吸い込んだ。その表情は、みるみるうちに恐怖に引きつっていく。

高橋健太「うぅ……う、うわぁぁぁぁああああっ!!」

高橋は両手で顔を覆い、しゃがみ込んだ。その声は、まるで悪夢にうなされる子どものように、悲鳴と嗚咽が混じり合っていた。体は小刻みに震え、時折、何かに怯えるように顔を上げては、またすぐに顔を覆い隠す。

高橋健太「いる……そこに、いるんだ……! 見ないでくれ、こっちを見るな……!」

彼は虚空に向かって必死に叫び、その場から逃げ出そうともがく。その演技は、確かに心底怯えているように見えた。

彼の背後には、誰もいないはずなのに、まるで何かがそこに立っているかのような錯覚に陥る。数分後、高橋は疲弊したようにその場に崩れ落ち、ぜいぜいと荒い息を吐いていた。

九条雅人「ふむ。なかなかだ、高橋健太君。君の恐怖は、非常に『純粋』だな」

九条は淡々と評価し、次の者を促した。次は鈴木亮太が前に出る。彼は高橋とは異なる恐怖を表現した。

鈴木亮太「っ……はぁ、はぁ……いやだ……誰か、助けて……っ!」

鈴木は、息を詰めたような短い喘ぎを繰り返した。彼の演技は、閉所恐怖症か、あるいは何かに閉じ込められたような状況での絶望感を思わせた。

彼は壁に背を擦り付け、ひたすら小さくなろうとする。その震えは、高橋よりも内向的で、より精神的な追い詰められ方を表現しているようだった。目には涙が浮かび、恐怖と孤独が入り混じった表情で、必死に助けを求める。

九条雅人「なるほど。閉じ込められる恐怖、あるいは孤独か。君の繊細さがよく出ていた」

九条は腕を組み、冷徹な目で鈴木を見つめる。そして、最後の田中剛が前に出た。田中は、それまでの二人とは全く違うアプローチで恐怖を表現した。

田中剛「……クソっ……く、来るな……! 俺を……俺を放っておけえええっ!!」

田中は、怒りに似た、荒々しい恐怖を爆発させた。まるで、襲い来る何かに対して、必死に抵抗しようとしているかのようだ。

拳を握り締め、虚空にパンチを繰り出す仕草を見せ、その目は血走っている。彼の恐怖は、ただ怯えるのではなく、戦おうとする衝動と混ざり合っていた。汗が滲み、荒い息遣いがロビーに響く。

九条雅人「ほう……対峙する恐怖、あるいは怒りか。君の肉体性と精神性がよく表れていた」

三者三様の「恐怖」の表現を見せつけられ、俺の番が来た。九条の視線が、真っ直ぐに俺を捉える。

九条雅人「さあ、藤原ハルキ君。君の『恐怖』を、私に見せてごらん。期待しているよ」

九条の言葉は、まるで俺の昨夜の経験を全て知っているかのように響いた。俺は心臓が口から飛び出しそうになるのを感じた。

他の参加者の前で、あの歪んだ快感と屈辱を、どう表現すればいいのか。俺は、鏡に映る自分自身の姿が、恐怖に引きつり、しかしその奥には、昨夜の快感が蠢いているのを感じた。仮面の下で、俺の精神は悲鳴を上げていた。

18話:悪夢の再現

ロビーでの「恐怖」の表現。高橋、鈴木、田中の演技は、確かにそれぞれの「恐怖」を訴えかけてきた。

しかし、俺にとっての本当の恐怖は、彼らが経験したであろう心霊現象とは、全く異なる次元にあった。九条雅人の視線が、俺の全てを見透かしているかのように突き刺さる。彼の言葉が、耳の奥でこだました。

「何があっても普通に装え。それが演技力だ」。
俺は、一歩前に踏み出した。頭の中では、昨夜の出来事が鮮明に蘇る。あの鏡張りの部屋。九条の指、舌、そして剃刀の冷たさ。

藤原ハルキ「……昨夜、俺は……不思議な夢を見ました」

俺は、あえて「夢」という言葉を選んだ。そうすることで、九条に言われた「普通を装う」ことができると思ったのだ。

他の参加者たちは、俺の言葉に首を傾げている。

藤原ハルキ「眠りについた途端、部屋の電気が点滅し始めて……。そして、鏡の中に、誰かの影が映り込んだんです」

俺は震える声で語り始めた。昨夜、本当に起こったことの一部を、夢として再現する。心臓が激しく脈打つ。

藤原ハルキ「その影が、ゆっくりと俺に近づいてきて……。そして……肩に、触れたんです」

俺は、恐怖に引きつるような表情を作り、震える手で自分の肩を触った。その感触は、九条の指が俺の肌を這ったあの時の、ひんやりとした感覚を呼び覚ます。

藤原ハルキ「振り返っても、誰もいない……。でも、鏡には、はっきりと、その影が俺の背後に立っていて……!」

俺は、必死に演技をする。呼吸を荒くし、目を見開いて、虚空に怯えるような視線を送る。九条は、腕を組み、冷たい目で俺の演技を見つめている。彼の口元には、薄く笑みが浮かんでいるように見えた。

藤原ハルキ「その影が……俺の服を、ゆっくりと……脱がせていくんです……っ!」

声が、喉の奥から絞り出されるような喘ぎになった。この言葉を発するたびに、昨夜の屈辱と、あの抗いがたい快感が同時に蘇る。鏡に映る俺の顔は、脂汗にまみれ、赤顔になっていた。

藤原ハルキ「そして……その、冷たい指**が……俺の……ペニスを……っ!」

俺は、言葉を詰まらせた。これ以上は言えない。頭が真っ白になる。九条の視線が、さらに鋭くなるのを感じる。彼は、俺がどこまで「演技」できるか試している。

九条雅人「ほう? それは、なんとも興味深い夢だね、藤原ハルキ君」

九条の声は、どこか楽しげに響いた。俺の演技の裏にある「真実」に気づいているのだろう。他の参加者たちは、俺の言葉に驚き、少し引いているようにも見えた。

九条雅人「夢の中とはいえ、君は恐怖に立ち向かい、そしてそこから何かを得たようだ。その『何か』が、今後の君の演技に、どう影響するか……楽しみにしているよ」

九条の言葉は、まるで俺の全てを見透かしているかのように響いた。彼の吐息が、俺の肌を舐めるように脳裏をよぎる。

俺は、冷や汗を流しながらも、必死に平静を保とうと努めた。鏡に映る自分の顔は、なんとか「普通」の表情を保っているように見えたが、その奥では、恐怖と快感、そして九条への抗いがたい支配欲が、ねっとりと絡みつき、俺の精神を蝕んでいた。
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