売れない不動産

本歌取安

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第2章 物件調査

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翌日、都心にある南急建設の本社ビル。

奥村は自席につくなり、すぐにノートパソコンを開き、法人向けの登記情報検索サイトにアクセスした。

画面に入力するのは、あの洋館の区画の地番。
手帳に記録していた情報を頼りに、検索欄を慎重に埋めていく。

――検索開始。

数秒の読み込みの後、所有者の名前が画面に表示される。

「所有者:喜連川 義雅(きつれがわ よしまさ)」

-……まだ登記は生きてるのか-

所有権移転の記録はなく、抵当権なども設定されていない。
放置されてはいても、法的にはまだ“誰かの家”だった。
住所欄を見ると、現住所は京都市内のとあるマンションとなっていた。

奥村は画面のキャプチャを取り、印刷ボタンを押す。
プリンターから印字された紙を手に取ると、席を立ち、営業部のマネージャーの席に向かった。

「すみません、課長。例の件ですが、登記はまだ生きていました。所有者の現住所も確認済みです」

課長は書類をざっと目を通し、頷いた。

「よし。さっさと会ってこい。ああいう遊休地は競合に見つかる前に動いた方がいい。交渉の糸口があるなら、多少の条件は呑んでも構わん。何なら建物付きでもいい。あとで解体すればいい話だ」

「はい。じゃあ、これから出張申請出して、早めに動きます」

「頼んだぞ。京都だっけ? たまには風情のある街並みでも見てこいよ」

軽口を叩く課長に軽く会釈して、奥村はデスクに戻った。
旅行ではない。
風情を感じに行くのではない。
仕事だ。
利益を生むか、損失を防ぐか、それだけの話。

しかし、胸の奥にあの女性の話が微かに引っかかっている。
女性が言っていた“笑い声”、そして――あの桜の異様なまでの存在感。

ふと、手元のプリントの氏名「喜連川 義雅」を見つめる。
そこには、何かまだ“終わっていない話”があるような気がしてならない。

「……京都か。行ってみるか」

奥村はスーツケースを取り出し、最低限の荷物を詰めはじめた。
すぐに動くこと、それがこの仕事の勝ち筋だ。

だが、その土地の“過去”までもが、簡単に売り買いできるものなのかどうか――彼はまだ知らなかった。
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