終わりの日が始まりの日〜婚約破棄は計画的に〜

ハチ

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終わりの日が始まりの日

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王子のことが好きだった。
ずっと、ずっと、好きだった。
王子も、周りの人たちも私の気持ちを知っていた。
そして王子と私は婚約した。
婚約してからも私は気を抜かなかった。
王子に恥をかかせないように、ふさわしい女でいられるように、努力をした。
勉強やダンスやマナーの習得、本来必要のない料理にだって挑戦した。
全部王子のためだった。
王子は私の努力を認めてくれていた。
君は俺にはもったいない、完璧過ぎると、褒めてくれた。


それなのに、婚約を破棄しようなんて言われるとは思ってもいなかった。



私は頭が真っ白になって、しばらく口を利けなかった。



王子の隣には、女がいた。
女は不安そうに私を見ていた。
二人は手を繋いでいた。
私がおとなしく引き下がるのを女が期待しているのがわかった。

二人の様子を見て、状況を理解したところで、湧き上がったのは怒りだった。

王子のことが好きだった。
王子の側にいるために、必死に努力をしてきた。
だけどポッと出の女に奪われて、私の人生は何だったのかと思う。
努力は、全部、無駄だった。
全てを否定され、今後どうして普通に生きていけるだろう。



私はナイフを握り締めた。
王子のために焼いたケーキを切り分けるための小さなナイフだ。

王子と女はナイフを握った私を見て怯えていた。
王子は女を庇うように前に出た。
王子の従者は更に前に出て、私に冷静になるように言った。
だけど私は止まらない。



私は私の胸にナイフを刺した。
何度も何度も、動けなくなるまで繰り返した。


王子は叫び、女は泣いていた。
従者が私からナイフを取り上げようとしたけれど、もう遅かった。


二人のせいで私は死ぬ。
王子も女もきっと責任を感じるはずだ。


もしも王子が私の死後平気で女と結婚するのならば、流石の私も王子を軽蔑してしまうだろう。
百年の恋も冷めるというやつだ。
無視されても、悪評を広められても許してきた。
だけど女と結婚することだけは、許さない。
耐えてきた理不尽のぶん、女共々呪ってやろうと思う。




もしも王子が後悔し、私の遺体の前で泣いて懺悔するのならば、私は一生王子の側に居ると誓おう。
王子を見守り、王子に尽くし続ける。誰にも王子を傷つけさせない。女も近付かせない。
身体なんてなくたって、魂で繋がれればいいのだ。




とにかく、死んでも逃がさない。








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