鶴乃恩返し

軟体動物タコ

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迷惑をかけると思う。

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「熱中症……」
 バカだなぁ、俺。
「並一君!夕飯作ったわよ。」
「月弎!あ、ありがとう。」
 夕飯作ってくれるなんて。まるで結婚したみたいだ。
「冷蔵庫に入ってたコロッケ温めて、インスタントのラーメン茹でたわよ!」
「あ、ありがとう。」
 3日連続インスタント…… しかもそのコロッケ1週間前のやつ。
「あのおじいさんが連れてきてくれたんだからね!」
「そうなのか、今度あったらお礼しないと。」
「それ食べたら寝なよ。明日は新宿に行くんだから。」
 そうだった、俺が奢るんだった。
「それと、いつ私が呼び捨てにしていいって言った?」
「あ、そのー。すみません。」
「別にいいけどさ、他の人が見たらカップルだと思われちゃうんじゃない?」
「だよな、俺なんかと付き合ってるって知られたら困るよな。」
「そうじゃなくて、あなたが困ると思ったんだけど。」
「そうなの!でも一応。今日はすみませんでした、鶴乃さん。」
「それでいいわ。じゃあ私はもう寝るから。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
                ガシャ
 はぁ、疲れたぁ。

                                        、、、

「……きて、起きて!」
「んあ?あー、おはよう。」
「早く準備して!私はもう行けるわよ!」
 起きるの早いな…… もう少し寝たかったけど仕方ない。

                                      、、、

「わぁー!」
「着いた。」
 まだ9時だぞ。店やってんのか?
「私、お店調べてきたから早く行こう!」
 めっちゃテンション高いな。そして可愛い。
「見て!ここのお店よ!」
「すぐそこにあるんだな。」
ってあれ?この店って……
 大人のメイドカフェ、お触り厳禁……
「おい、この店大丈夫か?」
「何言ってるの?そこじゃなくてこっち!」
「あー、ごめんごめん。」
 何勘違いしてんだ俺は!あー恥ずかしい//
「もうすぐで開店するわ。」
「おーい!」
 あれは、優介!
「どうした優介?こんなとこで会うなんて初めてだな。」
「よぉ、並一1人か……」
「どうもこんにちは!鶴乃月弎です。」
「え、並一の友達?」
「あぁ、友達かな?」
「昨日から並一君の家に住むことになって、かくかくしかじかで今日、新宿に連れてきてもらったんです!」
「えぇぇぇぇ!並一てめぇ!抜けがけしやがって……」
「いや、そんなんじゃ。」
「並一君!開いたわよ!」
「そんじゃ、また今度な優介。」

                                      、、、

 タピオカって色んな味あるんだぁ。
「私、ミルクティーで。」
「俺は、じゃあミルクティーで。」
「かしこまりました。少しお待ちください。」
「なぁ、鶴乃。ひとつ聞いていいか。」
「なんですか?」
「なんで俺の家なんだ?」
 何聞いてんだ俺。
「何言ってるの?たまたまよ。」
「そうか。」
「お待たせしました。タピオカミルクティーです。」

                                      、、、

「店じゃなくてよかったのか?」
「いいのよ。飲みたかっただけだし、それに……」
 やっぱり可愛いな。横顔を眺めてるだけで幸せだ。
「だって並一君。顔真っ赤だよ、朝から。」
「え?」
「朝から顔が真っ赤だったからやめようとしたんだけど、寝言で。」
「寝言?」
「寝言で、「タピオカ美味しいなぁ。」とか言ってたから。」
「俺が?ほんとに?」
「まだ熱中症が治りかけで具合悪いと思ったけど、あんなこと言ってたから。だからせめて早く帰ろうと思って。」
「そうか、それは悪かっ……」
                 バタッ
「……並一君……一君……」
 体が動かない。
 また鶴乃に迷惑をかけ……

                                      、、、

「起きた!大丈夫?」
「鶴乃……すまん、また迷惑をかけて。」
「いいのよ。無理に行かせてしまったのは私だし。私の方こそごめんね。」
 ……
「鶴乃、きっと俺はこれからもお前に迷惑をかけてしまうかもしれない。」
「いきなりどうしたのよ。」
「だから、俺の家は……」
「それでもいいわ。」
 え?
「まだあって2日だけど、あなたはいい人だと思うわ。それに2日で嫌になったりしないわよ。だから、これからもよろしくね!」
「……ありがとう。」
次の日、2人は一日中寝ていた。

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