S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

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第1章

132話 こんな程度か

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「大丈夫か? 手首を捻挫したりしていないか?」

「ぐっ……」

 男はかなり痛かったのか涙を流しているが、逃げずに踏み留まっている。

「よし、続けてくれ。麻痺毒のテストなのに、そもそもまだ刃が俺に届いていないのでは話にならないからな」

「ひ、ひぃっ! こ、こ、降参だ! 許してくれっ!!」

「なんだ、もう終わりか。もっと頑張ってくれよ」

「ひっ!?」

 俺は男の肩に手を置く。
 恐怖で真っ青になっているな。

「では、こうしよう。俺は闘気を限界にまで抑える。その状態で、元々の肉体強度が低い部位……そうだな、首筋でも斬りつければいい。な、簡単だろ?」

「え? は、はい……」

「よし、じゃあやってくれ」

 そう言って、俺は腕組みをして構える。
 闘気の出力を抑えていく。
 S級スキル竜化は強大なんだが、その分手加減は難しいんだよな。
 暴れ回るように体内から湧き出てくる闘気を必死に抑える。
 そして、ミジンコレベルにまで抑えた。

「すーっ……。ふぅ……。はぁ……。行くぜ……」

 男は深呼吸すると、意を決した様子で俺の首に向けてナイフを振り下ろした。
 ピッ……。
 俺の首筋に、ほんの少しの切り傷が入る。

「おっ! これは……」

「は、はははははっ! こうなったらもうこっちのもんだ! この毒はビッグ・エレファントですら数秒で動けなくするシロモノなん――」

「まぁ、こんな程度か……」

 俺はその場を歩いてみせる。
 少しだけ動きづらいが、大したことではない。

「な、なにいっ!? うそだろっ!! 一体何なんだ、お前はっ!?」

「ただの冒険者だよ。スラムの違法奴隷商を潰す依頼を請け負っただけのな。しかし、お前のとっておきの毒がこの程度とは、期待外れだよ」

「くっ……」

「せいぜい、長時間同じ姿勢をしていた時に足が痺れて、歩きづらくなるのと同じくらいの感覚だな。まぁ、たまにはこういうのも悪くはないな」

 俺はあえて男に背を向けて、悠々と歩く。
 そうしている内に、痺れが抜けてきた。
 どうやら、S級スキル竜化が作用しているようだ。
 そんじょそこらの毒はそもそも俺に効かないし、多少強力な毒でもこの通りすぐに抗体ができる。
 俺を毒で無力化したいなら、世界トップクラスの毒が必要だろうな。

「ば、化け物かよ……」

 男は呆然と立ち尽くしていたのだった。
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