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66話 回復魔法

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 オスカーが腰を痛めた。
 やはり、魔法系の彼が力仕事をするのは無理があったらしい。

「さあ、イザベラ殿、アリシア殿。気を取り直して帰ることにしましょうか。魔獣の死体は、やはり置いていくことにしましょう」

「お待ち下さい。腰の痛みは大丈夫なのですか?」

「少し痛みますが、何とかなるでしょう。魔獣の死体を持つことを諦めれば、そこまで負担は掛かりませんので」

「…………」

 うーん。
 やっぱり、少し無理しているよね。

「では、私が回復魔法を使いましょう」

「え? イザベラ殿は回復魔法も使えるのですか!?」

 オスカーは驚いたように目を見開いた。

「はい。あまり自信はないのですけれど……」

 回復は、ポーション類に頼り切りだった。
 回復魔法を使えるようになったのは、ここ最近のことだ。
 私は両手をかざすと、意識を集中させる。

「聖なる癒しの力よ。この者の傷を治せ。【ヒーリング】」

 私の掌から淡い光が放たれる。
 その光はオスカーの腰を包み込んだ。

「どうですか?」

「おおっ! 痛みが消えましたよ!」

「これでもう大丈夫ですね」

「いやはや……。素晴らしいです。回復魔法を使えること自体にも驚きましたが、まさかこれほどの効力があるとは!」

 オスカーが感心した様子で言う。
 私もホッとした。
 上手く使えて良かった。
 もし失敗したら、とても恥ずかしかっただろう。

「さすがはイザベラ様です!! 何でもできて凄すぎます!!!」

 アリシアさんは興奮気味に言った。

「いえ。そんなことは……。それに、アリシアさんの光魔法だって大したものじゃない。私は光魔法を使えないから、羨ましいわ」

「そう言って頂けると嬉しいです。でも、イザベラ様の方が凄いですよ。いろんな魔法を使えて、身のこなしも凄くて、勉強もできるし、オシャレやマナーも完璧だし、何より優しいです。わたし、イザベラ様のことが大好きです!!!」

「そ、そうなんだ。ありがとう、アリシアさん」

 私は照れながら答える。
 面と向かって褒められると、なんだかくすぐったいな。

「イザベラ殿は、本当に努力家な方です。最初から全てをできるのではなく、会う度に新しい知識や技術を身につけている。それなのに決して慢心せず、常に謙虚な姿勢を忘れない。まさに尊敬すべき女性です」

 オスカーが言う。
 彼は、いつもこんな感じで私をべた褒めしてくれる。
 正直、かなり恥ずかしい。
 だけど、彼の言葉には嘘がない。
 本気で言っているのだと伝わってくる。
 だから、私は嬉しかった。
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