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68話 目立ちたくない
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のっし、のっし。
私は魔獣を担ぎながら、森を進む。
「ふう。集合場所が見えてきましたね」
「お疲れ様です。イザベラ殿」
「ふぇ~ん。イザベラ様、ありがとうございますぅ!」
三人で歩いて帰る途中、途中で休憩を挟みつつ、ようやく私達の班は合流地点へとたどり着いた。
都合のいいことに、他の生徒達はまだ誰も戻ってきていないようだ。
私は魔獣を地面に下ろす。
そして、一息ついた。
結構重かったからね。
「はう……、緊張しました。わたしもう動けないです」
アリシアさんがその場にへたり込む。
「それも仕方ないわね。山道を歩き薬草を採取するだけでも、普通は大変なことだから。ましてや、魔獣との戦闘までしては、アリシアさんが疲れるのも無理はないわ。オスカー様もお疲れではなくて?」
私はそう声を掛ける。
「……しかし、イザベラ殿はそれに加えて魔獣まで運ばれたではありませんか。私がそんなことを言うわけにはいきませんよ」
オスカーは肩をすくめた。
「えっと……。そのことでお二人に相談があるのですが……」
「何でしょうか?」
「イザベラ様のお願いでしたら、何でも聞きますよぉ」
私は魔獣から少し離れ、オスカーとアリシアさんに向き直る。
「この魔獣は三人で運んできたことに致しましょう。私が担いできたのは内緒にしてほしいのです」
「それは構いませんが……。どうしてですか? このことが広まれば、イザベラ殿の名声はさらに高まると思いますが……」
オスカーが不思議そうな顔をした。
「あまり目立ちたくないんですよ。淑女たる者、目立つことは避けるべきです」
「目立ちたくない? イザベラ様が目立たないなんて、あり得ません! 太陽が隠れることなんて無理ですよぉ」
アリシアさんは、首をぶんぶんと横に振った。
「確かにイザベラ殿なら、今更な話ではありますね。幼少からポーション開発で頭角を現し、王立学園には主席合格したのですから。既に十分に目立っています」
オスカーもアリシアさんに同調する。
「それはそうなのですが……。魔獣を担いでいるところを見られるのは、やはり恥ずかしさの方向性が違うといいますか……」
「なるほど。それもそうですか。では、私たちはこのことについて口外しないと誓いましょう」
「わたしもです!」
二人は快く承諾してくれた。
よしよし。
これで安心だ。
と、そんなことを話していると、人の話し声が聞こえてきた。
「あら? 他の生徒が戻ってきたみたいですね」
「どうやらそのようです」
「ふぇええ!? きっと騒ぎになりますよぉ」
「お二人共、約束通りにお願いしますね」
私はそう言って、他の生徒達が集まるのを静かに待つことにしたのだった。
私は魔獣を担ぎながら、森を進む。
「ふう。集合場所が見えてきましたね」
「お疲れ様です。イザベラ殿」
「ふぇ~ん。イザベラ様、ありがとうございますぅ!」
三人で歩いて帰る途中、途中で休憩を挟みつつ、ようやく私達の班は合流地点へとたどり着いた。
都合のいいことに、他の生徒達はまだ誰も戻ってきていないようだ。
私は魔獣を地面に下ろす。
そして、一息ついた。
結構重かったからね。
「はう……、緊張しました。わたしもう動けないです」
アリシアさんがその場にへたり込む。
「それも仕方ないわね。山道を歩き薬草を採取するだけでも、普通は大変なことだから。ましてや、魔獣との戦闘までしては、アリシアさんが疲れるのも無理はないわ。オスカー様もお疲れではなくて?」
私はそう声を掛ける。
「……しかし、イザベラ殿はそれに加えて魔獣まで運ばれたではありませんか。私がそんなことを言うわけにはいきませんよ」
オスカーは肩をすくめた。
「えっと……。そのことでお二人に相談があるのですが……」
「何でしょうか?」
「イザベラ様のお願いでしたら、何でも聞きますよぉ」
私は魔獣から少し離れ、オスカーとアリシアさんに向き直る。
「この魔獣は三人で運んできたことに致しましょう。私が担いできたのは内緒にしてほしいのです」
「それは構いませんが……。どうしてですか? このことが広まれば、イザベラ殿の名声はさらに高まると思いますが……」
オスカーが不思議そうな顔をした。
「あまり目立ちたくないんですよ。淑女たる者、目立つことは避けるべきです」
「目立ちたくない? イザベラ様が目立たないなんて、あり得ません! 太陽が隠れることなんて無理ですよぉ」
アリシアさんは、首をぶんぶんと横に振った。
「確かにイザベラ殿なら、今更な話ではありますね。幼少からポーション開発で頭角を現し、王立学園には主席合格したのですから。既に十分に目立っています」
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「それはそうなのですが……。魔獣を担いでいるところを見られるのは、やはり恥ずかしさの方向性が違うといいますか……」
「なるほど。それもそうですか。では、私たちはこのことについて口外しないと誓いましょう」
「わたしもです!」
二人は快く承諾してくれた。
よしよし。
これで安心だ。
と、そんなことを話していると、人の話し声が聞こえてきた。
「あら? 他の生徒が戻ってきたみたいですね」
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