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2話 甲子園で優勝しないと退学!?
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「ええーっ!? 甲子園で優勝しないと退学!? どういうことですか、理事長!」
「言葉の通りだよ、龍之介くん。君には夏の甲子園で優勝してもらう」
「いや、でも……。今は8月ですよ!? ほら、見ての通り甲子園が始まってます!!」
女性理事長からとんでもないことを言い渡された龍之介。
彼は、慌ててテレビを指さす。
『さぁ、2099年度の大会もいよいよ大詰め――決勝戦は【紅薔薇女子学院】対【スターライト学園】です!』
そこでは、全国を勝ち抜いてきた少年少女達が甲子園で試合を始めようとしていた。
夏の甲子園も、今まさに決勝戦だ。
「問題ない。私が龍之介くんに命じたのは、来年の甲子園での優勝だよ」
「そんな無茶な……。俺、野球をしていたのは中学までですよ!? そもそも、この【桃色青春高校】に野球部なんて……」
「あるよ。この学校にはね」
「……え?」
「実はね、龍之介くん。この学校には野球部があるんだよ」
「そ、そうなんですか!?」
龍之介が驚く。
そんな彼を見つつ。女性理事長がゆっくりとうなずく。
「ああ、そうだとも。ただし、部員は1人だけどね」
「1人……? それじゃ野球なんてできないじゃないですか! 誰なんですか、そんなもの好きは!」
「何を隠そう、君が部員だよ。龍之介くん」
「……はい?」
何を言われたのか理解できず、龍之介が固まる。
そんな彼に構わず、女理事長が続ける。
「君はこの桃色青春高校における、唯一の男子生徒なんだ。甲子園に女子選手の出場が解禁されて久しいとはいえ、まだまだ実例は少ない。だから男子の君が部長となり、野球部を率いていってほしい。優勝すれば、この高校の名前は全国区となるだろう」
「ちょっと待ってください! どうして俺が勝手に入部させられているんですか!? 俺はただの帰宅部の2年生なのに!」
龍之介が声をあげる。
だが、理事長は美しく首を横に振る。
「私は知っているんだよ。君が中学生大会で全国優勝を達成した投手だとね」
「……ッ!」
「その才能を埋もれさせておくわけにはいかないんだ。だから、君には是非うちの野球部で活躍してもらいたい」
理事長が淡々と告げる。
中学時代に全国制覇を成し遂げた投手――。
そんな者がいれば、確かに甲子園優勝も夢ではないかもしれない。
「嫌です! 俺はもう野球なんかやりたくありません! あの時だって、ひどい目に……」
「あの時? それは……君がチームメイトの女子選手に振られた時のことかい?」
「……そ、そんなことまで知っているんですね。はい、その通りです……」
龍之介がうつむく。
彼の脳裏に浮かぶのは、中学時代の記憶だった。
『ゆ、優勝したぐらいで調子に乗らないでよねっ! 私に手を出そうなんて、そうはいかないわ! このケダモノ!!』
全国制覇を成し遂げて自信満々となった龍之介。
彼はチームメイトであり幼馴染でもあった少女に告白して、盛大に振られたのだ。
「あんな思いは二度としたくないんですよ……。だから俺はもう野球も恋愛もやめたんです」
「なるほどね……。しかし、君には未練があると見える」
「え?」
「この高校は、2年前に桃色青春高校へと名前を変更した。元は女子校だったが、より広く優秀な人材を集めるために共学化したんだよ」
「……」
「君も当然、高校名は認識していたはずだ。それなのになぜ、この高校を選んだのか……。それは、君にはまだ諦めきれないものがあるからだ」
華麗な理事長の言葉を聞いて、龍之介の顔色が変わる。
図星だった。
彼は恋愛を諦めると言いつつも、未だに初恋を引きずっている。
「……俺が恋愛を諦めていないことは認めましょう。しかし、それがどうして野球に繋がるんです?」
「君も気づき始めているはずさ」
「何に?」
「君から野球を取ったら――何も残らないことに。実際、君は女子たちに告白しまくっているのに、振られっぱなしらしいじゃないか」
「それは……」
「君は我が校のおける唯一の男子。少なくとも、この高校の中に恋のライバルはいない。それなのに連敗なんてねぇ。野球をやっていない君に魅力はないんだよ」
「くっ……」
事実だった。
彼は桃色青春高校に入学してからというもの、多くの美少女たちに声をかけてきた。
しかし、全員に断られ続けている。
「いい加減に気づいた方がいいよ。君にはもう、野球しかないんだ。野球を捨てたら、君には本当に何も残らない」
「……」
「それに、これは君の願いでもあるはずだよ。本当は、もう一度白球を握りたいんじゃあないのかい? 野球をしているところを見せれば、一部のチョロい生徒はすぐに落ちるさ。なにせ、この学園に入学してくるような女生徒だからね。大きな欲求不満を抱えていてもおかしくない」
「ごくり……」
龍之介が喉を鳴らす。
告白に失敗し続けている彼にとって、女理事長の話は魅力的に思えた。
「その上、甲子園優勝まで成し遂げたらどうなると思う?」
「ど、どうなるんですか?」
「そりゃもうモテモテだよ。今の日本において、野球はトップクラスに人気のスポーツだからね。甲子園優勝投手ともなれば、プロ入り濃厚で将来的な収入にも期待できる。青田買いのミーハー女子がウジャウジャ寄ってくるよ」
「な、なんて魅力的な話なんだ……」
「そう思うだろ? だから野球部のキャプテンとして、甲子園で優勝してくれ。君ならきっとできる」
「わかりました! 理事長! 俺はこの桃色青春高校で野球部を復活させます!!」
龍之介が決意を新たに宣言する。
そんな彼を見て、理事長は満足げな笑みを浮かべた。
「ふっ、任せたよ。龍之介くん」
こうして、桃色青春高校の野球部が復活することになったのだった。
※この作品は2100年前後における甲子園球児を扱った野球フィクションです。
未来では義務教育が長期化しており、20歳で高校一年生となります。
つまり、この作品に登場する女子高生は全員が成人しているという設定となります。
あらかじめご了承ください。
「言葉の通りだよ、龍之介くん。君には夏の甲子園で優勝してもらう」
「いや、でも……。今は8月ですよ!? ほら、見ての通り甲子園が始まってます!!」
女性理事長からとんでもないことを言い渡された龍之介。
彼は、慌ててテレビを指さす。
『さぁ、2099年度の大会もいよいよ大詰め――決勝戦は【紅薔薇女子学院】対【スターライト学園】です!』
そこでは、全国を勝ち抜いてきた少年少女達が甲子園で試合を始めようとしていた。
夏の甲子園も、今まさに決勝戦だ。
「問題ない。私が龍之介くんに命じたのは、来年の甲子園での優勝だよ」
「そんな無茶な……。俺、野球をしていたのは中学までですよ!? そもそも、この【桃色青春高校】に野球部なんて……」
「あるよ。この学校にはね」
「……え?」
「実はね、龍之介くん。この学校には野球部があるんだよ」
「そ、そうなんですか!?」
龍之介が驚く。
そんな彼を見つつ。女性理事長がゆっくりとうなずく。
「ああ、そうだとも。ただし、部員は1人だけどね」
「1人……? それじゃ野球なんてできないじゃないですか! 誰なんですか、そんなもの好きは!」
「何を隠そう、君が部員だよ。龍之介くん」
「……はい?」
何を言われたのか理解できず、龍之介が固まる。
そんな彼に構わず、女理事長が続ける。
「君はこの桃色青春高校における、唯一の男子生徒なんだ。甲子園に女子選手の出場が解禁されて久しいとはいえ、まだまだ実例は少ない。だから男子の君が部長となり、野球部を率いていってほしい。優勝すれば、この高校の名前は全国区となるだろう」
「ちょっと待ってください! どうして俺が勝手に入部させられているんですか!? 俺はただの帰宅部の2年生なのに!」
龍之介が声をあげる。
だが、理事長は美しく首を横に振る。
「私は知っているんだよ。君が中学生大会で全国優勝を達成した投手だとね」
「……ッ!」
「その才能を埋もれさせておくわけにはいかないんだ。だから、君には是非うちの野球部で活躍してもらいたい」
理事長が淡々と告げる。
中学時代に全国制覇を成し遂げた投手――。
そんな者がいれば、確かに甲子園優勝も夢ではないかもしれない。
「嫌です! 俺はもう野球なんかやりたくありません! あの時だって、ひどい目に……」
「あの時? それは……君がチームメイトの女子選手に振られた時のことかい?」
「……そ、そんなことまで知っているんですね。はい、その通りです……」
龍之介がうつむく。
彼の脳裏に浮かぶのは、中学時代の記憶だった。
『ゆ、優勝したぐらいで調子に乗らないでよねっ! 私に手を出そうなんて、そうはいかないわ! このケダモノ!!』
全国制覇を成し遂げて自信満々となった龍之介。
彼はチームメイトであり幼馴染でもあった少女に告白して、盛大に振られたのだ。
「あんな思いは二度としたくないんですよ……。だから俺はもう野球も恋愛もやめたんです」
「なるほどね……。しかし、君には未練があると見える」
「え?」
「この高校は、2年前に桃色青春高校へと名前を変更した。元は女子校だったが、より広く優秀な人材を集めるために共学化したんだよ」
「……」
「君も当然、高校名は認識していたはずだ。それなのになぜ、この高校を選んだのか……。それは、君にはまだ諦めきれないものがあるからだ」
華麗な理事長の言葉を聞いて、龍之介の顔色が変わる。
図星だった。
彼は恋愛を諦めると言いつつも、未だに初恋を引きずっている。
「……俺が恋愛を諦めていないことは認めましょう。しかし、それがどうして野球に繋がるんです?」
「君も気づき始めているはずさ」
「何に?」
「君から野球を取ったら――何も残らないことに。実際、君は女子たちに告白しまくっているのに、振られっぱなしらしいじゃないか」
「それは……」
「君は我が校のおける唯一の男子。少なくとも、この高校の中に恋のライバルはいない。それなのに連敗なんてねぇ。野球をやっていない君に魅力はないんだよ」
「くっ……」
事実だった。
彼は桃色青春高校に入学してからというもの、多くの美少女たちに声をかけてきた。
しかし、全員に断られ続けている。
「いい加減に気づいた方がいいよ。君にはもう、野球しかないんだ。野球を捨てたら、君には本当に何も残らない」
「……」
「それに、これは君の願いでもあるはずだよ。本当は、もう一度白球を握りたいんじゃあないのかい? 野球をしているところを見せれば、一部のチョロい生徒はすぐに落ちるさ。なにせ、この学園に入学してくるような女生徒だからね。大きな欲求不満を抱えていてもおかしくない」
「ごくり……」
龍之介が喉を鳴らす。
告白に失敗し続けている彼にとって、女理事長の話は魅力的に思えた。
「その上、甲子園優勝まで成し遂げたらどうなると思う?」
「ど、どうなるんですか?」
「そりゃもうモテモテだよ。今の日本において、野球はトップクラスに人気のスポーツだからね。甲子園優勝投手ともなれば、プロ入り濃厚で将来的な収入にも期待できる。青田買いのミーハー女子がウジャウジャ寄ってくるよ」
「な、なんて魅力的な話なんだ……」
「そう思うだろ? だから野球部のキャプテンとして、甲子園で優勝してくれ。君ならきっとできる」
「わかりました! 理事長! 俺はこの桃色青春高校で野球部を復活させます!!」
龍之介が決意を新たに宣言する。
そんな彼を見て、理事長は満足げな笑みを浮かべた。
「ふっ、任せたよ。龍之介くん」
こうして、桃色青春高校の野球部が復活することになったのだった。
※この作品は2100年前後における甲子園球児を扱った野球フィクションです。
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あらかじめご了承ください。
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