3 / 11
3話 金縛り
しおりを挟む
伯爵家を追放されてしまった俺は、別の領に向かうことにした。
そして、しばらくはローグイラという街を拠点に活動することにした。
夜も遅いので、宿屋を訪れた。
あいにく混雑していたが、かろうじて一室だけは空いていた。
案内された部屋に入る。
ちゃんと掃除されている、きれいな部屋だ。
宿泊費が銀貨1枚と格安なのが気になる。
だがーー。
「ZZZ……」
いつの間にか俺は眠っていた。
長旅で疲れていたのもあるだろう。
そしてーー。
「(……ん? 俺は寝ていたのか……。今は何時頃だ? まだ暗いな……)」
俺は寝転んだままそう思う。
夜中にふと目が覚めてしまった感じか。
姿勢を変えて、もう少し寝ようか。
そう思ったがーー。
「(む? 体が重い……。動かない……)」
体を動かせない。
微動だにしない。
初めての経験だ。
これは、いったいなんだ?
「うふふふふ。この部屋には、瘴気が満ちているわね。やっと実体化できたわ……」
傍らから何やら声が聞こえる。
若い女性……いや、少女の声だ。
俺は動かない体に必死に命令し、何とか眼球だけは声の方向に向ける。
「(ぐ……。ぬぬぬ……)」
少女の姿が見えそうで見えない。
体も動きそうで動かない。
「うふふふふ。この状態で、意識があるのね。大したものだわ……」
少女がそう言う。
この口ぶりからすると、俺の今の状態は彼女のせいなのか?
「(お、俺をどうするつもりだ……?)」
俺は何とかそう口にする。
いや、口に出せているのか?
自分ではよくわからない。
「うふふふふ。もちろん、たっぷりと味あわせてもらうわよ。やっと実体化できたことだしね……」
俺を食うつもりか。
食人鬼か何かか。
それとも、魂を食う悪霊か何かか。
「(や、やめろ。やめてくれ。俺はまだ、死にたくない……)」
伯爵家から追放されてしまったが、俺は人生を諦めていない。
何とか、父上を見返したい。
もしそれがムリでも、平民としてそれなりに幸せに過ごしていくのも悪くはないはずだ。
明日にでも冒険者ギルドを訪れて、初級冒険者として食い扶持を確保したい。
伯爵家の跡取りとして多少の武芸の心得はあるし、1人で生きていくぐらいはできるはずだ。
生活が安定してきたら、かつて俺を慕ってくれていたあの村の様子も確認しておきたい。
俺はこんなところで死ぬわけにはいかない。
「うふふふふ。何かを勘違いしているみたいね」
「(勘違いだと? 何をだ?)」
「説明するのも面倒ね……。もういいわ、さっさとやっちゃいましょう。もう一度眠っていなさい」
少女が俺に近づいてくる。
そして、何やら眠気が襲ってきた。
「(な、何だ? 眠い……)」
俺は先ほどまで眠っていたし、今もずっとベッドに横たわっている。
本来であれば二度寝しても不思議ではない環境ではある。
しかし、今は謎の少女と会話をしている最中である。
そんな状況で眠くなってくるのはおかしい。
俺は眠気に抗いつつ、少女の様子をうかがう。
ようやく、少女の顔が見えた。
結構かわいい。
だが、生気を感じない。
どことなく不気味な印象すら受ける。
「うふふふふ。まだ起きているの? なかなかの精神力だわ。でも、いけない子ね」
少女のかわいい顔が俺の顔に近づいてくる。
チュッ。
俺の口に、口づけをされた。
「(お、俺のファーストキスが……。いや、それにしてもこれは何だ? 異様に眠い……)」
かわいい少女に口づけをされて、本来であればテンションが爆上げになっていてもおかしくない局面である。
しかし、少女が口づけをしたタイミングで、逆に眠気が加速してきた。
かわいいとはいえ、得体の知れない少女が近くにいる環境で不防備に眠るわけにはいかない。
「(寝ちゃダメだ。寝ちゃダメだ。寝ちゃダm……)」
俺の必死の抵抗も虚しく、俺の意識は薄れていく。
「うふふふふ。これから末永くよろしくね、ダーリン」
少女の満足気な声を聞きつつ、俺は意識を手放した。
そして、しばらくはローグイラという街を拠点に活動することにした。
夜も遅いので、宿屋を訪れた。
あいにく混雑していたが、かろうじて一室だけは空いていた。
案内された部屋に入る。
ちゃんと掃除されている、きれいな部屋だ。
宿泊費が銀貨1枚と格安なのが気になる。
だがーー。
「ZZZ……」
いつの間にか俺は眠っていた。
長旅で疲れていたのもあるだろう。
そしてーー。
「(……ん? 俺は寝ていたのか……。今は何時頃だ? まだ暗いな……)」
俺は寝転んだままそう思う。
夜中にふと目が覚めてしまった感じか。
姿勢を変えて、もう少し寝ようか。
そう思ったがーー。
「(む? 体が重い……。動かない……)」
体を動かせない。
微動だにしない。
初めての経験だ。
これは、いったいなんだ?
「うふふふふ。この部屋には、瘴気が満ちているわね。やっと実体化できたわ……」
傍らから何やら声が聞こえる。
若い女性……いや、少女の声だ。
俺は動かない体に必死に命令し、何とか眼球だけは声の方向に向ける。
「(ぐ……。ぬぬぬ……)」
少女の姿が見えそうで見えない。
体も動きそうで動かない。
「うふふふふ。この状態で、意識があるのね。大したものだわ……」
少女がそう言う。
この口ぶりからすると、俺の今の状態は彼女のせいなのか?
「(お、俺をどうするつもりだ……?)」
俺は何とかそう口にする。
いや、口に出せているのか?
自分ではよくわからない。
「うふふふふ。もちろん、たっぷりと味あわせてもらうわよ。やっと実体化できたことだしね……」
俺を食うつもりか。
食人鬼か何かか。
それとも、魂を食う悪霊か何かか。
「(や、やめろ。やめてくれ。俺はまだ、死にたくない……)」
伯爵家から追放されてしまったが、俺は人生を諦めていない。
何とか、父上を見返したい。
もしそれがムリでも、平民としてそれなりに幸せに過ごしていくのも悪くはないはずだ。
明日にでも冒険者ギルドを訪れて、初級冒険者として食い扶持を確保したい。
伯爵家の跡取りとして多少の武芸の心得はあるし、1人で生きていくぐらいはできるはずだ。
生活が安定してきたら、かつて俺を慕ってくれていたあの村の様子も確認しておきたい。
俺はこんなところで死ぬわけにはいかない。
「うふふふふ。何かを勘違いしているみたいね」
「(勘違いだと? 何をだ?)」
「説明するのも面倒ね……。もういいわ、さっさとやっちゃいましょう。もう一度眠っていなさい」
少女が俺に近づいてくる。
そして、何やら眠気が襲ってきた。
「(な、何だ? 眠い……)」
俺は先ほどまで眠っていたし、今もずっとベッドに横たわっている。
本来であれば二度寝しても不思議ではない環境ではある。
しかし、今は謎の少女と会話をしている最中である。
そんな状況で眠くなってくるのはおかしい。
俺は眠気に抗いつつ、少女の様子をうかがう。
ようやく、少女の顔が見えた。
結構かわいい。
だが、生気を感じない。
どことなく不気味な印象すら受ける。
「うふふふふ。まだ起きているの? なかなかの精神力だわ。でも、いけない子ね」
少女のかわいい顔が俺の顔に近づいてくる。
チュッ。
俺の口に、口づけをされた。
「(お、俺のファーストキスが……。いや、それにしてもこれは何だ? 異様に眠い……)」
かわいい少女に口づけをされて、本来であればテンションが爆上げになっていてもおかしくない局面である。
しかし、少女が口づけをしたタイミングで、逆に眠気が加速してきた。
かわいいとはいえ、得体の知れない少女が近くにいる環境で不防備に眠るわけにはいかない。
「(寝ちゃダメだ。寝ちゃダメだ。寝ちゃダm……)」
俺の必死の抵抗も虚しく、俺の意識は薄れていく。
「うふふふふ。これから末永くよろしくね、ダーリン」
少女の満足気な声を聞きつつ、俺は意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる