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5話 スライムが欲しい
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スライムが現れた!
「ていや!」
スライムは倒れた。
「弱っ!」
初心者向けの原っぱにて。トウマの「ていや!」は決してスライムの命に刃を向けたわけではない。剣をスライムで包むためには、まずはスライムに剣を差し向ける必要があったのだ。
しかし刃に触れたスライムはその身を真っ二つにして原っぱにべチャリと落ちたのだ。包むこと無く。
「おい勇者、スライムが弱すぎて包むどころじゃないよこれ。何が苦戦しただよ」
「俺が苦戦したスライムってのは、魔王軍四天王が一体、のびのびスライムのスティッキーだ。物理攻撃は全く効かないし、魔法も吸収するから苦労した思い出がある」
「それを先に言って。のびのびスライムって、それスライムの中でもヤバイやつじゃないか」
スライム族の中でも最上位種の化け物中の化け物である。噂によると、一匹いれば街の全てを飲み込むほどのポテンシャルを持つと言われている。
「……いや、待てよ?」
のびのびスライムの話を聞いてトウマはあることを思い出す。それはギルドで呪いの情報の手がかりとなる仕事を掲示板から探している時、小耳に挟んだ話だった。
*****
「モトツヨ洞窟で巨大な魔石があるのか!?」
「バカ! 声が大きいぞ」
テーブルに座り酒をあおっていた2人の屈強な冒険者が声を潜めた。しかし先ほどの声が馬鹿なほど大きかったためトウマの耳に入ってしまった。内容こそ興味はなかったのだが、隠れてやりとりしているその様子に興味をそそられたトウマは顔だけ掲示板に向けつつ、意識と耳だけそば立てていた。
「最近魔石のレートも上がってるし、行ってみようかな」
「独り占めできるほど甘くねぇぞ。あそこにはのびのびスライムが奥で根付いてるって聞いたことがある。万全の準備をして行くべきだ」
「まじかぁ、あ、シーフとか誘ってみる?」
「無駄だな、何せそののびのびスライムの中に大きく育った魔石が入ってるらしいんだよ」
「じゃあ駄目じゃん」
一人の冒険者はがっくりと声音を落とす。だが話し手の冒険者はニヤニヤとした声音で話を続けた。
「諦めるのはまだ早い。かのシールドマスターが仲間を募って討伐に出るって噂なんだよ」
その言葉に聞き手の男は声音を釣り上げた。
「あのシールドマスター!? あらゆる攻撃から仲間を守る最強の盾の?」
「ああ、だからどんな攻撃も防ぐことができるはず。しかしシールドマスターは攻撃力に乏しいからな」
「そこで攻撃力がある仲間を募ってるってことか! なら立候補してみようぜ!」
会話を聞き終えたトウマは(ふーん、まぁ呪い解くのとは関係ないから参加しなくていいかな)と、再び意識を掲示板に戻すのだった。
*****
「やっべぇじゃん、つーことは、うかうかしてるとモトツヨ洞窟ののびのびスライムが倒されるってことじゃねーかよ」
思い出した話を一通り共有すると、勇者は現時点一番の懸念点を挙げた。近くに居たのなら話を聞いているはずなのだが、受付嬢にお熱ならしく何も耳に入っていなかったとのこと。
「そうなんだよ。でもまだこの話を聞いてからそんなに日数は経過していないし、まだ急げば間に合うはずだよ」
「でも大丈夫か?」と勇者は首を傾げる。
「魔物をテイムするって難しいんじゃねぇの? 俺は未だに魔物を使役するってのがイメージできないんだが」
「まぁ確かにそうだけど、それものびのびスライムが生きてこそでしょ? 僕はそれ以前に、モトツヨ洞窟の魔物と戦えるのかが心配かな」
モトツヨ洞窟には強い魔物がうじゃうじゃいるとギルドで小耳に挟んでいた。しかしトウマは、今の自分にはまだ関係ないかと思って意識から遠ざけていたのだ。
「そこは心配ねぇよ、その剣がありゃ何とかなる」
「そうは言っても不安だなぁ、あのイノシシみたいな単純な奴ならいいんだけど、状態異常とか幻影みたいなからめ手を使われると勝てるかどうか……」
「んなもんぶった切ればいいじゃねぇか」
「物体だけじゃなくそんなのも職掌の範囲内だったのか」
右手で逆手持ちする刃を見て冷や汗を額に滲ませた。同時にとりあえず行っても大丈夫だろうという謎の安心感を自覚する。平坦な勇者の態度が余計にそう思わせた。
「じゃあ行ってみますか! モトツヨ洞窟!」
勇者を先頭に続く自身を、さながら勇者パーティーのようだと思い苦笑いするトウマだった。
「ていや!」
スライムは倒れた。
「弱っ!」
初心者向けの原っぱにて。トウマの「ていや!」は決してスライムの命に刃を向けたわけではない。剣をスライムで包むためには、まずはスライムに剣を差し向ける必要があったのだ。
しかし刃に触れたスライムはその身を真っ二つにして原っぱにべチャリと落ちたのだ。包むこと無く。
「おい勇者、スライムが弱すぎて包むどころじゃないよこれ。何が苦戦しただよ」
「俺が苦戦したスライムってのは、魔王軍四天王が一体、のびのびスライムのスティッキーだ。物理攻撃は全く効かないし、魔法も吸収するから苦労した思い出がある」
「それを先に言って。のびのびスライムって、それスライムの中でもヤバイやつじゃないか」
スライム族の中でも最上位種の化け物中の化け物である。噂によると、一匹いれば街の全てを飲み込むほどのポテンシャルを持つと言われている。
「……いや、待てよ?」
のびのびスライムの話を聞いてトウマはあることを思い出す。それはギルドで呪いの情報の手がかりとなる仕事を掲示板から探している時、小耳に挟んだ話だった。
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「モトツヨ洞窟で巨大な魔石があるのか!?」
「バカ! 声が大きいぞ」
テーブルに座り酒をあおっていた2人の屈強な冒険者が声を潜めた。しかし先ほどの声が馬鹿なほど大きかったためトウマの耳に入ってしまった。内容こそ興味はなかったのだが、隠れてやりとりしているその様子に興味をそそられたトウマは顔だけ掲示板に向けつつ、意識と耳だけそば立てていた。
「最近魔石のレートも上がってるし、行ってみようかな」
「独り占めできるほど甘くねぇぞ。あそこにはのびのびスライムが奥で根付いてるって聞いたことがある。万全の準備をして行くべきだ」
「まじかぁ、あ、シーフとか誘ってみる?」
「無駄だな、何せそののびのびスライムの中に大きく育った魔石が入ってるらしいんだよ」
「じゃあ駄目じゃん」
一人の冒険者はがっくりと声音を落とす。だが話し手の冒険者はニヤニヤとした声音で話を続けた。
「諦めるのはまだ早い。かのシールドマスターが仲間を募って討伐に出るって噂なんだよ」
その言葉に聞き手の男は声音を釣り上げた。
「あのシールドマスター!? あらゆる攻撃から仲間を守る最強の盾の?」
「ああ、だからどんな攻撃も防ぐことができるはず。しかしシールドマスターは攻撃力に乏しいからな」
「そこで攻撃力がある仲間を募ってるってことか! なら立候補してみようぜ!」
会話を聞き終えたトウマは(ふーん、まぁ呪い解くのとは関係ないから参加しなくていいかな)と、再び意識を掲示板に戻すのだった。
*****
「やっべぇじゃん、つーことは、うかうかしてるとモトツヨ洞窟ののびのびスライムが倒されるってことじゃねーかよ」
思い出した話を一通り共有すると、勇者は現時点一番の懸念点を挙げた。近くに居たのなら話を聞いているはずなのだが、受付嬢にお熱ならしく何も耳に入っていなかったとのこと。
「そうなんだよ。でもまだこの話を聞いてからそんなに日数は経過していないし、まだ急げば間に合うはずだよ」
「でも大丈夫か?」と勇者は首を傾げる。
「魔物をテイムするって難しいんじゃねぇの? 俺は未だに魔物を使役するってのがイメージできないんだが」
「まぁ確かにそうだけど、それものびのびスライムが生きてこそでしょ? 僕はそれ以前に、モトツヨ洞窟の魔物と戦えるのかが心配かな」
モトツヨ洞窟には強い魔物がうじゃうじゃいるとギルドで小耳に挟んでいた。しかしトウマは、今の自分にはまだ関係ないかと思って意識から遠ざけていたのだ。
「そこは心配ねぇよ、その剣がありゃ何とかなる」
「そうは言っても不安だなぁ、あのイノシシみたいな単純な奴ならいいんだけど、状態異常とか幻影みたいなからめ手を使われると勝てるかどうか……」
「んなもんぶった切ればいいじゃねぇか」
「物体だけじゃなくそんなのも職掌の範囲内だったのか」
右手で逆手持ちする刃を見て冷や汗を額に滲ませた。同時にとりあえず行っても大丈夫だろうという謎の安心感を自覚する。平坦な勇者の態度が余計にそう思わせた。
「じゃあ行ってみますか! モトツヨ洞窟!」
勇者を先頭に続く自身を、さながら勇者パーティーのようだと思い苦笑いするトウマだった。
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