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8話 シールドマスター
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魔物テイムが難しいと分かったことで、更にトウマの腰が重くなる。だがここで帰ったところで何も変わらない。どうしたものかと悩んでいると、タツミが不安そうに尋ねた。
「あの、何かお気に召しませんでしたか?」
「いや、えーと、心を通わせるのには掌を合わせる必要があるんでしたよね?」
「えぇ、ですが一番無難で簡単な方法というだけでして、特段必須というわけではないですよ」
その言葉にトウマは安堵する。
「良かったぁ、それで、他にはどんな方法があるの?」
「前例があるのですと、殴り合ったりですかね」
「拳で語り合うのか……」
トウマは痛くなった頭を押さえた。拳はすでに一つ失われ、更にのびのびスライムに至っては拳すら無いこと請け合いだ。先を思いやられていると、後ろで勇者が感嘆を漏らした。
「あー! あれってテイムなんだ!」
勇者が急に声を張り上げるので肩を跳ねた。トウマは3人に怪しまれないよう、恨みがましく小声で相槌を打つ。
「……あれって何だよ」
「昔中身のない鎧の魔物と殺し合ったことがあったんだけど、最後まで決着がつかなくてさ、それで最後仲良くなったことがあったんだよ。あれってテイムなのかなーって思ってよ」
(なるほど、昔から魔物と心を通わせる事例はあったわけだ。それが体系化されて『魔物テイマー』という職業になったのかもしれない)
これで魔物テイムの希望は灯された。3人に礼を言うと、トウマは覚悟を決めてのびのびスライムのいる更に奥へと向かう。
その後ろからカミナが呼び止めた。燃えるような闘志が声音から感じられる。
「待ってください! 俺達にも戦わせてください!」
だがユウコがそれを遮る。
「ちょ、カミナ止めときなって、私たちに敵うわけないじゃないの。トウマさんの足手まといになるだけよ」
ユウコの気遣いとカミナの熱意に「ありがとう、でもこれは僕のやるべきことだから迷惑はかけられないよ、ごめんね」と言って再び正面に体を向けた。のびのびスライムが住まう最奥へ。
*****
トウマが最奥へ向かっている頃、調査報告内容をまとめつつ、ユウコ、カミナ、タツミの3人はモトツヨ洞窟を引き返していた。
カミナは拳を握りしめて、先ほどの男の事を思い出した。
「しっかし、トウマさんめっちゃかっけぇよな、あんな強いのにパット見全然そんな雰囲気見せてないし。憧れるぜ」
「あんたには百年早いわ。ゴーレムにも苦戦してた癖に」
「いやゴーレムは無理だろ、硬いもん」
「でもトウマさんはスパッといってたよ? 気合が足んないんじゃないの?」
ヒートアップする会話にタツミが大人としての目を光らせた。
「やめないか、鍛錬あるのみってことだよ。トウマさんはあれほどの強さを持ちながらも別職業の開拓に余念が無かった。まずはその自己成長への貪欲さを見習わなくてはな。近道なんて無いんだよ」
叱られたことで二人は肩を落とした。
そんな時、正面から足音が聞こえてきた。つまり誰かが入り口から奥へ行こうとしているということだ。その姿が暗がりの中に現れる。
「あれれ、先客? のびのびスライム倒しちゃった? 多分無理だと思うけど」
金髪を腰まで伸ばし、更に大きな盾を背中に背負う優男は不敵に尋ねた。3人はその声音から、彼とは真逆の傲慢な態度が感じ取った。そこから警戒の態度を示したのはカミナだった。
「いいや、少し遅いと思うぜ。もうトウマさんが倒しに行っちまったからよ」
その言葉に首を傾げて「トウマ? はて、」と思案する。本当にピンと来ていない様子にカミナは勝ち誇った顔をした。
「知らねぇのか? あれほどの剣の達人はそうはいねぇ。のびのびスライムが目的なら出直してきな」
バカにした口調で怒りを煽る姿勢に「良い加減にしなさいよ」とユウコ。だが金髪の男はしかしクツクツと喉を鳴らした。
「さぁてね、それは俺が自分の目で確かめるとしよう。そんな事より」
後ろ、大丈夫かい?
そう男は呟いた。何事かと三人が振り返ると、岩の塊が動き出して三人に襲い掛かろうとしているところだった。それは徐々にゆっくりと尾行していた、トウマが切り捨てたゴーレムの残骸だった。
「まずい!」とタツミは取り出して瓶を割ろうとする。その瓶の中には簡易ながらテイムをした魔物が入っており、その魔物を盾にしようとしていたのだが、明らかに間に合わない。
だがそれよりも早く間に合った男がいた。
「よっと!」
金髪の男は洞窟の壁を走り三人のすぐ後ろ、つまり三人とゴーレムの残骸の間に割って入る。
そしてその背中をゴーレムに向けると、岩の衝撃が彼の背中に目掛けて襲い掛かった。鉱物のぶつかる音が洞窟中を共鳴させる。
「カウンター、発動」
男の不敵な笑みと共に、背中が宝石のように輝き出した。そしてゴーレムの残骸を跡形もなく消し飛ばす。
「カメオ、盾が先に行かないでください」
その言葉が発されたのは、洞窟の入り口方向からだった。つまり金髪の男に続いてやってきたということだ。
白い法衣の僧侶の女性は、むすっとした表情で先を行く金髪の男、つまりカメオを見つめていた。洞窟の薄暗がりの中、彼女の杖の先がかすかに光る。
「だね、おいら達の出番無くなっちゃうよ」
袖が短い道着を来た少年は笑いながら三人の横を通り過ぎた。通り過ぎる瞬間、彼から発せられる熱気がむわっとしてカミナは後ずさりしてしまう。
「悪い悪い、でもシールドマスターとして、仲間が進むための安全な道を切り開くのが責務だからね」
カメオは二人にそう釈明すると、背中を向けて最奥に向かった。鋼鉄のような、傷一つない剛健なる盾の背中を。
「俺の背中に任せとけって。お前らには傷一つつけさせないよ」
「あの、何かお気に召しませんでしたか?」
「いや、えーと、心を通わせるのには掌を合わせる必要があるんでしたよね?」
「えぇ、ですが一番無難で簡単な方法というだけでして、特段必須というわけではないですよ」
その言葉にトウマは安堵する。
「良かったぁ、それで、他にはどんな方法があるの?」
「前例があるのですと、殴り合ったりですかね」
「拳で語り合うのか……」
トウマは痛くなった頭を押さえた。拳はすでに一つ失われ、更にのびのびスライムに至っては拳すら無いこと請け合いだ。先を思いやられていると、後ろで勇者が感嘆を漏らした。
「あー! あれってテイムなんだ!」
勇者が急に声を張り上げるので肩を跳ねた。トウマは3人に怪しまれないよう、恨みがましく小声で相槌を打つ。
「……あれって何だよ」
「昔中身のない鎧の魔物と殺し合ったことがあったんだけど、最後まで決着がつかなくてさ、それで最後仲良くなったことがあったんだよ。あれってテイムなのかなーって思ってよ」
(なるほど、昔から魔物と心を通わせる事例はあったわけだ。それが体系化されて『魔物テイマー』という職業になったのかもしれない)
これで魔物テイムの希望は灯された。3人に礼を言うと、トウマは覚悟を決めてのびのびスライムのいる更に奥へと向かう。
その後ろからカミナが呼び止めた。燃えるような闘志が声音から感じられる。
「待ってください! 俺達にも戦わせてください!」
だがユウコがそれを遮る。
「ちょ、カミナ止めときなって、私たちに敵うわけないじゃないの。トウマさんの足手まといになるだけよ」
ユウコの気遣いとカミナの熱意に「ありがとう、でもこれは僕のやるべきことだから迷惑はかけられないよ、ごめんね」と言って再び正面に体を向けた。のびのびスライムが住まう最奥へ。
*****
トウマが最奥へ向かっている頃、調査報告内容をまとめつつ、ユウコ、カミナ、タツミの3人はモトツヨ洞窟を引き返していた。
カミナは拳を握りしめて、先ほどの男の事を思い出した。
「しっかし、トウマさんめっちゃかっけぇよな、あんな強いのにパット見全然そんな雰囲気見せてないし。憧れるぜ」
「あんたには百年早いわ。ゴーレムにも苦戦してた癖に」
「いやゴーレムは無理だろ、硬いもん」
「でもトウマさんはスパッといってたよ? 気合が足んないんじゃないの?」
ヒートアップする会話にタツミが大人としての目を光らせた。
「やめないか、鍛錬あるのみってことだよ。トウマさんはあれほどの強さを持ちながらも別職業の開拓に余念が無かった。まずはその自己成長への貪欲さを見習わなくてはな。近道なんて無いんだよ」
叱られたことで二人は肩を落とした。
そんな時、正面から足音が聞こえてきた。つまり誰かが入り口から奥へ行こうとしているということだ。その姿が暗がりの中に現れる。
「あれれ、先客? のびのびスライム倒しちゃった? 多分無理だと思うけど」
金髪を腰まで伸ばし、更に大きな盾を背中に背負う優男は不敵に尋ねた。3人はその声音から、彼とは真逆の傲慢な態度が感じ取った。そこから警戒の態度を示したのはカミナだった。
「いいや、少し遅いと思うぜ。もうトウマさんが倒しに行っちまったからよ」
その言葉に首を傾げて「トウマ? はて、」と思案する。本当にピンと来ていない様子にカミナは勝ち誇った顔をした。
「知らねぇのか? あれほどの剣の達人はそうはいねぇ。のびのびスライムが目的なら出直してきな」
バカにした口調で怒りを煽る姿勢に「良い加減にしなさいよ」とユウコ。だが金髪の男はしかしクツクツと喉を鳴らした。
「さぁてね、それは俺が自分の目で確かめるとしよう。そんな事より」
後ろ、大丈夫かい?
そう男は呟いた。何事かと三人が振り返ると、岩の塊が動き出して三人に襲い掛かろうとしているところだった。それは徐々にゆっくりと尾行していた、トウマが切り捨てたゴーレムの残骸だった。
「まずい!」とタツミは取り出して瓶を割ろうとする。その瓶の中には簡易ながらテイムをした魔物が入っており、その魔物を盾にしようとしていたのだが、明らかに間に合わない。
だがそれよりも早く間に合った男がいた。
「よっと!」
金髪の男は洞窟の壁を走り三人のすぐ後ろ、つまり三人とゴーレムの残骸の間に割って入る。
そしてその背中をゴーレムに向けると、岩の衝撃が彼の背中に目掛けて襲い掛かった。鉱物のぶつかる音が洞窟中を共鳴させる。
「カウンター、発動」
男の不敵な笑みと共に、背中が宝石のように輝き出した。そしてゴーレムの残骸を跡形もなく消し飛ばす。
「カメオ、盾が先に行かないでください」
その言葉が発されたのは、洞窟の入り口方向からだった。つまり金髪の男に続いてやってきたということだ。
白い法衣の僧侶の女性は、むすっとした表情で先を行く金髪の男、つまりカメオを見つめていた。洞窟の薄暗がりの中、彼女の杖の先がかすかに光る。
「だね、おいら達の出番無くなっちゃうよ」
袖が短い道着を来た少年は笑いながら三人の横を通り過ぎた。通り過ぎる瞬間、彼から発せられる熱気がむわっとしてカミナは後ずさりしてしまう。
「悪い悪い、でもシールドマスターとして、仲間が進むための安全な道を切り開くのが責務だからね」
カメオは二人にそう釈明すると、背中を向けて最奥に向かった。鋼鉄のような、傷一つない剛健なる盾の背中を。
「俺の背中に任せとけって。お前らには傷一つつけさせないよ」
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良かったら読んでください!
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