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継承
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「あ!なに取っとんねん!返せ!」
コボ朗の声を余所に、光り輝く玉に目を奪われた。眩しいはずなのに、目が離せない。
これが、能力を与える「能転玉」。意識がだんだん吸いとられる感覚があった。
「ごめんなコボ朗、今の希望はこれしかないんだ」
右手に収まった玉を握りしめ、強く、強く握りしめた。その度合いによって能転玉の光が強くなるのを感じた。更に強く握る。そして玉のが身体中に纏われるのを感じた。
意識が徐々に遠退いていく。視界が霞んでいく。
玉から拡散する光る霧が洞窟の中を照らし、俺の身体中を包み込んでいた。そして、その霧は俺に収束し、やがて自身が発光しているかのようになった。
そして、
何も考えず、
何も感じず、
赤子が産まれてすぐに泣くかのように、
ただ、呟いた。
「ゼロ・ハピネス」
俺の体から白い光の衝撃波が、球が広がるように周囲に放たれた。
それは近くのコボ朗、トウカを取り込んだ。
衝撃波は洞窟をすり抜け、近くのカレンとジニアを取り込んだ。
それでも拡大は止まることはなく、森の影に身を隠しているコロボの精達、動植物をも飲み込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次に目を開くと、視界に広がるのは真っ白な世界だった。だからただ一人、目の前に女性が立っているのがとても目立って見えた。薄い緑色のワンピースを揺らし、長い黒髪を伸ばした彼女はニコッと可愛らしく微笑んだ。
「ようこそ私の魂へ。これから継承の儀を執り行います」
「...はい?」
何を言っているのか分からなかった。継承の儀とはなんだ?
優しそうに、色白な女性は二の句を継ぐ。
「私の魂にある力を君に継承するための儀式をするの。そうすればあの子達も協力してくれるはずよ」
あの子達?誰のことだ?
「ええと、あの子達とは?」
「ほら、君の所にいる白いくて丸っこい子達よ」
「コボ朗のことか!?」
コロボの精が献身的になるなんて想像ができない。先程能転玉を取ろうとした時に足を引っ張られたばっかりだぞ、文字通り。
歪ませた疑いの顔と共に発した言葉を聞いた彼女は、ふふふと可愛らしく微笑んだ。
「コボ朗...そう、コボ介ならそう名付けそうね」
物思いに浸っているところ悪いが、まだ状況が飲み込めない。誰だよコボ介。
「あの、今これどういう状況なんですか?もう少し、そう、喫茶店で出されるスクランブルエッグ並に食べやすく噛み砕いてくれません?」
急な事態に動揺する。そんな時は既知の物事に置き換えて理解しやすくするんだ。そうすれば未知に動揺しなくて済む。
...スクランブルエッグ?あぁ駄目だ、頭が混乱している。急に目の前が真っ白になったと思ったら美しい女性が一人、訳がわからない。
彼女は笑顔で言った。
「これは引き継ぎの事務手続きみたいなものよ。深い意味はないの」
「事務手続きて...いや事務手続きは深い意味ありますよ?ほら、一応記録として足跡残しとかないと後々面倒じゃないですか」
「アハハ、そうね、事務員さん方に失礼だったわ。それはそうと、あなたは私の能転玉を使ったでしょ?」
その「能転玉」という言葉にはっと思い出した。
そうだ、俺はその能転玉を握りしめたんだ。それから変な霧にまとわりつかれてそこから...
「私の能力があの玉に詰まっているのよ。それを君が継ぐってこと。分かった?」
「あ!あー!そういうことね!」
合点がいった。つまり彼女はその能力の持ち主だった訳だ。そういや継承の儀とか言ってたっけ。そういうことね。
だがそこでまたもや疑念が浮かんだ。持ち主?まるで能力がこの人から手離されたみたいじゃないか?
その疑念を晴らすべく、彼女に投げ掛けた。
「なぁ、あの能転玉はあんたのモノだったんだな?」
「そうよ」
綺麗な女性は髪を揺らさず微笑んだ口だけ動かした。
「なら、どうしてそうなった?能力というのは手離せるモノなのか?」
髪の黒色が額にまで伸び影を作る。彼女は僅かにうつむき返した。
「私、この世界で消えちゃったのよ、その時にポロン!って落ちちゃったみたいなの」
「何でぇ!?」
消えるってなに!?ざっくりしすぎだろ!死ぬ的な奴か?それともガオン!?
衝撃的なことを簡単に説明されてさらに疑問符が増えた。
「正直私もそこまで詳しくは覚えてないから分からないかな」
なるほど、分からないならば仕方がないか。これ以上聞いても無駄らしい。なので、他の疑問をぶつけた。
「なら、あなたのその能力というのは何なんだ?」
そう聞くと、今度は視線をそらし、苦々しい表情で答えた。
「私の能力は、周囲を不幸にして自分だけ幸運になる力よ」
「周囲を不幸に、そういうことか」
あの時のコボ朗の言葉を思い出した。
「その秘宝に選ばれた者は、『周囲の者を凌駕する程の幸運を手にいれる』って言われてんねん」
これは、他者からの運気を吸いとったからそうなったのか。
「それは、さぞ辛かったろうな」
「え、分かるの?」
目をぱちくりさせ、驚いた表情で彼女は返答する。
「そりゃね、不幸で他人に迷惑かけたってところは、俺も似たようなものだから」
友達を一人、俺の不幸の巻き添えにしてしまっている。俺の不幸で交通事故にならなければ、ナオキは今頃も満足に生きていたことだろう。そういうところでは、俺とこの人は似ている。
「そろそろ時間が来たみたい、」
そういうと、女性の姿に白いモヤがかかってきた。この白い世界に来たときと似ている。徐々に意識が薄れ、視界が霞んでいく。
視線を反らし、終わりしなになってまた話し始めた。
「確かに私はこの力が嫌いだった、だけど、不幸なあなたならこの力を良く使ってくれるって思うんだ」
それと、と言う時には、もう姿を判別出来そうになかった。白いモヤモヤが視界を奪い、この白い世界に溶けていく。
「あの子達をよろしくね」
ぼおっとする意識が、モヤに呑まれるのを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
洞窟を抜け、森をも取り込んだ白いオーラの中には、様々な生き物がいた。鳥や熊、リス、そして住み着くコロボの精霊達。
加えてジニアやカレン。これら全ての生き物から、白いオーラは灰色がかった煙のようなモノを生き物達からひっぺがした。これは運気だ。
そしてそのオーラは、ひっぺがした運気と共に急激なスピードで俺の元へと収束していく。そして俺はそれを一身に受けた。
目を開ける。目の前には自分を怪力で殴ろうとしていた女の子と、こちらを見ている小さな白い玉がいた。口をパクパクしているように見えた。
だがそれ以上に違和感を覚えたのは、自分の体であった。彼女の言葉が正しいとすると、運気が上がったと見受けられる。だがこの感覚、よく分からない。まるで力が漲っている感じだ。運気なのに。身体中から黄色い煙のようなモノが漂っている。
「な、な、何やその魔力はぁ!?」
と、コボ朗はこちらを見て叫びだした。急に何を言っているんだ?
「魔力?何の事?」
「何の事ちゃうわ!サツキ君からめっちゃ魔力溢れとるんやぞ!分からんのか?」
「魔力が?」
まさか、これが魔力だというのか?
何がなんだか分からなかった。そもそも自分の魔力がマイナスの数値であることを知っているため、自身の変化が魔力だとは思わなかった。
「ゼロ・ハピネス」という能力は周囲の生き物から運気を吸い取るはずである。だがコボ朗が言うには、この漲る力を「魔力」という。これは先程白い世界にいた女性の言葉とは違っていた。
だが、今そんなことを考えいる暇は無さそうである。
目の前にいる女の子は、じっとこちらを見ていた。自分が取ろうとしていた能転玉を取られ、ましてやその力がここまで大きいとなれば、その目から伺える感情は想像に難くない。
彼女は手を伸ばし、こちらを睨んだ。
「私の、それ、」
「いや、もう俺中に入ってしまったから、諦めてくれ」
トウカが差しのべる手を払い一蹴した。
その対応が気にくわなかったのか、「んんー!」と、握った拳を振りかざした。
流石にあの拳をまともには受けたくない。なので、カレンが使っていた拘束する魔法を試してみる。人差し指を相手に向けて、放った。
「ええと、バインド!だっけ?」
指から放たれた光がトウカの両腕を体ごとを縛り、動きを封じた。トウカはそのままうつ伏せに倒れ込んだ。
「おお、本当に使えた」
だが想像では両腕両足を縛りたかったのだが、雑な縛り方になってしまった。コントロールには訓練が必要なのだろう。
それと、自分が初めてまともに魔法を使えたことに感激した。魔力がマイナスだと逆に発動してしまう上、一度それを認知するとまともに発動すらできなかったから、今の自分にちゃんと魔力があるのだと自覚した。
「んんぐぅぅっ!」
と、バインドを破ろうと、腕に力を入れている。だが全然ほどける感じはなさそうだ。一先ず安心らしい。
なので彼女にも気持ち的に寄り添ってみた。
「まぁ、君も不本意であの男に与してるんじゃないのか?ならもう無理する必要はない。あの生けすかない男に何かしら脅されたんだろ?あんなのに付き合う必要はないって、どーせ利用してるだけですぐに切り捨てられるんだぜ?あーいうのは自分しか信じてないんだからな、見るからにそんな感じじゃないか、一緒にマラソン大会を走ろうって言いながら置いていきそうじゃん?」
俺がそういうと、トウカは顔だけを俺に向ける。その表情は悲しみや悔恨がはらまれていた。明らかに怒っている。
ヤバい、ミスった、こいつは自分の意思で彼に与している。つまり、さっきの悪口は逆効果...!
「やだ」
小さく呟かれたその言葉を聞いて、嫌な予感がした。
いや、今は運が良くなったんだ。嫌な予感が出てこようとも、それが叶う筈が...。
トウカは歯軋りした。地面に這いつくばっているトウカがギリギリとしている。その音を、立っている俺の耳は確かに聴くことができた。至近距離でもないのにそのキリキリ音が。どころか洞窟中にそのギリギリとした音が反響し、耳が痛い。とっさに耳を塞いだ。そしてトウカから距離を取る。
やはり、俺の嫌な予感はどうあがいても当たるのか...
バチュン!
トウカは軽々と、サツキが放ったバインドを解いた。
その腕は依然として女子の華奢な細い腕な筈なのに、足も、胴体も、そこまでの力があるとは思えなかった。
なのに、トウカからは凄まじい力が感じられる。
「ジニアは、そんな人じゃない」
トウカは言葉を続けながら起き上がる。
「悪く、言わないで!」
トウカはうつ伏せのまま起き上がりながら、バインドを解いた腕で殴りかかってくる!
「うおわぁ!」
ギリギリで回避する。トウカはまだ足がまだバインドされているので、踏み込むことができずに勢いよく地面に激突する。
「...あのぉ、大丈...!!?」
倒れ込んでいるトウカの拳を中心に、大きなクレーターが形成されている。これは最初に出会った時の力、いや砂と違って今は洞窟、つまり岩だ。ということは、最初以上の力があるということになる。
「ううぅ...」
唸る。
トウカはゆっくりと立ち上がる。しっかりと地面を踏みしめ、首がだらんとし、力無く顔をこちらに向けた。
その姿が異様だった。目は開いている。だがこちらを見ているようには思えなかった。普通なら視線が合いそうなものなのに全く目が合わない。
見えていないのか?
それを試すために、ゆっくりとトウカの後ろに移動する。
「おい!大丈夫かいな!?」
コボ朗が、サツキが能転玉を取った事をもさておき心配してくれた。どうやら目の前の女の子の異様さに、そんなこと言っている暇がないと悟っているようだ。
人差し指を口元に立て、小声でコボ朗に話しかけた。
「大丈夫だから静かにしてくれ」
そう言いながら後ろを取る。いとも簡単なため拍子抜けした。
一体何なんだろうか?
首を傾げた瞬間であった。
グルン!と横回しされている踵に蹴られ、洞窟の壁に激突した。
「ぐはぁっ!」
見えなかった。気がつけば吹き飛んでいた。腹を押さえながらトウカを見ると、左足が上がっている。あれで蹴られたのだ。それも恐ろしい力で!魔力がなければ体が二つに割れていたかもしれない。
腹を抱えて、トウカを見据える。
「これは、ヤバイな、」
ふらふらになりながら立ち上がる。これはもうあれしかない。
「よし!逃げるぞ!」
「またかいな!」
コボ朗をササッと持ち、踵を返した。
自分史上最も素早いであろうスピードで洞窟の入り口に向かって逃げた。
コボ朗の声を余所に、光り輝く玉に目を奪われた。眩しいはずなのに、目が離せない。
これが、能力を与える「能転玉」。意識がだんだん吸いとられる感覚があった。
「ごめんなコボ朗、今の希望はこれしかないんだ」
右手に収まった玉を握りしめ、強く、強く握りしめた。その度合いによって能転玉の光が強くなるのを感じた。更に強く握る。そして玉のが身体中に纏われるのを感じた。
意識が徐々に遠退いていく。視界が霞んでいく。
玉から拡散する光る霧が洞窟の中を照らし、俺の身体中を包み込んでいた。そして、その霧は俺に収束し、やがて自身が発光しているかのようになった。
そして、
何も考えず、
何も感じず、
赤子が産まれてすぐに泣くかのように、
ただ、呟いた。
「ゼロ・ハピネス」
俺の体から白い光の衝撃波が、球が広がるように周囲に放たれた。
それは近くのコボ朗、トウカを取り込んだ。
衝撃波は洞窟をすり抜け、近くのカレンとジニアを取り込んだ。
それでも拡大は止まることはなく、森の影に身を隠しているコロボの精達、動植物をも飲み込んだ。
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次に目を開くと、視界に広がるのは真っ白な世界だった。だからただ一人、目の前に女性が立っているのがとても目立って見えた。薄い緑色のワンピースを揺らし、長い黒髪を伸ばした彼女はニコッと可愛らしく微笑んだ。
「ようこそ私の魂へ。これから継承の儀を執り行います」
「...はい?」
何を言っているのか分からなかった。継承の儀とはなんだ?
優しそうに、色白な女性は二の句を継ぐ。
「私の魂にある力を君に継承するための儀式をするの。そうすればあの子達も協力してくれるはずよ」
あの子達?誰のことだ?
「ええと、あの子達とは?」
「ほら、君の所にいる白いくて丸っこい子達よ」
「コボ朗のことか!?」
コロボの精が献身的になるなんて想像ができない。先程能転玉を取ろうとした時に足を引っ張られたばっかりだぞ、文字通り。
歪ませた疑いの顔と共に発した言葉を聞いた彼女は、ふふふと可愛らしく微笑んだ。
「コボ朗...そう、コボ介ならそう名付けそうね」
物思いに浸っているところ悪いが、まだ状況が飲み込めない。誰だよコボ介。
「あの、今これどういう状況なんですか?もう少し、そう、喫茶店で出されるスクランブルエッグ並に食べやすく噛み砕いてくれません?」
急な事態に動揺する。そんな時は既知の物事に置き換えて理解しやすくするんだ。そうすれば未知に動揺しなくて済む。
...スクランブルエッグ?あぁ駄目だ、頭が混乱している。急に目の前が真っ白になったと思ったら美しい女性が一人、訳がわからない。
彼女は笑顔で言った。
「これは引き継ぎの事務手続きみたいなものよ。深い意味はないの」
「事務手続きて...いや事務手続きは深い意味ありますよ?ほら、一応記録として足跡残しとかないと後々面倒じゃないですか」
「アハハ、そうね、事務員さん方に失礼だったわ。それはそうと、あなたは私の能転玉を使ったでしょ?」
その「能転玉」という言葉にはっと思い出した。
そうだ、俺はその能転玉を握りしめたんだ。それから変な霧にまとわりつかれてそこから...
「私の能力があの玉に詰まっているのよ。それを君が継ぐってこと。分かった?」
「あ!あー!そういうことね!」
合点がいった。つまり彼女はその能力の持ち主だった訳だ。そういや継承の儀とか言ってたっけ。そういうことね。
だがそこでまたもや疑念が浮かんだ。持ち主?まるで能力がこの人から手離されたみたいじゃないか?
その疑念を晴らすべく、彼女に投げ掛けた。
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「そうよ」
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「何でぇ!?」
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なるほど、分からないならば仕方がないか。これ以上聞いても無駄らしい。なので、他の疑問をぶつけた。
「なら、あなたのその能力というのは何なんだ?」
そう聞くと、今度は視線をそらし、苦々しい表情で答えた。
「私の能力は、周囲を不幸にして自分だけ幸運になる力よ」
「周囲を不幸に、そういうことか」
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これは、他者からの運気を吸いとったからそうなったのか。
「それは、さぞ辛かったろうな」
「え、分かるの?」
目をぱちくりさせ、驚いた表情で彼女は返答する。
「そりゃね、不幸で他人に迷惑かけたってところは、俺も似たようなものだから」
友達を一人、俺の不幸の巻き添えにしてしまっている。俺の不幸で交通事故にならなければ、ナオキは今頃も満足に生きていたことだろう。そういうところでは、俺とこの人は似ている。
「そろそろ時間が来たみたい、」
そういうと、女性の姿に白いモヤがかかってきた。この白い世界に来たときと似ている。徐々に意識が薄れ、視界が霞んでいく。
視線を反らし、終わりしなになってまた話し始めた。
「確かに私はこの力が嫌いだった、だけど、不幸なあなたならこの力を良く使ってくれるって思うんだ」
それと、と言う時には、もう姿を判別出来そうになかった。白いモヤモヤが視界を奪い、この白い世界に溶けていく。
「あの子達をよろしくね」
ぼおっとする意識が、モヤに呑まれるのを感じた。
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洞窟を抜け、森をも取り込んだ白いオーラの中には、様々な生き物がいた。鳥や熊、リス、そして住み着くコロボの精霊達。
加えてジニアやカレン。これら全ての生き物から、白いオーラは灰色がかった煙のようなモノを生き物達からひっぺがした。これは運気だ。
そしてそのオーラは、ひっぺがした運気と共に急激なスピードで俺の元へと収束していく。そして俺はそれを一身に受けた。
目を開ける。目の前には自分を怪力で殴ろうとしていた女の子と、こちらを見ている小さな白い玉がいた。口をパクパクしているように見えた。
だがそれ以上に違和感を覚えたのは、自分の体であった。彼女の言葉が正しいとすると、運気が上がったと見受けられる。だがこの感覚、よく分からない。まるで力が漲っている感じだ。運気なのに。身体中から黄色い煙のようなモノが漂っている。
「な、な、何やその魔力はぁ!?」
と、コボ朗はこちらを見て叫びだした。急に何を言っているんだ?
「魔力?何の事?」
「何の事ちゃうわ!サツキ君からめっちゃ魔力溢れとるんやぞ!分からんのか?」
「魔力が?」
まさか、これが魔力だというのか?
何がなんだか分からなかった。そもそも自分の魔力がマイナスの数値であることを知っているため、自身の変化が魔力だとは思わなかった。
「ゼロ・ハピネス」という能力は周囲の生き物から運気を吸い取るはずである。だがコボ朗が言うには、この漲る力を「魔力」という。これは先程白い世界にいた女性の言葉とは違っていた。
だが、今そんなことを考えいる暇は無さそうである。
目の前にいる女の子は、じっとこちらを見ていた。自分が取ろうとしていた能転玉を取られ、ましてやその力がここまで大きいとなれば、その目から伺える感情は想像に難くない。
彼女は手を伸ばし、こちらを睨んだ。
「私の、それ、」
「いや、もう俺中に入ってしまったから、諦めてくれ」
トウカが差しのべる手を払い一蹴した。
その対応が気にくわなかったのか、「んんー!」と、握った拳を振りかざした。
流石にあの拳をまともには受けたくない。なので、カレンが使っていた拘束する魔法を試してみる。人差し指を相手に向けて、放った。
「ええと、バインド!だっけ?」
指から放たれた光がトウカの両腕を体ごとを縛り、動きを封じた。トウカはそのままうつ伏せに倒れ込んだ。
「おお、本当に使えた」
だが想像では両腕両足を縛りたかったのだが、雑な縛り方になってしまった。コントロールには訓練が必要なのだろう。
それと、自分が初めてまともに魔法を使えたことに感激した。魔力がマイナスだと逆に発動してしまう上、一度それを認知するとまともに発動すらできなかったから、今の自分にちゃんと魔力があるのだと自覚した。
「んんぐぅぅっ!」
と、バインドを破ろうと、腕に力を入れている。だが全然ほどける感じはなさそうだ。一先ず安心らしい。
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「まぁ、君も不本意であの男に与してるんじゃないのか?ならもう無理する必要はない。あの生けすかない男に何かしら脅されたんだろ?あんなのに付き合う必要はないって、どーせ利用してるだけですぐに切り捨てられるんだぜ?あーいうのは自分しか信じてないんだからな、見るからにそんな感じじゃないか、一緒にマラソン大会を走ろうって言いながら置いていきそうじゃん?」
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ヤバい、ミスった、こいつは自分の意思で彼に与している。つまり、さっきの悪口は逆効果...!
「やだ」
小さく呟かれたその言葉を聞いて、嫌な予感がした。
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トウカは歯軋りした。地面に這いつくばっているトウカがギリギリとしている。その音を、立っている俺の耳は確かに聴くことができた。至近距離でもないのにそのキリキリ音が。どころか洞窟中にそのギリギリとした音が反響し、耳が痛い。とっさに耳を塞いだ。そしてトウカから距離を取る。
やはり、俺の嫌な予感はどうあがいても当たるのか...
バチュン!
トウカは軽々と、サツキが放ったバインドを解いた。
その腕は依然として女子の華奢な細い腕な筈なのに、足も、胴体も、そこまでの力があるとは思えなかった。
なのに、トウカからは凄まじい力が感じられる。
「ジニアは、そんな人じゃない」
トウカは言葉を続けながら起き上がる。
「悪く、言わないで!」
トウカはうつ伏せのまま起き上がりながら、バインドを解いた腕で殴りかかってくる!
「うおわぁ!」
ギリギリで回避する。トウカはまだ足がまだバインドされているので、踏み込むことができずに勢いよく地面に激突する。
「...あのぉ、大丈...!!?」
倒れ込んでいるトウカの拳を中心に、大きなクレーターが形成されている。これは最初に出会った時の力、いや砂と違って今は洞窟、つまり岩だ。ということは、最初以上の力があるということになる。
「ううぅ...」
唸る。
トウカはゆっくりと立ち上がる。しっかりと地面を踏みしめ、首がだらんとし、力無く顔をこちらに向けた。
その姿が異様だった。目は開いている。だがこちらを見ているようには思えなかった。普通なら視線が合いそうなものなのに全く目が合わない。
見えていないのか?
それを試すために、ゆっくりとトウカの後ろに移動する。
「おい!大丈夫かいな!?」
コボ朗が、サツキが能転玉を取った事をもさておき心配してくれた。どうやら目の前の女の子の異様さに、そんなこと言っている暇がないと悟っているようだ。
人差し指を口元に立て、小声でコボ朗に話しかけた。
「大丈夫だから静かにしてくれ」
そう言いながら後ろを取る。いとも簡単なため拍子抜けした。
一体何なんだろうか?
首を傾げた瞬間であった。
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「ぐはぁっ!」
見えなかった。気がつけば吹き飛んでいた。腹を押さえながらトウカを見ると、左足が上がっている。あれで蹴られたのだ。それも恐ろしい力で!魔力がなければ体が二つに割れていたかもしれない。
腹を抱えて、トウカを見据える。
「これは、ヤバイな、」
ふらふらになりながら立ち上がる。これはもうあれしかない。
「よし!逃げるぞ!」
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しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
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