オアシス

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降りしきる雪が街を閉ざしているような夜。
普段ならばまだ人や車が行き交う賑やかな時間なのに、通りを歩く人の姿はない。

大きな道路から一本小路に入った所で、2年程前から脱サラをして始めた雑貨店を営んでいる。

野添 翔、34歳。
会社勤めをしていた時に培った取引先を通じて仕入れた商品は、子どもの頃から可愛い雑貨が好きな自分の好みでセレクトしたもので、じわじわと地元の女性を中心にクチコミで店の名前が広まっているらしい。
ただ、扱っている物の可愛らしさと店主の自分の容姿のギャップがある…いわゆるガチムチな男性店主と可愛い雑貨はイコールではない。

「翔さん やっぱり店に立ってないんっすね」

半笑いで休憩室兼事務所に入ってきたのは、旧知の間柄な取引先の担当者、榊原。

「《翔さん店にいたら、雑貨可愛くてもお客さん逃げちゃう》って誰かさんに言われたからな。
あっ、コーヒーで良いか?」

「ありがとうございます、いただきます。
でも女の子雇って正解だったでしょ?
昼休憩以外は奈美ちゃんでしたっけ、可愛い子に店番して貰ってリピーター増えたんでしょ?
奈美ちゃんのおかげだよね」

調子よく榊原は笑いながら言う。
確かに奈美ちゃんが来た3ヶ月前からリピーターが増えた。

小一時間ほどして榊原が帰ったあと、昼休憩の為に店番を代わった。
奈美ちゃん―田村奈美のランチは決まって近くの洋食店に出掛けていく。
この時間帯お客さんが来ないので店番をしながら、ちょっとしたレイアウト変更をするのが日課になっていた。

早速、榊原と話ながら思い付いたレイアウトに並べ直そうとした時だった。

この時間帯には珍しくお客さんが入ってきた。

「お昼休み中でしたか?」

鈴のなるような小さな声で遠慮がちに問われた。

「いえ、営業中ですよ。ごゆっくりご覧下さい。」

移動しようと持っていた商品をその場に置いてレジがあるカウンターへ向かった。

カウンターでガラス雑貨を磨きながら ふと 顔をあげ店内を見渡すと、楽しそうに商品を見つめる表情に釘付けになった。

肩までの長さの艶々とした黒髪、淡いイエローのロングワンピース。
美人というより可愛らしさが際立つ容姿から年齢は20代だろうか?
奈美ちゃんが来るまではずっと店に出ていたから、久しぶりに直に見るお客さんの買い物を楽しむ姿だ。

「戻りました。あっ、いらっしゃいませ」

奈美ちゃんが帰ってきたので入れ違いに奥へ戻った。

あの日から度々、彼女は店にやってきた。
昼に来たのは一度だけで、あとは奈美ちゃんが帰宅した後の閉店までの1時間の店番中。

その日は、雪で運送屋さんが遅れ、奈美ちゃんが帰った後に新規商品の陳列とレイアウト変更をしていた。

「いらっしゃいませ」

ドアが開くと同時に雪が風と共に入ってきて振り向くといつか来た事のある淡いイエローのワンピースが印象的なあの女性だった。
戸口のマットで靴に着いた雪を払い、

















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