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少年と少女 それぞれの理由
少年の思い出2
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グレナに来てから一月ほどが経った頃、グエンの弟、つまりウィリスとルッカにとっての叔父が、家族を連れてやってきた。
叔父の名は、ウォーレン=バムエットと言い、ローシャルム子爵家の婿養子となった人物だと、前以て聞かされていた。
その叔父には、ウィリスより三才年上の息子であるマルセル、そしてウィリスと同じ年齢の娘であるメヌエラ、更に二才年下の息子であるエヴァンがいた。
ウィリスはやっと同年代の子供に会える事、しかも、それが自分のいとこ達である事から、その来訪をとても楽しみにしていた。
だが、そんなウィリスの気持ちは、三人のいとこ達により木っ端微塵にされたのだ。
生まれた時から貴族の子供として育てられた彼らは、礼儀作法や言葉遣いの端々まで貴族としての所作が身に付いていた。
対してウィリスやルッカは、ほんの一月ほど前まで役職位の上下はあれど身分制度が無いトランセアで生活していた身であったため、ルタルニアの平民に近い感覚で生きていた。
たった一月の貴族生活では平民感覚が抜けるわけも無く、諸々の所作も所詮付《つ》け焼き刃だったウィリスは、いとこ達の立ち居振る舞いにただ圧倒されるばかりであった。
そんないとこ達三人と一緒にいても、何を話したら良いのか、何をして遊んだら良いのかなど全くわからず、ルッカと共にどうしたら良いものかと思案していると、マルセルが先に口を開いた。
「僕達のことはどうぞお構いなく。あなた方にお会いするのも、今日という日が過ぎ去ればしばらくは無いでしょうから」
嘲る様な笑みと共に吐き出された言葉に、ルッカが首を傾げた。
「どうして?私達いとことでしょ?だったらこれからも時々会ったりするんじゃない?」
「まさか!どうして貴い血筋の僕達が、穢れた血を持つ君達と関わらなければならないんだ?」
「穢れた血?」
ウィリスの問いに、メヌエラが答える。
「そうよ。私達は子爵家とは言え、王家の血を引く一族よ。本来なら、穢れた血である平民の母親から生まれたあなた達が、容易く口を聞いて良い相手では無いのよ」
目を細め、心底嫌そうな顔を向けてくるメヌエラに、マルセルも同じような顔をウィリスとルッカへと向け、更に大きなため息を漏らした。
「全く、グエン伯父様は何を考えて平民の女なんかを娶ったんだ」
「穢れた血を持つ者と血族だなんて、恥ずかしくて友人には言えないわ」
「親戚筋となる僕らの事も考えて行動して欲しかったよ」
「こちらになんて戻られないで、そのままトランセアにいらっしゃれば宜しかったのに」
マルセルとメヌエラの嫌味ったらしい会話に続いて、一番年下のエヴァンがとどめの一言を言い放った。
「お前達みたいな穢れた血となんて、僕らは関わりたくないんだよ!あっち行け!」
犬を追い払うかのように、手の動作まで付けて
「シッシッ」
と言ってくるエヴァンの姿と、冷たい目を向けてくるマルセルとメヌエラに、ウィリスはなんとも悲しくなり、目に涙が溜まってくるのがわかった。
そんなウィリスの手を、ルッカがギュッと握りしめた。
「あなた達の言う通り、私達の母親は確かに平民よ。でもね、トランセアには身分制度が無いの!だからトランセアでは私達の母親も、巫女様も、みーんな平民なの!
私達の事を穢れた血だなんて言うって事は、巫女様の事も穢れた血だって言っているのと同じなんだからね!それがどれくらい巫女様に失礼な事だか分かってるの!?」
怒りを含んだルッカの言に、マルセルが強い口調で反論してきた。
「お前達なんかと巫女様を一緒にするなんて、なんて畏れ多い事を!失礼なんてものでは済まされないぞ!」
「別に失礼でも何でもないもの!トランセアでは巫女様も私達も、みんな同じ身分だもの!」
「ここは、ルタルニアだ!トランセアじゃないぞ!」
「それじゃあ巫女様も、この国に来たら穢れた血だと言われるわけ!?」
「だから、お前達と巫女様を一緒にするな!」
「一緒にするに決まってるでしょ!私達はトランセア生まれなんだから!」
ルッカとマルセルの言い争いが激しさを増し、その様子にウィリスだけではなく、メヌエラやエヴァンも不安そうな表情を浮かべていると、突然部屋の扉が開いた。
「二人とも、そこまでだ!」
姿を現したグエンが、低く怒気を孕んだ声を部屋に響かせると、子供達の体がビクンと小さく跳ね上がった。
そして、元聖騎士であるグエンの威圧的で鋭い眼差しが子供達へと向けられると、その視線に耐えきれず、先ずはエヴァンが泣き始め、釣られたかのようにメヌエラが泣き出し、終いにはウィリスも泣き出してしまった。
ただし、ウィリスに至っては、父の視線が怖かった訳ではなく、逆に、父の姿を見て安堵した事による涙だった。
その後、ルッカとウィリスは別の部屋へと移されたのだが、その部屋にいた母のルーナの姿を見た途端、ルッカも泣き出してしまった。
ルーナは泣きじゃくる子供達を抱きしめると、肩を震わせ言った。
「ごめんね、二人とも…。私のせいで、ごめんね…」
その時、自分達を抱く母から零れ落ちたものが、謝罪の言葉だけでは無かったことにウィリスは気が付くと、心の中である決心をした。
それは、姉や自分だけではなく、母まで悲しませたあのいとこ達を許さないのはもちろん、彼らを見返せるくらい立派な貴族の子供になってやる、というものだった。
それからのウィリスは、今まで嫌々ながら受けていた諸々の講義を周りが驚くほど真面目に受ける様になり、短期間で多くの事を吸収していった。
叔父の名は、ウォーレン=バムエットと言い、ローシャルム子爵家の婿養子となった人物だと、前以て聞かされていた。
その叔父には、ウィリスより三才年上の息子であるマルセル、そしてウィリスと同じ年齢の娘であるメヌエラ、更に二才年下の息子であるエヴァンがいた。
ウィリスはやっと同年代の子供に会える事、しかも、それが自分のいとこ達である事から、その来訪をとても楽しみにしていた。
だが、そんなウィリスの気持ちは、三人のいとこ達により木っ端微塵にされたのだ。
生まれた時から貴族の子供として育てられた彼らは、礼儀作法や言葉遣いの端々まで貴族としての所作が身に付いていた。
対してウィリスやルッカは、ほんの一月ほど前まで役職位の上下はあれど身分制度が無いトランセアで生活していた身であったため、ルタルニアの平民に近い感覚で生きていた。
たった一月の貴族生活では平民感覚が抜けるわけも無く、諸々の所作も所詮付《つ》け焼き刃だったウィリスは、いとこ達の立ち居振る舞いにただ圧倒されるばかりであった。
そんないとこ達三人と一緒にいても、何を話したら良いのか、何をして遊んだら良いのかなど全くわからず、ルッカと共にどうしたら良いものかと思案していると、マルセルが先に口を開いた。
「僕達のことはどうぞお構いなく。あなた方にお会いするのも、今日という日が過ぎ去ればしばらくは無いでしょうから」
嘲る様な笑みと共に吐き出された言葉に、ルッカが首を傾げた。
「どうして?私達いとことでしょ?だったらこれからも時々会ったりするんじゃない?」
「まさか!どうして貴い血筋の僕達が、穢れた血を持つ君達と関わらなければならないんだ?」
「穢れた血?」
ウィリスの問いに、メヌエラが答える。
「そうよ。私達は子爵家とは言え、王家の血を引く一族よ。本来なら、穢れた血である平民の母親から生まれたあなた達が、容易く口を聞いて良い相手では無いのよ」
目を細め、心底嫌そうな顔を向けてくるメヌエラに、マルセルも同じような顔をウィリスとルッカへと向け、更に大きなため息を漏らした。
「全く、グエン伯父様は何を考えて平民の女なんかを娶ったんだ」
「穢れた血を持つ者と血族だなんて、恥ずかしくて友人には言えないわ」
「親戚筋となる僕らの事も考えて行動して欲しかったよ」
「こちらになんて戻られないで、そのままトランセアにいらっしゃれば宜しかったのに」
マルセルとメヌエラの嫌味ったらしい会話に続いて、一番年下のエヴァンがとどめの一言を言い放った。
「お前達みたいな穢れた血となんて、僕らは関わりたくないんだよ!あっち行け!」
犬を追い払うかのように、手の動作まで付けて
「シッシッ」
と言ってくるエヴァンの姿と、冷たい目を向けてくるマルセルとメヌエラに、ウィリスはなんとも悲しくなり、目に涙が溜まってくるのがわかった。
そんなウィリスの手を、ルッカがギュッと握りしめた。
「あなた達の言う通り、私達の母親は確かに平民よ。でもね、トランセアには身分制度が無いの!だからトランセアでは私達の母親も、巫女様も、みーんな平民なの!
私達の事を穢れた血だなんて言うって事は、巫女様の事も穢れた血だって言っているのと同じなんだからね!それがどれくらい巫女様に失礼な事だか分かってるの!?」
怒りを含んだルッカの言に、マルセルが強い口調で反論してきた。
「お前達なんかと巫女様を一緒にするなんて、なんて畏れ多い事を!失礼なんてものでは済まされないぞ!」
「別に失礼でも何でもないもの!トランセアでは巫女様も私達も、みんな同じ身分だもの!」
「ここは、ルタルニアだ!トランセアじゃないぞ!」
「それじゃあ巫女様も、この国に来たら穢れた血だと言われるわけ!?」
「だから、お前達と巫女様を一緒にするな!」
「一緒にするに決まってるでしょ!私達はトランセア生まれなんだから!」
ルッカとマルセルの言い争いが激しさを増し、その様子にウィリスだけではなく、メヌエラやエヴァンも不安そうな表情を浮かべていると、突然部屋の扉が開いた。
「二人とも、そこまでだ!」
姿を現したグエンが、低く怒気を孕んだ声を部屋に響かせると、子供達の体がビクンと小さく跳ね上がった。
そして、元聖騎士であるグエンの威圧的で鋭い眼差しが子供達へと向けられると、その視線に耐えきれず、先ずはエヴァンが泣き始め、釣られたかのようにメヌエラが泣き出し、終いにはウィリスも泣き出してしまった。
ただし、ウィリスに至っては、父の視線が怖かった訳ではなく、逆に、父の姿を見て安堵した事による涙だった。
その後、ルッカとウィリスは別の部屋へと移されたのだが、その部屋にいた母のルーナの姿を見た途端、ルッカも泣き出してしまった。
ルーナは泣きじゃくる子供達を抱きしめると、肩を震わせ言った。
「ごめんね、二人とも…。私のせいで、ごめんね…」
その時、自分達を抱く母から零れ落ちたものが、謝罪の言葉だけでは無かったことにウィリスは気が付くと、心の中である決心をした。
それは、姉や自分だけではなく、母まで悲しませたあのいとこ達を許さないのはもちろん、彼らを見返せるくらい立派な貴族の子供になってやる、というものだった。
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