上 下
68 / 89

それぞれの側近②

しおりを挟む
アリシアちゃんの側近は、ルーカス君と同じく公爵家と侯爵家から一人ずつ。

ルーカス君の方は公爵家子息が‘獣人’。アリシアちゃんの方は侯爵家令嬢が‘獣人’。




‘獣人’である側近の二人は、無条件で守りたくなってしまう《白毛》のソフィアに惹かれる気持ちがあるものの、他国の令嬢で、さらに悪い噂もあるソフィアを自分達の大事な人のそばに置いてもいいものかと思案していた。
自分達の、‘獣人’の直感を信じれば、ソフィアはルーカスとアリシアにとっても、自分達にとっても、かけがえのない存在になるだろうとわかっていた。

ただ、‘人’の側近である二人と違って、ソフィアへの敵対心(少しの)はないものの、ぽっと出のソフィアが、ルーカスとアリシアの二人に大事にされているのは面白くない。

自分達はそれぞれの側近に選ばれるため、その地位に就くために並々ならない努力をしてきた。

それなのに、ベスティニアのお姫様だからといって、簡単に二人のそばにいることを認められてしまったソフィアを妬む気持ちがあるのだった。

もちろん自分達が敬愛するルーカスとアリシアがそばにいることを認めたのだし、あれだけ大事に囲っているのだから、ソフィアの人間性はそれなりに自分達も尊敬できるものだろうし、能力も高いのだろう。

ルーカスもアリシアも、自分達に''ソフィアを大事にせよ''とは言わない。

それにソフィアに対する嫌な視線に対しても、咎めることもないだろう。

あくまで、自分達でソフィアを知り、ソフィアに触れ、判断しろということだ。

それだけ、ルーカスとアリシアの自分達の信頼が厚いということなのだ。何も言わずとも正しい判断ができるだろうという。




‘人’である側近二人は、ソフィアが《白毛》だからといって、なんの思いもない。
確かに見た目は整っているし、小さくてふわふわで、庇護欲をそそられる者がいるだろうとは、一目見て感じた。

だが、自分達が思うのは、''だから何?''なのだ。

ぽっと出のソフィアが、自分達の敬愛するルーカスとアリシアのそばにいることが許せない気持ちの方が大きい。

まして、大事に扱われている。
''なんで出会ったばかりの者があんなに大事にされているんだ"と思うのだった。

自分達は長年、ルーカスとアリシアの側近を務めているのだから、今さら切り捨てられることはないと思っている。
多少、ソフィアに嫌な視線を送ろうが、自分達には長年二人と築いてきた絆があるのだからと。

ルーカスとアリシアがソフィアと共に行動をするのなら、これからは自分達とも行動を共にすることになる。
もし、ソフィアがルーカスとアリシアの邪魔になる存在なら、自分達が排除すればいいと思うのだった。



しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...