4 / 32
第一章
4
しおりを挟む
センパイは暫く黙りこくった後俺に問う。
「じゃ、結局霊を祓うことはできないのか?」
顰められた顔に、にっと笑ってみせるとセンパイは虚をつかれたような表情をする。
「祓えますよ。何回言わせるんですか。幽霊を祓うよりも人一人消す方が簡単。人を消すことが不可能でないように、幽霊を祓うこともまた、不可能ではありません」
「お前の言葉はやけに回りくどい」
苦々しそうに言われた言葉に苦笑する。
「すみません。日頃意識的に煙に巻くように話しているので。癖になっちゃってるみたいです」
「なんでそんなことを」
「答える義理がありますか?」
言葉を飲み込む素振りを見せたセンパイに、軽く片眉を上げてみせる。
「意地悪言いました。忘れてください」
「あ、ああ」
空気をとりなすようにパンパンと二回手を打つ。
「第三回、幽霊お悩み相談室~!」
「いぇーい」
俺に合わせて手をパチパチと叩く幽霊とマーサ。センパイは突然のテンションの落差に付いていけずにあわあわとしている。
「第一回と第二回はいつやったんだ?」
「やってませんよ、そんなもん」
「意味が分からない……」
頭を抱えているセンパイは放って、俺たちは円の形に座る。無論、センパイには俺しか見えないのでそんなことは伝わらない。
「センパイ、参加するんですかしないんですか」
「……するぅ……」
「情けない声出さないでくださいよ。あ、そこ先客います。そこも座ってるから俺の横に座ってください」
「先客多いな……」
「二人だけですよ。ね?」
二人に相槌を求めると調子のいい二人はそうだそうだと叫ぶ。これもセンパイには伝わらない。残念なことに。
「じゃ、まずレディ。あなたはどうして現世に留まってるんです?」
「いきなり切りこんでくなぁ……」
「他にどうしろと。今日の天気はいいですね?」
「雨なんだが」
「知ってますけど」
センパイを適当にいなし、幽霊に話を訊く。まとめると、こうだった。
数十年前、まだ学生だった彼女はこの学校の先生と内緒で付き合っていた。婚約の約束もしていたようだ。しかし先生との関係が親にばれ、二人は別れなければならなくなった。悲しみに暮れた彼女に、先生は婚約指輪をプレゼントした。そして彼はそのまま転勤。赴任先を知ることもできず、二人はそのまま会うことがなかったという。レディは気鬱だろうか、みるみるうちに衰弱し亡くなったという。
「私、その折角いただいた指輪を失くしてしまったの。大切な、大切なものだったのに失くしてしまって。私、よくここの教室を訪れていたからきっとここにあると思うの。でも、何十年も探しているのに見つからないの」
シクシクと泣きだしたレディ。話を聞いた俺はうーんと考え込む。
「レディ。数十年前って、具体的に何年前ですか?」
「そうね。九十年くらいかしら」
「なるほど。じゃ、確実に死んでますね」
「そうなの。でも、会えないの」
再びシクシクと泣きだしたレディに声を掛ける。
「レディ。もしかしたら彼に会えるかもしれませんよ」
「本当に?」
「ええ。彼がただの迷子ならね」
茶化してみせるとレディはクスリと楽しそうに笑う。
「いいわ。彼が迷子なら迎えにいってあげなくちゃ」
「それはそれは。頼もしいことですね」
「でしょう?」
胸を反ってみせるレディの手に、俺はそっと自分の手を重ねる。人の触れる感覚に、レディは目を見開いた。
「あなた、これ……」
「シー。俺たちだけの秘密ですよ。彼にバレたら面倒だ」
手を繋いだところからレディの思い出が流れ込んでくる。流れ星がいくつも飛び交うかのように、俺とレディの手をいくつもの光が渡り、踊った。胸部を圧迫されるかのような息苦しさを感じ、俺は浅く息を吐く。
「──来い」
ぶわり、風が俺たちの周りを薙ぎ払う。風はとぐろを巻き、やがてレディを抱きしめるかのように優しく収束した。
「先生っ!」
「待たせたね、薫」
「本当です」
レディはそっと男の背に手を伸ばし抱きしめ返す。男は嬉しそうに笑み、ポケットからごそごそと折りたたまれたハンカチを取り出した。
「これを君に渡そうと思って」
「なんですか?」
「開けてみて」
レディは不思議そうにハンカチを開いていく。中には指輪が入っていた。
「指輪……?」
「あぁ。結婚指輪。結局渡せなかったから。でもちゃんと準備していたんだ」
「まぁ……!」
喜びに口元を抑えるレディに、男は跪く。
「薫。僕と結婚してくれませんか」
「ええ、ええ……! よろこんで!」
するり、左手の薬指に指輪がさしこまれる。レディの目には淡く涙が浮かんでいた。
二人は指を絡め見つめあう。足元からは光が広がっていた。成仏するのだ。
「ありがとう、少年。お陰で薫に会えた」
「ありがとう、感謝しているわ」
「……もう迷子にならないでくださいね」
壁にもたれかかりへらりと笑う俺に、男は苦笑する。
「約束する」
「……俺に約束してどうするんですか。レディにもう離さないとでも約束してください。俺はそれで充分です」
「……あぁ」
しっしと手を払う俺に、二人は微笑んだ。
「じゃ、お幸せに」
「あなたもね」
返された言葉に眉を寄せる。約束できる自信はなかった。
「……頑張ります」
俺の曖昧な言葉に、二人は微笑む。それきり姿は見えなくなった。
「じゃ、結局霊を祓うことはできないのか?」
顰められた顔に、にっと笑ってみせるとセンパイは虚をつかれたような表情をする。
「祓えますよ。何回言わせるんですか。幽霊を祓うよりも人一人消す方が簡単。人を消すことが不可能でないように、幽霊を祓うこともまた、不可能ではありません」
「お前の言葉はやけに回りくどい」
苦々しそうに言われた言葉に苦笑する。
「すみません。日頃意識的に煙に巻くように話しているので。癖になっちゃってるみたいです」
「なんでそんなことを」
「答える義理がありますか?」
言葉を飲み込む素振りを見せたセンパイに、軽く片眉を上げてみせる。
「意地悪言いました。忘れてください」
「あ、ああ」
空気をとりなすようにパンパンと二回手を打つ。
「第三回、幽霊お悩み相談室~!」
「いぇーい」
俺に合わせて手をパチパチと叩く幽霊とマーサ。センパイは突然のテンションの落差に付いていけずにあわあわとしている。
「第一回と第二回はいつやったんだ?」
「やってませんよ、そんなもん」
「意味が分からない……」
頭を抱えているセンパイは放って、俺たちは円の形に座る。無論、センパイには俺しか見えないのでそんなことは伝わらない。
「センパイ、参加するんですかしないんですか」
「……するぅ……」
「情けない声出さないでくださいよ。あ、そこ先客います。そこも座ってるから俺の横に座ってください」
「先客多いな……」
「二人だけですよ。ね?」
二人に相槌を求めると調子のいい二人はそうだそうだと叫ぶ。これもセンパイには伝わらない。残念なことに。
「じゃ、まずレディ。あなたはどうして現世に留まってるんです?」
「いきなり切りこんでくなぁ……」
「他にどうしろと。今日の天気はいいですね?」
「雨なんだが」
「知ってますけど」
センパイを適当にいなし、幽霊に話を訊く。まとめると、こうだった。
数十年前、まだ学生だった彼女はこの学校の先生と内緒で付き合っていた。婚約の約束もしていたようだ。しかし先生との関係が親にばれ、二人は別れなければならなくなった。悲しみに暮れた彼女に、先生は婚約指輪をプレゼントした。そして彼はそのまま転勤。赴任先を知ることもできず、二人はそのまま会うことがなかったという。レディは気鬱だろうか、みるみるうちに衰弱し亡くなったという。
「私、その折角いただいた指輪を失くしてしまったの。大切な、大切なものだったのに失くしてしまって。私、よくここの教室を訪れていたからきっとここにあると思うの。でも、何十年も探しているのに見つからないの」
シクシクと泣きだしたレディ。話を聞いた俺はうーんと考え込む。
「レディ。数十年前って、具体的に何年前ですか?」
「そうね。九十年くらいかしら」
「なるほど。じゃ、確実に死んでますね」
「そうなの。でも、会えないの」
再びシクシクと泣きだしたレディに声を掛ける。
「レディ。もしかしたら彼に会えるかもしれませんよ」
「本当に?」
「ええ。彼がただの迷子ならね」
茶化してみせるとレディはクスリと楽しそうに笑う。
「いいわ。彼が迷子なら迎えにいってあげなくちゃ」
「それはそれは。頼もしいことですね」
「でしょう?」
胸を反ってみせるレディの手に、俺はそっと自分の手を重ねる。人の触れる感覚に、レディは目を見開いた。
「あなた、これ……」
「シー。俺たちだけの秘密ですよ。彼にバレたら面倒だ」
手を繋いだところからレディの思い出が流れ込んでくる。流れ星がいくつも飛び交うかのように、俺とレディの手をいくつもの光が渡り、踊った。胸部を圧迫されるかのような息苦しさを感じ、俺は浅く息を吐く。
「──来い」
ぶわり、風が俺たちの周りを薙ぎ払う。風はとぐろを巻き、やがてレディを抱きしめるかのように優しく収束した。
「先生っ!」
「待たせたね、薫」
「本当です」
レディはそっと男の背に手を伸ばし抱きしめ返す。男は嬉しそうに笑み、ポケットからごそごそと折りたたまれたハンカチを取り出した。
「これを君に渡そうと思って」
「なんですか?」
「開けてみて」
レディは不思議そうにハンカチを開いていく。中には指輪が入っていた。
「指輪……?」
「あぁ。結婚指輪。結局渡せなかったから。でもちゃんと準備していたんだ」
「まぁ……!」
喜びに口元を抑えるレディに、男は跪く。
「薫。僕と結婚してくれませんか」
「ええ、ええ……! よろこんで!」
するり、左手の薬指に指輪がさしこまれる。レディの目には淡く涙が浮かんでいた。
二人は指を絡め見つめあう。足元からは光が広がっていた。成仏するのだ。
「ありがとう、少年。お陰で薫に会えた」
「ありがとう、感謝しているわ」
「……もう迷子にならないでくださいね」
壁にもたれかかりへらりと笑う俺に、男は苦笑する。
「約束する」
「……俺に約束してどうするんですか。レディにもう離さないとでも約束してください。俺はそれで充分です」
「……あぁ」
しっしと手を払う俺に、二人は微笑んだ。
「じゃ、お幸せに」
「あなたもね」
返された言葉に眉を寄せる。約束できる自信はなかった。
「……頑張ります」
俺の曖昧な言葉に、二人は微笑む。それきり姿は見えなくなった。
10
あなたにおすすめの小説
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
陽七 葵
BL
主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ルームメイトが釣り系男子だった件について
perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。
それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。
ずっと隠してきた。
彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。
でも、ある日——
彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。
真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。
「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる