借金返済のため公爵様に身売りされました

ホシカ

文字の大きさ
17 / 26

亀裂

しおりを挟む
「何でないのよっ?!」

私は自分の部屋に入ると机の一番下の引き出しを開けて写真と手紙を探したが、見当たらなかった。

私は机だけじゃなく、ベッドやクローゼットの中を必死に探した。

クローゼットには見覚えない高級感あるドレスが何着もかけあり、ベッドは天蓋カーテン付きのフカフカのベッドだった。

まるで自分の部屋ではないように感じた。



全身血の気が引いたみたいになる。



写真と手紙は捨てられたかもしれない。

私はフラフラと部屋を出ると、母が使っていた部屋に行く。

もしかしたら、母の部屋に写真があるかもしれない。



私は写真にしか母の記憶がない。

写真さえあれば、今の辛くてキツイ現実も耐えられそうだった。

私は母の部屋を開けた。



!!?

ちょっ、なっ、何もないっ!!

部屋に入ると、母の部屋はもぬけの殻になっていた。

床にはクローゼットやベッド、ソファ、キャビネットなどの跡しか残っていなかった。





「ミア、随分早かったな。目当てのものは見つかったか?」

ベネットが聞いてくれたが、私は首を横に振ると荷馬車に乗り込んだ。

一言も発しない私を気遣ってか、ベネットはそれ以上、話かけしてこなかった。



私は荷馬車の中でグズグズ泣き続けた。

楽しい母との思い出が無くなっていく喪失感でいっぱいだった。

首から下げているロケットを開けた。

「お母さん」 

私は呟いて、ロケットを手の中にギュッと握りしめた。

母の写真はロケットの中にある一枚だけだ。

座ることも出来ず泣き崩れ、私はそのまま寝てしまった。











「ミア」

私は聞き覚えがある声に目を覚ました。

いつものベッドとは違い、違和感を感じたのでガバっと起きた。

目の前には上半身裸のヒューゴが横に居た。





!!?

フウォオオ!!!

ふっ、腹筋がバキバキに割れてるぅ!

腕も筋肉が程良くついててたくましい体に見惚れた。

普段、調理場の服しか見てないからわかんなかった。

ていうか、なぜ裸?!



「ヒュ、ヒューゴ!? なっ、なんでいるの???」

私は後ずさりすると、ヒューゴが手首を掴み抱き寄せた。

「イヤイヤイヤイヤ、ちょっと待てぃ!」

離れようとするが力強く抱きしめられていて離れられない。

ヒューゴのたくましい胸板にドキドキして、体中が熱くなる。



「ミア、荷馬車でずっと泣いてたろ?」

「心配かけてごめんね。もう大丈夫」

ヒューゴを見上げると悲しそうな顔をしていた。



「無理すんな」

更に強くギュッと抱き寄せられる。



「ヒューゴ、息が出来ない」

「ごめん」



若干、抱き寄せる力が弱まるが、ヒューゴの吐息が耳にかかり、ますます緊張する。

いつもと違うヒューゴに私はドキドキがとまらなくなる。

体中が熱くなり手で顔を覆う。





ん?!

私、シャツ一枚しか着てない………

!!?

下着を着てないっ!!





「ヒュ、ヒューゴ!」

「なに?」

「私達、その、昨晩、エッーと、アレしてないよね?!」

「アレ?」

「男女がベッドで一つになっていたらわかるでしょ!?」

「あぁ、アレね」

「何もなかったよね?」





何もないはずだ。

というか、頼むから「うん」って言えっ!!





「さぁ? どうかな?」

ニヤニヤ笑うヒューゴをぶっ飛ばしたくなる。 





「睨むなよ」

「離して。自分の部屋に戻る」

私はベッドから降りて、イスに置いてあるメイド服に着替えた。





「ヒューゴがこんなことするなんて思わなかった」

私はそう吐き捨てると部屋から出て行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...