18 / 26
希望
しおりを挟む
ヒューゴとは気まずいまま、年が明けた。
年末年始はほとんどの使用人が居なくなる。
実家に帰省する人がほとんどだ。
ラインハルトは毎年、別荘に行って家族と仲良く過ごすらしい。
私は屋敷の居残り組の一人であるテイジーと仲良くなった。
テイジーは孤児院育ちでブロック公爵に就職するまで、親戚中をたらい回しにされたらしい。
優しい彼女は私がイジメに合っているのに心を傷めていたそうだ。
見てみぬ振りしかできず、苦しい思いをしていた。
「デイジー、大丈夫だって、あまり気にしないで」
「でも、手助けしなくてごめんなさい」
「手助けしたら、あなたまでイジメられちゃうわ」
ベネットさんのアドバイスで先日マリーに相談した。
彼女は「ホントに辛い思いをさせちゃってごめんなさいね。ラインハルト様に伝えておくわ」と言っていたので、少しばかり安心した。
「でも、ミアは強いわね。私ならとっくに逃げてる」
「私も逃げたいけど、行くアテはないし、借金もあるし」
だんだん、声のトーンが落ちていく。
自分で言ってて悲しくなってくる。
「ミア、私で良ければ愚痴言ってね」
テイジーの笑顔が眩しかった。
彼女に話だけで、だいぶ気が晴れた。
テイジーと食堂を出るとそれぞれ自分の仕事の持ち場に戻る。
私の仕事はほとんど危険、キツイ、汚いものばかりだ。
まずは、トイレ掃除をする。
臭いがキツイのでハンカチを広げ口と鼻を覆い、後頭部の後ろで括る。
ブラシでゴシゴシ擦ると飛び散るので、まずは洗剤を振りかけしばらく置いてから流し、残っている汚れだけ拭き取る。
屋敷、寮、厨房全てすると、今度はブロック公爵邸の周りにある土手の掃除に行く。
大きいシャベル片手に泥を掻き出す。
水を含んだ泥は重たく、屈んで力を入れて慎重にバケツに運ぶ。
定期的に掻き出さないと排水口がつまり汚水が溜まり、厨房に逆流してしまう。
一通り掻き出すと、私は重いバケツを持って次の仕事場に行った。
「ミア!」
後ろからラインハルトの声が聞こえた。
聞こえない振りをして、私はそのまま歩いた。
バケツを持つ手が痛い。
さっさと、次の仕事先である畑の肥料作りに向かわないと。
「俺が持つ」
ラインハルトは泥の入ったバケツを軽々と持ち上げた。
「ラインハルト様、私の仕事です。服も汚れますから」
こんなところ、他のメイドに見つかるとややこしくなる。
また仕事が増える。
「それより、何でこんな重労働をさせられてるんだ? ミアの仕事じゃなだろ?」
お前のせいだろ!?
「体を売る仕事じゃないなら構わないです」
私は皮肉たっぷりに嫌味を言う。
「それにシャティさんから、ラインハルト様に近づかないように言われてますので、話かけないで下さい」
私はバケツを諦め、速足で野菜がある畑の方へ向った。
「シャティが?! 確か、給料を取られたって」
「ええ、未だに貰ってません。マリー様にも伝えてますが、改善されてません」
ラインハルトを睨むと、彼はバケツを地面に置き私の手首を掴んだ。
「離して下さい!」
「俺の部屋に来てくれ。未払い分の給料払う」
私は「給料を払う」の言葉にピタっと大人しくなった。
「また何かしなきゃならないんですか?」
「信じないならいい。来ないなら、このまま給料無しだ」
私は迷ったが、ラインハルトについて行くことにした。
年末年始はほとんどの使用人が居なくなる。
実家に帰省する人がほとんどだ。
ラインハルトは毎年、別荘に行って家族と仲良く過ごすらしい。
私は屋敷の居残り組の一人であるテイジーと仲良くなった。
テイジーは孤児院育ちでブロック公爵に就職するまで、親戚中をたらい回しにされたらしい。
優しい彼女は私がイジメに合っているのに心を傷めていたそうだ。
見てみぬ振りしかできず、苦しい思いをしていた。
「デイジー、大丈夫だって、あまり気にしないで」
「でも、手助けしなくてごめんなさい」
「手助けしたら、あなたまでイジメられちゃうわ」
ベネットさんのアドバイスで先日マリーに相談した。
彼女は「ホントに辛い思いをさせちゃってごめんなさいね。ラインハルト様に伝えておくわ」と言っていたので、少しばかり安心した。
「でも、ミアは強いわね。私ならとっくに逃げてる」
「私も逃げたいけど、行くアテはないし、借金もあるし」
だんだん、声のトーンが落ちていく。
自分で言ってて悲しくなってくる。
「ミア、私で良ければ愚痴言ってね」
テイジーの笑顔が眩しかった。
彼女に話だけで、だいぶ気が晴れた。
テイジーと食堂を出るとそれぞれ自分の仕事の持ち場に戻る。
私の仕事はほとんど危険、キツイ、汚いものばかりだ。
まずは、トイレ掃除をする。
臭いがキツイのでハンカチを広げ口と鼻を覆い、後頭部の後ろで括る。
ブラシでゴシゴシ擦ると飛び散るので、まずは洗剤を振りかけしばらく置いてから流し、残っている汚れだけ拭き取る。
屋敷、寮、厨房全てすると、今度はブロック公爵邸の周りにある土手の掃除に行く。
大きいシャベル片手に泥を掻き出す。
水を含んだ泥は重たく、屈んで力を入れて慎重にバケツに運ぶ。
定期的に掻き出さないと排水口がつまり汚水が溜まり、厨房に逆流してしまう。
一通り掻き出すと、私は重いバケツを持って次の仕事場に行った。
「ミア!」
後ろからラインハルトの声が聞こえた。
聞こえない振りをして、私はそのまま歩いた。
バケツを持つ手が痛い。
さっさと、次の仕事先である畑の肥料作りに向かわないと。
「俺が持つ」
ラインハルトは泥の入ったバケツを軽々と持ち上げた。
「ラインハルト様、私の仕事です。服も汚れますから」
こんなところ、他のメイドに見つかるとややこしくなる。
また仕事が増える。
「それより、何でこんな重労働をさせられてるんだ? ミアの仕事じゃなだろ?」
お前のせいだろ!?
「体を売る仕事じゃないなら構わないです」
私は皮肉たっぷりに嫌味を言う。
「それにシャティさんから、ラインハルト様に近づかないように言われてますので、話かけないで下さい」
私はバケツを諦め、速足で野菜がある畑の方へ向った。
「シャティが?! 確か、給料を取られたって」
「ええ、未だに貰ってません。マリー様にも伝えてますが、改善されてません」
ラインハルトを睨むと、彼はバケツを地面に置き私の手首を掴んだ。
「離して下さい!」
「俺の部屋に来てくれ。未払い分の給料払う」
私は「給料を払う」の言葉にピタっと大人しくなった。
「また何かしなきゃならないんですか?」
「信じないならいい。来ないなら、このまま給料無しだ」
私は迷ったが、ラインハルトについて行くことにした。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる