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第三話 メガネは俺に惚れている
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入り口のベルがカランカランと鳴ったのでドアを見る。多分メガネだろうなと思ったが、予想通りだった。
「よぉ、メガネ。今日も来たな。偉いぞ」
俺はメガネに駆け寄りバンバン肩を叩いてから席に案内する。メガネはなんか知らねーけど恥ずかしいらしく、ほんのり頬を染めながら席に座った。
メガネが最初に店に来たのは十日前。
もう来ねーだろうなぁと言う予想は外れ、それからメガネは毎日のように俺の店に通っている。
客がメガネしか来ないので、嫌でも顔を覚えてしまった。今ではメガネがやって来るこの昼の時間を心待ちにしている。
なぜ心待ちにしているのか?
それは暇だからだ。メガネが来るとお喋りが出来るだろ? 良い暇つぶしになるのだ。
「メガネ。今日の注文もコーヒーとパンケーキ三枚だな?」
「あ、はい。それでお願いします」
メガネは初日以来、パンケーキを三枚注文するようになった。多分、昼飯なのだろう。三枚も食えばさすがに腹が膨れるからな。
俺は鼻歌を歌いながらキッチンに向かった。
いつも通りにインスタントコーヒーを淹れてから、朝作ったパンケーキ三枚を温める。それらをトレーにのせてメガネのテーブルに置いた。
「へい、お待ち」
「ありがとうございます。――いただきます」
メガネの隣に立ち、食ってるのを観察する。
普通こんな店員がいたら嫌だろう。隣に立つなよ、邪魔だって俺なら思う。
だけど、ここは俺の店だ。つまり、俺がルールなのだ。俺がなにしようがどこにいようが誰にも口出しさせない。メガネにも『どっか行ってください』とか言われないからこれでいいのだ。
メガネがパンケーキを食い終わった頃を見計らってから、俺は口を開いた。
「美味かったか?」
「……。そ、そうですね」
「今、明らかに間があったぞ。本当は美味くねーんだろ?」
「そ、そんなことないです」
「本当かぁ? 俺、試しにそのパンケーキちょっと味見したけど、パサパサで全然美味くなかったぞ」
「客に出す商品を味見しないで下さいよ……」
「こまけーことは気にすんな!」
俺はガハハと笑い、メガネの肩をバシバシ叩いた。
だって不思議だったんだもん。
なぜメガネは毎日やって来て俺のコーヒーとパンケーキを注文するんだ? と。
もしかしたら本当にうめーのかもしれないと錯覚した俺は、ちょっと味見したみたのだ。結果はさっき話した通りだったけど。
「メガネー。毎日通ってくれるのは有り難いけど、俺の出すものってそんなに美味いか? コーヒーもパンケーキも、微妙じゃね?」
「……」
メガネは黙り込んでしまった。
否定しないと言うことは、肯定したのも同然。
やっぱり俺の出すメシはそんなに美味くなかったんだ。
じゃあなんで毎日通ってくれるんだろう?
俺は食後にコーヒーを飲んでいるメガネをじっと見つめた。
「もしかして、メシじゃなくて俺が目当てだったりして」
冗談のつもりで言ったのだが、メガネはぶーっとコーヒーを吹きだした。
「きったねーなぁ、おめー」
俺はふきんを持って来てメガネのテーブルを拭いてやった。ふ……とメガネを見ると、その顔がみるみる真っ赤になっていった。
「す、すみません……」
「え?」
「すみません、本当すみません!」
真っ赤になって謝るメガネを見て、『マジだ、コイツ……!』と確信した。
俺の顔が徐々にニヤけてゆく。我慢できなくなり、思いっきり爆笑した。
「ギャハハ! マジかよメガネ! 俺に惚れてんのか!?」
「……」
メガネは真っ赤になりながらうつむいてしまった。太腿にのせた両手をモジモジと動かしている。
そのウブな反応を見て、俺は更に爆笑した。
「そうかそうか! まぁ、分かるよ。俺って超美形だからな! 同性すら魅了してしまう俺の美しさが罪なんだな!」
調子こいてんじゃねーよ。このクソエルフ。とか言われるかと思ったが、メガネは怒るどころか更にうつむいてしまった。
なんだコイツ。可愛いじゃねーか!
俺は上機嫌になった。メガネの頭をペシペシ叩きながら笑う。
「じゃあ明日も来いよ。来たらサービスしてやるよ。常連客は大事にしなきゃな」
「!」
メガネは上目遣いでチラリと俺の顔をうかがった。
「……サービスって何をしてくれるんですか?」
き、期待してやがる……! コイツマジで可愛いなぁ!
俺はバチンッとウインクしてから両手をハートマークにした。そのままクネクネと動き、コーヒーに向かってハートマークを突き出した。
「メガネ君に、ラブラブキュン!」
「!」
「あはは。次回からこうやってメガネのコーヒーに俺の
ラブを注いでやるよ!」
デカイ男が何やってる。キモいんだよ。と思ったが、メガネはそう思わなかったらしい。
目をキラキラさせながらアイドルを見るような目で俺を見ている。
「ほ、本当ですか……!? マスターのラブをこれから毎日……!? お、俺! これからは何があってもここに通い詰めます! 頑張ります!」
嬉しそうだな、おい。
冗談だって言い辛くなってきたな。
……まぁ、いいや。メガネがそれを望むなら、その通りにしてやろう。
しかしコイツ、面白いな。
コイツを揶揄ったら、退屈しのぎになりそうだ。
俺はこれからのことを思い、ニンマリと笑ったのだった。
「よぉ、メガネ。今日も来たな。偉いぞ」
俺はメガネに駆け寄りバンバン肩を叩いてから席に案内する。メガネはなんか知らねーけど恥ずかしいらしく、ほんのり頬を染めながら席に座った。
メガネが最初に店に来たのは十日前。
もう来ねーだろうなぁと言う予想は外れ、それからメガネは毎日のように俺の店に通っている。
客がメガネしか来ないので、嫌でも顔を覚えてしまった。今ではメガネがやって来るこの昼の時間を心待ちにしている。
なぜ心待ちにしているのか?
それは暇だからだ。メガネが来るとお喋りが出来るだろ? 良い暇つぶしになるのだ。
「メガネ。今日の注文もコーヒーとパンケーキ三枚だな?」
「あ、はい。それでお願いします」
メガネは初日以来、パンケーキを三枚注文するようになった。多分、昼飯なのだろう。三枚も食えばさすがに腹が膨れるからな。
俺は鼻歌を歌いながらキッチンに向かった。
いつも通りにインスタントコーヒーを淹れてから、朝作ったパンケーキ三枚を温める。それらをトレーにのせてメガネのテーブルに置いた。
「へい、お待ち」
「ありがとうございます。――いただきます」
メガネの隣に立ち、食ってるのを観察する。
普通こんな店員がいたら嫌だろう。隣に立つなよ、邪魔だって俺なら思う。
だけど、ここは俺の店だ。つまり、俺がルールなのだ。俺がなにしようがどこにいようが誰にも口出しさせない。メガネにも『どっか行ってください』とか言われないからこれでいいのだ。
メガネがパンケーキを食い終わった頃を見計らってから、俺は口を開いた。
「美味かったか?」
「……。そ、そうですね」
「今、明らかに間があったぞ。本当は美味くねーんだろ?」
「そ、そんなことないです」
「本当かぁ? 俺、試しにそのパンケーキちょっと味見したけど、パサパサで全然美味くなかったぞ」
「客に出す商品を味見しないで下さいよ……」
「こまけーことは気にすんな!」
俺はガハハと笑い、メガネの肩をバシバシ叩いた。
だって不思議だったんだもん。
なぜメガネは毎日やって来て俺のコーヒーとパンケーキを注文するんだ? と。
もしかしたら本当にうめーのかもしれないと錯覚した俺は、ちょっと味見したみたのだ。結果はさっき話した通りだったけど。
「メガネー。毎日通ってくれるのは有り難いけど、俺の出すものってそんなに美味いか? コーヒーもパンケーキも、微妙じゃね?」
「……」
メガネは黙り込んでしまった。
否定しないと言うことは、肯定したのも同然。
やっぱり俺の出すメシはそんなに美味くなかったんだ。
じゃあなんで毎日通ってくれるんだろう?
俺は食後にコーヒーを飲んでいるメガネをじっと見つめた。
「もしかして、メシじゃなくて俺が目当てだったりして」
冗談のつもりで言ったのだが、メガネはぶーっとコーヒーを吹きだした。
「きったねーなぁ、おめー」
俺はふきんを持って来てメガネのテーブルを拭いてやった。ふ……とメガネを見ると、その顔がみるみる真っ赤になっていった。
「す、すみません……」
「え?」
「すみません、本当すみません!」
真っ赤になって謝るメガネを見て、『マジだ、コイツ……!』と確信した。
俺の顔が徐々にニヤけてゆく。我慢できなくなり、思いっきり爆笑した。
「ギャハハ! マジかよメガネ! 俺に惚れてんのか!?」
「……」
メガネは真っ赤になりながらうつむいてしまった。太腿にのせた両手をモジモジと動かしている。
そのウブな反応を見て、俺は更に爆笑した。
「そうかそうか! まぁ、分かるよ。俺って超美形だからな! 同性すら魅了してしまう俺の美しさが罪なんだな!」
調子こいてんじゃねーよ。このクソエルフ。とか言われるかと思ったが、メガネは怒るどころか更にうつむいてしまった。
なんだコイツ。可愛いじゃねーか!
俺は上機嫌になった。メガネの頭をペシペシ叩きながら笑う。
「じゃあ明日も来いよ。来たらサービスしてやるよ。常連客は大事にしなきゃな」
「!」
メガネは上目遣いでチラリと俺の顔をうかがった。
「……サービスって何をしてくれるんですか?」
き、期待してやがる……! コイツマジで可愛いなぁ!
俺はバチンッとウインクしてから両手をハートマークにした。そのままクネクネと動き、コーヒーに向かってハートマークを突き出した。
「メガネ君に、ラブラブキュン!」
「!」
「あはは。次回からこうやってメガネのコーヒーに俺の
ラブを注いでやるよ!」
デカイ男が何やってる。キモいんだよ。と思ったが、メガネはそう思わなかったらしい。
目をキラキラさせながらアイドルを見るような目で俺を見ている。
「ほ、本当ですか……!? マスターのラブをこれから毎日……!? お、俺! これからは何があってもここに通い詰めます! 頑張ります!」
嬉しそうだな、おい。
冗談だって言い辛くなってきたな。
……まぁ、いいや。メガネがそれを望むなら、その通りにしてやろう。
しかしコイツ、面白いな。
コイツを揶揄ったら、退屈しのぎになりそうだ。
俺はこれからのことを思い、ニンマリと笑ったのだった。
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