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おまけ
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スポンジを泡立てて、隅から隅まで丁寧に身体を洗う。最後におかしいところはないか、鏡で全身をチェックしてから浴室を出た。
フワフワのバスタオルで身体を拭き、オズベルト様が買って下さったパジャマを着る。ついでに歯を磨き、濡れた髪を乾かした。
――これで準備よし!
私はオズベルト様がいるリビングに向かった。
オズベルト様は椅子に座り、本を読んでいた。
「オズベルト様。お先にお風呂いただきました」
オズベルト様は本から顔を上げて私を見た。
「そうか。よく温まってきたかい?」
「はい」
「じゃあ俺もそろそろ入ろうかな」
オズベルト様が椅子から立ち上がり風呂場に向かった。
オズベルト様のお風呂の時間はいつも大体十五分位だ。私はオズベルト様がお風呂から出てくるのをソワソワと待っていた。
少しすると、オズベルト様がパジャマを着てリビングに戻ってきた。
「あれ? ルーン。まだ起きていたのか?」
「はい。オズベルト様が戻ってくるのを待っておりました」
「そうか。ありがとう。じゃあ、そろそろ寝ようか」
「はい!」
オズベルト様が寝室に向かって歩き出したので、私も後に続いた。
寝室へ行き、ドアを開けて中に入ろうとしたオズベルト様が私の方を振り返った。
「どうしたルーン。何故着いてくる。お前の部屋はあっちだろう?」
「……」
「まだ眠くないのかい?」
「……いえ……」
「じゃあ寝よう。お休みルーン」
「……はい」
オズベルト様は寝室に入っていってしまった。パタンとドアを閉められる。
「……」
まただ。
また寝室に入れてもらえなかった……。
私はトボトボと自室に向かう。
自室に入り、ベッドにボスンと横になった。
オズベルト様と恋人同士になってから、一ヵ月が経過した。
私は今とても幸せだ。
……幸せなんだけど。
私はギュッと枕を抱き締めた。
欲を言えばもっとオズベルト様に触れたい!!!
折角オズベルト様と恋人同士になれたのに、私達はオズベルト様が童貞を捨てたあの日以来、一度も身体を繋げていないのだ。
な、何故だろう!? 恋人同士になったら普通は交わり放題ではないのだろうか!?
オズベルト様は私を抱きたくないのだろうか? いつも身体を綺麗にして待っているのに、オズベルト様は一向に私をベッドに誘ってくれないのだ。
本当に何故だろう!? 私に魅力がないからだろうか?
……お付き合いする前はあんなに情熱的に私を求めて下さったのに……。
やっぱり私が蛇だから嫌なのだろうか……。
ペットとは関係を持ちたくないのだろうか……。
私は今すぐにでもオズベルト様と愛し合いたいのにな……。
……何故抱いてくれないのか聞いてみようか?
い、いや……。そんなはしたない事はできない。
それに、もし『抱きたくないから抱かないのだ』とでも言われたら、私は落ち込んでしまう。
オズベルト様にその気がないのなら、私から動く事はできない。このままの関係を続けるしかないのだ。
……でも、何だか寂しいな……。
私はハァーッとため息を吐いた。
※※※※
それから一週間。
何事もなく日々は過ぎていった。
今日オズベルト様は、お仕事の日だ。
たまに国王直々に依頼が来るのだ。今回の依頼は、遠くの村で魔獣が暴れているので討伐してほしいと言うものだった。
オズベルト様は依頼を受けて、朝からお一人で魔獣討伐に出かけて行った。
まさかあのオズベルト様が負ける筈はないと思うが、やはり心のどこかで不安だった。
夕方になり無事に帰ってきたオズベルト様のお姿を見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
「お帰りなさい。オズベルト様」
「ただいま。魔獣は何とか倒せたぞ」
「それは良かったです。お疲れ様でした」
「ありがとう。それでな、土産があるのだ」
そう言うと、オズベルト様は右手に持っていたワインのボトルを私に見せた。
「今日行った村はな、赤ワインが有名なのだ。これは討伐の御礼にと村の方からいただいたものだ。夕飯の時に飲もう」
「わぁ。それは楽しみです」
そんな会話をしながら私達はニコニコと家の中に入った。
※※※※
オズベルト様がお風呂に入っている間にさっと夕飯を作った。
今日はステーキだ。赤ワインと言えば肉料理なのでそれにした。
少し待つと、お風呂から上がったオズベルト様がリビングにやって来た。私が作った料理を見て、嬉しそうな声を上げる。
「ルーンが作ってくれたのか。美味そうだな」
「ありがとうございます。――さぁ、熱いうちにいただきましょう」
「あぁ」
テーブルを挟み、向かい合わせで座った。
ワインをグラスに注ぎ、乾杯をしてから口をつけた。
「わぁ。フルーティですね。美味しいです」
「あぁ。有名なだけあるな」
本当に美味しい。ステーキとよく合う。これならいくらでも飲めてしまう。
私は何だか楽しい気分になってきて、何杯もワインをおかわりした。
※※※※
気が付けば、ワインボトルはカラになっていた。
私はニコニコとオズベルト様に話しかけた。
「ワイン、無くなってしまいました」
「そうだな。お前はそのワインが大層気に入ったようだな」
「はい! とても美味しかったです!」
「ふふ。また買ってきてやろう」
「はい!」
私が元気よく頷いたら、オズベルト様がクスクスと笑った。
「お前、酔ってるな? ルーンは酔うとこんな感じなのか」
「酔ってません」
「そうか? 何やらいつもより幼く見えるぞ。普段のお前も可愛いが、酔ったお前も無邪気で可愛い」
「……」
私はオズベルト様の言葉を聞いて、プイッとそっぽを向いた。
「本当は可愛いなんて思ってない癖に!」
「思ってるよ」
「嘘です! 本当に可愛いと思ってるなら、もっと態度に出る筈です!」
「そうか? いつもお前にデレデレではないか」
「デレデレなんかしてません!!」
私は腕を組み、ぷりぷりと怒りながら口を尖らせた。
「オズベルト様は冷たいです!! いつも一人で寝てしまう!! 私達は恋人同士なのに、寝室が別々なんて変です!!」
「そ、それは……」
「オズベルト様は私と交わりをするのが嫌なんでしょう? だから別々に寝るのです! 酷い男です、オズベルト様は! 釣った魚には餌をあげないタイプなんですね!!」
「……」
私はシュンと項垂れた。
「私はオズベルト様と愛し合いたいのに……。いつも身体を綺麗にしてオズベルト様が誘って下さるのを待っているのに……」
「……」
オズベルト様は黙り込んだ。
部屋の中はシーンと静まり返っていた。
そこで私はハッとした。
マズイ……。余計な事を言ってしまった。オズベルト様の言う通り、どうやら私は酔っているようだ。
慌てて椅子から立ち上がり、オズベルト様に向かって頭を下げた。
「申し訳ございません。口が滑りました。少しワインを飲みすぎたようです」
「いや……」
オズベルト様はジイっと私の顔を凝視していた。
「それより、今の話は本当か?」
「え?」
「ルーンは俺に抱かれたいのか?」
「……いや、その……」
私は赤面した。
何とはしたない事を言ってしまったのだろう。オズベルト様は呆れただろうか?
オズベルト様のお顔を見るのが怖くて、私は慌ててうつむいた。
「今日の私は少しおかしいのです。外の風にあたり、頭を冷やしてきます」
「待て!」
オズベルト様が立ち上がり、私の腕を掴んだ。
「待ってくれ……。俺の質問に答えてほしい。ルーンは本当に俺に抱かれたかったのか?」
「……」
「……俺はお前を抱いてもいいのか?」
「え?」
私はオズベルト様のお顔を見つめた。
オズベルト様は、どこか苦しそうな表情で私を見ていた。
「俺は……お前に触れても良いのか分からなかったのだ。普段のお前は性的な事に興味が無さそうだったから……」
「……」
「抱かせてくれと言ったら、お前は嫌がる気がしたのだ。お前に嫌われるぐらいなら、俺が我慢すればいいと思っていた」
「そ、そんな事はございません」
「では俺はお前に触れてもいいのか? お前を愛してもいいのか?」
「……も、もちろんです」
私は赤面しつつも、オズベルト様のエメラルド色の瞳を見つめてキッパリと答えた。
「……ルーン……」
オズベルト様がそっと私の腰に腕を回した。
引き寄せられて、オズベルト様とピッタリとくっついた。
オズベルト様のお顔が近付いてくる。キスをするのだろう。私は目を瞑った。
唇が触れ合う。暫く啄むようなキスをしていたら、オズベルト様の舌が唇に触れた。
私はそれを受け入れて、そっと口を開いた。
舌と舌を絡め合う。気持ちが良くて、オズベルト様の服をギュッと握りしめた。
オズベルト様の気が済むまでキスは続き、舌が疲れてきた頃にやっと唇が離れた。
オズベルト様にギュッと抱き締められる。
「ルーン……。お前を抱きたい。ずっと抱きたかったのだ」
「オズベルト様……。嬉しいです」
私もオズベルト様の背中に腕を回し、ギュッと抱き返した。
「じゃあ俺の部屋に行こう」
「は、はい……」
私が言い終わるのとほぼ同時に、オズベルト様は私を横抱きにした。早脚でお部屋に向かう。
途中待ちきれなかったのか、オズベルト様は何度も私にキスをしてきた。
部屋に入ると、そっとベッドに降ろされる。すぐにオズベルト様がのし掛かってきた。
キスをしながらお互いの服を脱がせ合った。
裸になった私を見て、オズベルト様は眩しいものを見るように目を細めた。
「綺麗だ」
ストレートな褒め言葉に、私は赤面した。
思わず両手で身体を隠してしまう。
「ルーン。隠さないでくれ。もっとお前の身体が見たい」
「恥ずかしいです」
オズベルト様はクスリと笑い、やんわりと私の両手を掴んで、そのまま頭上に固定した。
オズベルト様のお顔が近付いてくる。オズベルト様は私の貧相な胸に顔を埋め、乳首を口に含んだ。そのままペロペロと舐められる。途端に私は小さく喘いだ。反対側の胸も、同じ様に舐められる。
気持ちが良くて、私の性器はトロリと先走りを零していた。
オズベルト様の手が、私の尻に移動する。収縮を繰り返していた私の尻穴に、二本の指が侵入する。指からは粘液が溢れていた。恐らくオズベルト様の魔法だろう。オズベルト様はこんな事も出来るのか。流石だ。だが、感心している暇はない。
濡れた指先が私の尻穴を掻き回す。空いている方の手は私の性器を掴み、優しく扱いていた。
前と後ろ両方を刺激されて、私は絶え間なく喘いだ。
「そろそろいいだろう」
オズベルト様の指が尻の穴から抜けた。その代わりに、ピタリと性器が当てられた。
「挿れるぞ」
「……はい」
ゆっくりと性器が入ってくる。私は身体の力を抜き、ふぅふぅと息を吐いた。
性器はこれ以上奥には進めないと思うところまで侵入し、動きを止めた。
恐らく中が馴染むまで待ってくれているのだろう。そんなオズベルト様のお心遣いが嬉しくて、私は荒い息を吐きながら微笑んだ。
「もう……、動いて、大丈夫ですよ」
「……そうか?」
オズベルト様の息も荒い。きっと動きたくて堪らないのだろう。
「はい……。どうぞお好きになさって下さい」
私の言葉を聞いて、オズベルト様はコクリと頷いた。そして私の腰を持ち、ゆっくりと動き始めた。
段々オズベルト様の動きが速くなってゆく。
私はすぐに快感に溺れ、あられもない声で喘いだ。
※※※※
オズベルト様と私が達したのは、ほぼ同時だった。
行為が終わり、オズベルト様の性器が私の尻から引き抜かれた。
私達は荒い息を吐きながらベッドに横たわった。
「ルーン、素晴らしかった」
「オズベルト様も、素敵でした」
息が整ってきたので、そろそろ服を着ようと立ち上がったら、オズベルト様が私の腕を掴んだ。
「まだいいだろう? もう少しお前とベタベタしていたい」
「!」
実は私ももう少しオズベルト様に甘えたかったので、喜んでベッドに戻った。
二人でキスをしたり抱き合ったりしながら至福の時間を過ごす。
オズベルト様は私の髪を一房掴み、クルクルと指に巻き付けて遊んでいた。
「お前の髪は本当に綺麗だな」
「そうですか? オズベルト様の髪は――」
私はオズベルト様の真っ黒な髪をクシャクシャとかき回した。
「硬いです」
「はは。俺は剛毛なのだ」
オズベルト様の言葉に、私はクスクスと笑った。
オズベルト様も照れた様に微笑んでいたが、何かを思い出したのか、『そう言えば……』と口を開いた。
「ルーン。さっき言ってた事。あれは本当か?」
「なんの事でしょう?」
「お前は俺に抱かれる為に毎日身体を綺麗にして待っていたと言う話だ」
うっ……。その話はもう蒸し返さないでほしい。
恥ずかしくなってしまう。あの時の私は酔っていたのだ。私は赤面しながら口を開いた。
「さっきの話は忘れて下さい……」
「いや、絶対に忘れない。嬉しすぎて何度も思い返してしまう」
「そんな……」
オズベルト様はニコリと微笑えみ、愛おしそうに私の頭を撫でた。
「ルーン。さっきみたいに心に思った事は、すぐに俺に伝えてほしい。俺はかなり鈍いのだ。言ってくれないと気付けない事が多い」
「……」
「お前は俺に気を遣ってばかりだろう? もっとワガママを言っていいのだ。お前のワガママで、俺を困らせてほしい」
「……本当に?」
私はおずおずとオズベルト様を見つめた。
「あぁ! 何でも言ってくれ」
それならば……。
私はピトリとオズベルト様にくっついた。
「オズベルト様。たまにでいいので、またこうやって私と愛し合って下さい。私はもっとオズベルト様に触れたいのです」
「……」
オズベルト様は、うっ……と唸った。
苦しそうに右手で胸を抑えている。
「そんな可愛いワガママがあるか! 可愛すぎて心臓が痛い! 俺はたまにどころか毎日お前と愛し合いたいぞ!?」
「え? 毎日ですか?」
「あ……。すまない、毎日は言い過ぎだったな。お前の身体の負担を考えたら数日に一回の方がいいか……。その代わり、毎日同じベッドで寝よう。俺も本当はずっと、お前と一緒に寝たかったのだ」
「!」
オズベルト様と一緒に寝られる! 実を言うと、一人寝は寂しかったのだ。これからは存分にオズベルト様に甘えられる!
私は嬉しくなってギュッとオズベルト様に抱き着いた。
「ありがとうございます! オズベルト様!」
「俺の方こそありがとう」
私達はニコニコと笑い合った。
こうして私達の長い夜は更けていったのだった。
フワフワのバスタオルで身体を拭き、オズベルト様が買って下さったパジャマを着る。ついでに歯を磨き、濡れた髪を乾かした。
――これで準備よし!
私はオズベルト様がいるリビングに向かった。
オズベルト様は椅子に座り、本を読んでいた。
「オズベルト様。お先にお風呂いただきました」
オズベルト様は本から顔を上げて私を見た。
「そうか。よく温まってきたかい?」
「はい」
「じゃあ俺もそろそろ入ろうかな」
オズベルト様が椅子から立ち上がり風呂場に向かった。
オズベルト様のお風呂の時間はいつも大体十五分位だ。私はオズベルト様がお風呂から出てくるのをソワソワと待っていた。
少しすると、オズベルト様がパジャマを着てリビングに戻ってきた。
「あれ? ルーン。まだ起きていたのか?」
「はい。オズベルト様が戻ってくるのを待っておりました」
「そうか。ありがとう。じゃあ、そろそろ寝ようか」
「はい!」
オズベルト様が寝室に向かって歩き出したので、私も後に続いた。
寝室へ行き、ドアを開けて中に入ろうとしたオズベルト様が私の方を振り返った。
「どうしたルーン。何故着いてくる。お前の部屋はあっちだろう?」
「……」
「まだ眠くないのかい?」
「……いえ……」
「じゃあ寝よう。お休みルーン」
「……はい」
オズベルト様は寝室に入っていってしまった。パタンとドアを閉められる。
「……」
まただ。
また寝室に入れてもらえなかった……。
私はトボトボと自室に向かう。
自室に入り、ベッドにボスンと横になった。
オズベルト様と恋人同士になってから、一ヵ月が経過した。
私は今とても幸せだ。
……幸せなんだけど。
私はギュッと枕を抱き締めた。
欲を言えばもっとオズベルト様に触れたい!!!
折角オズベルト様と恋人同士になれたのに、私達はオズベルト様が童貞を捨てたあの日以来、一度も身体を繋げていないのだ。
な、何故だろう!? 恋人同士になったら普通は交わり放題ではないのだろうか!?
オズベルト様は私を抱きたくないのだろうか? いつも身体を綺麗にして待っているのに、オズベルト様は一向に私をベッドに誘ってくれないのだ。
本当に何故だろう!? 私に魅力がないからだろうか?
……お付き合いする前はあんなに情熱的に私を求めて下さったのに……。
やっぱり私が蛇だから嫌なのだろうか……。
ペットとは関係を持ちたくないのだろうか……。
私は今すぐにでもオズベルト様と愛し合いたいのにな……。
……何故抱いてくれないのか聞いてみようか?
い、いや……。そんなはしたない事はできない。
それに、もし『抱きたくないから抱かないのだ』とでも言われたら、私は落ち込んでしまう。
オズベルト様にその気がないのなら、私から動く事はできない。このままの関係を続けるしかないのだ。
……でも、何だか寂しいな……。
私はハァーッとため息を吐いた。
※※※※
それから一週間。
何事もなく日々は過ぎていった。
今日オズベルト様は、お仕事の日だ。
たまに国王直々に依頼が来るのだ。今回の依頼は、遠くの村で魔獣が暴れているので討伐してほしいと言うものだった。
オズベルト様は依頼を受けて、朝からお一人で魔獣討伐に出かけて行った。
まさかあのオズベルト様が負ける筈はないと思うが、やはり心のどこかで不安だった。
夕方になり無事に帰ってきたオズベルト様のお姿を見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
「お帰りなさい。オズベルト様」
「ただいま。魔獣は何とか倒せたぞ」
「それは良かったです。お疲れ様でした」
「ありがとう。それでな、土産があるのだ」
そう言うと、オズベルト様は右手に持っていたワインのボトルを私に見せた。
「今日行った村はな、赤ワインが有名なのだ。これは討伐の御礼にと村の方からいただいたものだ。夕飯の時に飲もう」
「わぁ。それは楽しみです」
そんな会話をしながら私達はニコニコと家の中に入った。
※※※※
オズベルト様がお風呂に入っている間にさっと夕飯を作った。
今日はステーキだ。赤ワインと言えば肉料理なのでそれにした。
少し待つと、お風呂から上がったオズベルト様がリビングにやって来た。私が作った料理を見て、嬉しそうな声を上げる。
「ルーンが作ってくれたのか。美味そうだな」
「ありがとうございます。――さぁ、熱いうちにいただきましょう」
「あぁ」
テーブルを挟み、向かい合わせで座った。
ワインをグラスに注ぎ、乾杯をしてから口をつけた。
「わぁ。フルーティですね。美味しいです」
「あぁ。有名なだけあるな」
本当に美味しい。ステーキとよく合う。これならいくらでも飲めてしまう。
私は何だか楽しい気分になってきて、何杯もワインをおかわりした。
※※※※
気が付けば、ワインボトルはカラになっていた。
私はニコニコとオズベルト様に話しかけた。
「ワイン、無くなってしまいました」
「そうだな。お前はそのワインが大層気に入ったようだな」
「はい! とても美味しかったです!」
「ふふ。また買ってきてやろう」
「はい!」
私が元気よく頷いたら、オズベルト様がクスクスと笑った。
「お前、酔ってるな? ルーンは酔うとこんな感じなのか」
「酔ってません」
「そうか? 何やらいつもより幼く見えるぞ。普段のお前も可愛いが、酔ったお前も無邪気で可愛い」
「……」
私はオズベルト様の言葉を聞いて、プイッとそっぽを向いた。
「本当は可愛いなんて思ってない癖に!」
「思ってるよ」
「嘘です! 本当に可愛いと思ってるなら、もっと態度に出る筈です!」
「そうか? いつもお前にデレデレではないか」
「デレデレなんかしてません!!」
私は腕を組み、ぷりぷりと怒りながら口を尖らせた。
「オズベルト様は冷たいです!! いつも一人で寝てしまう!! 私達は恋人同士なのに、寝室が別々なんて変です!!」
「そ、それは……」
「オズベルト様は私と交わりをするのが嫌なんでしょう? だから別々に寝るのです! 酷い男です、オズベルト様は! 釣った魚には餌をあげないタイプなんですね!!」
「……」
私はシュンと項垂れた。
「私はオズベルト様と愛し合いたいのに……。いつも身体を綺麗にしてオズベルト様が誘って下さるのを待っているのに……」
「……」
オズベルト様は黙り込んだ。
部屋の中はシーンと静まり返っていた。
そこで私はハッとした。
マズイ……。余計な事を言ってしまった。オズベルト様の言う通り、どうやら私は酔っているようだ。
慌てて椅子から立ち上がり、オズベルト様に向かって頭を下げた。
「申し訳ございません。口が滑りました。少しワインを飲みすぎたようです」
「いや……」
オズベルト様はジイっと私の顔を凝視していた。
「それより、今の話は本当か?」
「え?」
「ルーンは俺に抱かれたいのか?」
「……いや、その……」
私は赤面した。
何とはしたない事を言ってしまったのだろう。オズベルト様は呆れただろうか?
オズベルト様のお顔を見るのが怖くて、私は慌ててうつむいた。
「今日の私は少しおかしいのです。外の風にあたり、頭を冷やしてきます」
「待て!」
オズベルト様が立ち上がり、私の腕を掴んだ。
「待ってくれ……。俺の質問に答えてほしい。ルーンは本当に俺に抱かれたかったのか?」
「……」
「……俺はお前を抱いてもいいのか?」
「え?」
私はオズベルト様のお顔を見つめた。
オズベルト様は、どこか苦しそうな表情で私を見ていた。
「俺は……お前に触れても良いのか分からなかったのだ。普段のお前は性的な事に興味が無さそうだったから……」
「……」
「抱かせてくれと言ったら、お前は嫌がる気がしたのだ。お前に嫌われるぐらいなら、俺が我慢すればいいと思っていた」
「そ、そんな事はございません」
「では俺はお前に触れてもいいのか? お前を愛してもいいのか?」
「……も、もちろんです」
私は赤面しつつも、オズベルト様のエメラルド色の瞳を見つめてキッパリと答えた。
「……ルーン……」
オズベルト様がそっと私の腰に腕を回した。
引き寄せられて、オズベルト様とピッタリとくっついた。
オズベルト様のお顔が近付いてくる。キスをするのだろう。私は目を瞑った。
唇が触れ合う。暫く啄むようなキスをしていたら、オズベルト様の舌が唇に触れた。
私はそれを受け入れて、そっと口を開いた。
舌と舌を絡め合う。気持ちが良くて、オズベルト様の服をギュッと握りしめた。
オズベルト様の気が済むまでキスは続き、舌が疲れてきた頃にやっと唇が離れた。
オズベルト様にギュッと抱き締められる。
「ルーン……。お前を抱きたい。ずっと抱きたかったのだ」
「オズベルト様……。嬉しいです」
私もオズベルト様の背中に腕を回し、ギュッと抱き返した。
「じゃあ俺の部屋に行こう」
「は、はい……」
私が言い終わるのとほぼ同時に、オズベルト様は私を横抱きにした。早脚でお部屋に向かう。
途中待ちきれなかったのか、オズベルト様は何度も私にキスをしてきた。
部屋に入ると、そっとベッドに降ろされる。すぐにオズベルト様がのし掛かってきた。
キスをしながらお互いの服を脱がせ合った。
裸になった私を見て、オズベルト様は眩しいものを見るように目を細めた。
「綺麗だ」
ストレートな褒め言葉に、私は赤面した。
思わず両手で身体を隠してしまう。
「ルーン。隠さないでくれ。もっとお前の身体が見たい」
「恥ずかしいです」
オズベルト様はクスリと笑い、やんわりと私の両手を掴んで、そのまま頭上に固定した。
オズベルト様のお顔が近付いてくる。オズベルト様は私の貧相な胸に顔を埋め、乳首を口に含んだ。そのままペロペロと舐められる。途端に私は小さく喘いだ。反対側の胸も、同じ様に舐められる。
気持ちが良くて、私の性器はトロリと先走りを零していた。
オズベルト様の手が、私の尻に移動する。収縮を繰り返していた私の尻穴に、二本の指が侵入する。指からは粘液が溢れていた。恐らくオズベルト様の魔法だろう。オズベルト様はこんな事も出来るのか。流石だ。だが、感心している暇はない。
濡れた指先が私の尻穴を掻き回す。空いている方の手は私の性器を掴み、優しく扱いていた。
前と後ろ両方を刺激されて、私は絶え間なく喘いだ。
「そろそろいいだろう」
オズベルト様の指が尻の穴から抜けた。その代わりに、ピタリと性器が当てられた。
「挿れるぞ」
「……はい」
ゆっくりと性器が入ってくる。私は身体の力を抜き、ふぅふぅと息を吐いた。
性器はこれ以上奥には進めないと思うところまで侵入し、動きを止めた。
恐らく中が馴染むまで待ってくれているのだろう。そんなオズベルト様のお心遣いが嬉しくて、私は荒い息を吐きながら微笑んだ。
「もう……、動いて、大丈夫ですよ」
「……そうか?」
オズベルト様の息も荒い。きっと動きたくて堪らないのだろう。
「はい……。どうぞお好きになさって下さい」
私の言葉を聞いて、オズベルト様はコクリと頷いた。そして私の腰を持ち、ゆっくりと動き始めた。
段々オズベルト様の動きが速くなってゆく。
私はすぐに快感に溺れ、あられもない声で喘いだ。
※※※※
オズベルト様と私が達したのは、ほぼ同時だった。
行為が終わり、オズベルト様の性器が私の尻から引き抜かれた。
私達は荒い息を吐きながらベッドに横たわった。
「ルーン、素晴らしかった」
「オズベルト様も、素敵でした」
息が整ってきたので、そろそろ服を着ようと立ち上がったら、オズベルト様が私の腕を掴んだ。
「まだいいだろう? もう少しお前とベタベタしていたい」
「!」
実は私ももう少しオズベルト様に甘えたかったので、喜んでベッドに戻った。
二人でキスをしたり抱き合ったりしながら至福の時間を過ごす。
オズベルト様は私の髪を一房掴み、クルクルと指に巻き付けて遊んでいた。
「お前の髪は本当に綺麗だな」
「そうですか? オズベルト様の髪は――」
私はオズベルト様の真っ黒な髪をクシャクシャとかき回した。
「硬いです」
「はは。俺は剛毛なのだ」
オズベルト様の言葉に、私はクスクスと笑った。
オズベルト様も照れた様に微笑んでいたが、何かを思い出したのか、『そう言えば……』と口を開いた。
「ルーン。さっき言ってた事。あれは本当か?」
「なんの事でしょう?」
「お前は俺に抱かれる為に毎日身体を綺麗にして待っていたと言う話だ」
うっ……。その話はもう蒸し返さないでほしい。
恥ずかしくなってしまう。あの時の私は酔っていたのだ。私は赤面しながら口を開いた。
「さっきの話は忘れて下さい……」
「いや、絶対に忘れない。嬉しすぎて何度も思い返してしまう」
「そんな……」
オズベルト様はニコリと微笑えみ、愛おしそうに私の頭を撫でた。
「ルーン。さっきみたいに心に思った事は、すぐに俺に伝えてほしい。俺はかなり鈍いのだ。言ってくれないと気付けない事が多い」
「……」
「お前は俺に気を遣ってばかりだろう? もっとワガママを言っていいのだ。お前のワガママで、俺を困らせてほしい」
「……本当に?」
私はおずおずとオズベルト様を見つめた。
「あぁ! 何でも言ってくれ」
それならば……。
私はピトリとオズベルト様にくっついた。
「オズベルト様。たまにでいいので、またこうやって私と愛し合って下さい。私はもっとオズベルト様に触れたいのです」
「……」
オズベルト様は、うっ……と唸った。
苦しそうに右手で胸を抑えている。
「そんな可愛いワガママがあるか! 可愛すぎて心臓が痛い! 俺はたまにどころか毎日お前と愛し合いたいぞ!?」
「え? 毎日ですか?」
「あ……。すまない、毎日は言い過ぎだったな。お前の身体の負担を考えたら数日に一回の方がいいか……。その代わり、毎日同じベッドで寝よう。俺も本当はずっと、お前と一緒に寝たかったのだ」
「!」
オズベルト様と一緒に寝られる! 実を言うと、一人寝は寂しかったのだ。これからは存分にオズベルト様に甘えられる!
私は嬉しくなってギュッとオズベルト様に抱き着いた。
「ありがとうございます! オズベルト様!」
「俺の方こそありがとう」
私達はニコニコと笑い合った。
こうして私達の長い夜は更けていったのだった。
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