スケルトン将軍は困惑する

チョロケロ

文字の大きさ
11 / 16

第十一話 穏やかな日常に潜む闇

しおりを挟む
 ゾンビラー様はイーザスのことが気に入ったらしく、三日に一度家に遊びにくるようになった。
 今夜もゾンビラー様はワインを飲み、上機嫌でイーザスに絡んだ。

「しかしイーザスが作るメシは美味いのお。我が家にもこんなペットが欲しいものじゃ。どうじゃ? イーザス。スケルトン将軍ではなく、ワシのペットになる気はないか?」
「絶対やだ。大好きなスケルトン将軍のためだと思うから、料理も掃除も頑張れるんだ。ゾンビラー様のペットになったら、家事なんて一切やらないよ」
「わっはっはっ! 冗談じゃよ! そんな全力で嫌がるなよ!」

 あー……またゾンビラー様に失礼なことを言っている。だが、ゾンビラー様の誘いをきっぱり断ってくれたのは嬉しい。
 私は申し訳なさと嬉しさが混同し、困ったように笑うことしか出来なかった。
 そんな感じで穏やかな食事会が続き、気付いたら深夜になっていた。
 明日も仕事がある。そろそろお開きにするかなと思っていたら、同じことを思っていたのかゾンビラー様が「そろそろ帰るかのお」と言って席から立ち上がった。

 私とイーザスで玄関までお見送りし、ゾンビラー様はご機嫌の千鳥足で家まで帰って行ったのだった。

 夕飯の片付けをし、風呂に入る。
 さて、そろそろ寝ようかとベッドに入ったところで、それは起こった。

「スケルトン将軍ー! 夜分遅くにすみませーん! 起きてますか!?」

 そんな声とともに、玄関のドアをドスンドスンと体当たりするような音が聞こえたのだ。
 この声はスラ次郎の声だ。
 私は寝巻きのまま、慌てて玄関に向かう。
 ドアを開けると、緊張した面持ちのスラ次郎が立っていた。

「どうしたのだ? スラ次郎。こんな夜遅くに」
「それが……! 大変なんです! 冒険者が来たんです!」
「なに!?」

 冒険者は、通常夜にはダンジョンに入って来ないのだ。なぜ入って来ないのか?
 それは夜はモンスターたちが休むからだ。モンスターも生き物だ。朝から晩まで働いていたら休む暇もなく疲れてしまう。
 冒険者とモンスターには、夜はモンスターが疲れているから、ダンジョンに入るのはやめましょうねという暗黙の了解があるのだ。
 その暗黙の了解がある代わりに、モンスターはダンジョンの外に出ても暴れることはない。
 もしモンスターが外に出て暴れたら、人間はパニックになるだろうからな。
 つまり、私たちと人間たちは、危うい均等関係を保ちながらも、上手く共存しているのだ。
 その関係を、人間の方から破った。
 にっくき人間め。これだから人間は嫌なのだ。
 だが、これは由々ゆゆしき事態だ。今モンスターたちは休んでいるので、動けるものはほとんどいない。この状態ならゾンビラー様のお住まいの最下層まで、余裕で到達出来るだろう。
 
 そこで私はハッとした。

 ゾンビラー様は、先程までワインを飲んでいた。つまり、酔っ払っているのだ。そんな状態で冒険者と戦うことにでもなったら……!
 私は最悪の事態を考えて、ゾォーっと背筋が凍った。

「スラ次郎! とにかくゾンビラー様の元に向かうぞ!」
「はい!」

 すると、私たちの声が寝室まで届いていたのか、イーザスが心配そうな表情でこちらに近付いてきた。

「スケルトン将軍、大丈夫? これ、スケルトン将軍の剣だよ」

 イーザスは、部屋の中に立てかけてあった私の剣を持ってきてくれた。本当はヨロイも装備したいが、今は一刻を争うときだ。そんなヒマはない。
 私はイーザスから剣を受け取ると、ゾンビラー様のお住まいに向かって駆け出した。
 すると――。

「俺も行く!」

 なんと、イーザスが着いてきたのだ。

「お前がいても邪魔だ! 家にいろ!」

 私は走りながら答える。

「嫌だ! みんなのことが心配なんだ!」

 心配してくれるのは有り難いが、この場合は迷惑だ。なにせイーザスはエロトラップ宝箱に引っかかるくらいのバカなのだ。着いてこられても足手まといになるのは目に見えている。私は、「スラ次郎!」と叫んだ。

「はい!」
「イーザスに、膨らみ攻撃をしろ!」

 膨らみ攻撃とは、ぷくーっと膨らんで身体を何倍にも大きくしたあと、対象者にのし掛かるというスライムの技だ。殺傷能力は全くないので、イーザスにこの技をかけても大丈夫だろうと判断した。

「分かりました!」

 スラ次郎はぷくーっと膨らみ、身体を大きくしたあと、イーザスにドスンッとのし掛かった。

「わっ! なんだこれ!」

 のし掛かられたイーザスは動きを封じられ、スラ次郎の下でバタバタ手足を動かして暴れている。
 よし! イーザスの動きを封じた。これで安心してゾンビラー様の元に向かえる。
 私は前を向き、再び走り出した。
 胸中はゾンビラー様の安否で一杯だった。

「ゾンビラー様! どうぞご無事で――!」

 私は絞り出すような声でつぶやいたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

婚約破棄をしようとしたら、パパになりました

ミクリ21
BL
婚約破棄をしようとしたら、パパになった話です。

声なき王子は素性不明の猟師に恋をする

石月煤子
BL
第一王子である腹違いの兄から命を狙われた、妾の子である庶子のロスティア。 毒薬によって声を失った彼は城から逃げ延び、雪原に倒れていたところを、猟師と狼によって助けられた。 「王冠はあんたに相応しい。王子」 貴方のそばで生きられたら。 それ以上の幸福なんて、きっと、ない。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

処理中です...