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キス
しおりを挟む「ヒィッ!」
血みどろのゾンビが主人公を追いかけている場面を見て、僕は背筋が凍った。
何だこれ……。怖いじゃないか!!!
思わず尚君の服の袖を握った。
それだけでは恐怖が治らず、ぴっとりと尚君にくっついた。
尚君はそんな僕の状態に気が付いてニヤニヤと笑っている。
「やっぱり藍沢さん、怖いんじゃん」
「こ、怖く無いよ!」
「ふーん……」
尚君が僕の腰に腕を回して引き寄せてきた。フワッと花の香りが鼻腔いっぱいに広がる。おそらくシャンプーの匂いだろう。流石美青年。匂いまで美しい……等と思っていたら、尚君にがっちりホールドされていた。
「こうすれば怖く無いだろ?」
「あ、あぁ……」
怖く無いけど今度は恥ずかしい。こんなに密着することなんて初めてなのだ。
尚君の顔が見れなくて、必死にテレビの画面を見ていたら、尚君にこっち向いてよ……と囁かれた。
「な、何だい?」
恥ずかしいがいい大人が『恥ずかしいから嫌だ!』とも言えず、僕は言われるがままに尚君の方へ顔を向けた。
尚君と目が合う。
そして、尚君の顔が近付いてきた。
こ、これは……!!!
僕は思わず顔を背ける。
「……。藍沢さん、キスしちゃだめなの?」
「だ、だめだよ! だって君、まだ大学生だろう?」
「何それ……。今時小学生でもキスぐらいしてるよ」
「え!? マセてるなぁ」
そんな事を言いながらさりげなく尚君から離れようとした。だが、ガッチリホールドされていて身動きが取れない。
「尚君、もう大丈夫だから離してくれよ」
「ヤダよ」
離すどころか尚君は僕の身体をソファに押し倒した。両腕をガッチリ掴まれていて身動きが取れない。こんな美青年のどこにそんな力が隠されているんだ!? 動揺していると、再び尚君の唇が近付いてくる。
「な、尚君! やめてくれよ!」
「ヤダ」
僕の抵抗も虚しく、尚君は易々と僕の唇に触れ、チュッと軽いキスをしてきた。
「……」
僕は何が何だか分からなくてギュッと目を瞑った。その後もチュッチュッと尚君の唇が僕の口に触れる。そして、ペロリと唇を舐められた。
く、口を開けろと言われているような気がする!
これはアレだ! ディープキスと言うやつだ! ダメだダメだ! 断固拒否する! 僕はグッと力を込めて口を閉じた。暫く尚君は僕の唇を舐めていたが、僕が頑なに口を開けないので諦めたのか、ゆっくりと顔が離れていった。ついでに両手の拘束も解いてくれる。
尚君はハァーっとため息をついた。
「俺、欲求不満なんだけど」
「ダメだよ。大学生に手なんて出せない」
「いつもそれ言うよねー。じゃあ、いつならいいわけ?」
「尚君が大学を卒業して立派な社会人になってからならいいと思うんだ」
「勘弁してくれよぉ~」
尚君は頭を抱えた。
ごめん尚君……。
僕もそれはどうかと思う。だって大学卒業まであと何年もある。流石にそれまでおあずけは酷いと思う。僕だってそれは分かってるんだ……!
だ、だけど、僕は君に手を出せない理由が一つだけあるんだ……!!
その理由とは……。
僕が『童貞』だからだ。
つまり、簡単に言うとセックスが下手くそなのだ。
セックスするならきっと僕が抱く側になるだろう。確認してないけど絶対そうだ! だって僕が抱かれる側なんて想像したら気持ち悪いし、尚君みたいな美青年が抱かれる側の方が美しい!
そうなってくると、僕は尚君をリードしなければいけない立場になる。
だって僕歳上だし、尚君だってきっとセックスは初めてだろう。お互い初めてだと色々大変だと思うのだ。
だけど、僕はリードできない。何故なら童貞だから。初めてのセックスで失敗なんかしたくない!
だから尚君には手は出せない。
手を出しても何をすれば良いか分からないのだ。
本当は僕が他の人で童貞を卒業してから尚君を抱くのが一番良いと思う。そうすればリードできるし、尚君も安心だと思うのだ。だけど、尚君と付き合っているのに他の人と関係を持つなんて最低だ。それは浮気と言うのだ。
そんな事は絶対できない。
ならば僕はどうすれば良いんだ……。
とりあえず今はネットなどでセックスについて猛勉強している。勉強が終わって自信がついたら尚君とそういう事をしてみたいのだ。
だからキスもダメだ。キスをしたらその先もしたくなってしまう。だから絶対にダメなのだ。
尚君には申し訳ないけど、もう少し待ってほしい。
今の僕には頭を抱えている尚君を申し訳なさそうに眺めている事しか出来なかった。
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