女王候補になりまして

くじら

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脱・引きこもり姫

乗馬大会②

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 先生に励まされた後、大会の開始を知らせる鐘が鳴った。
 私たちは急いで会場の試合場所へと向かった。

 前世で言う運動会や体育祭などでよくある開始の宣誓を行った後、模範試合としてこの国の第一騎士団隊長と副隊長の乗馬戦が行われた。

 二人の扱う馬はエヴァと同じか、はたまたそれ以上かの大きさをしている。
 それなのに、騎士団長達が馬をこれまた上手に扱うので私は終始驚いていた。私にはできる技じゃない。

「やっぱすげぇな、あの二人………!」

 先生がまるで独り言のように瞳をキラキラさせながら言う。
 "やっぱり"ということは前にもあの二人と何かしらの関係があったという事なのだろうか。

 疑問に思っていると、いつの間にか模範試合が終わり、一試合目が幕を開ける鐘が鳴った。


 一試合目を開始する鐘が鳴った後、準備の為に選手は一度控え室にはけた。
 その後、私が出場する試合表を見ることになった。
 乗馬大会は三日間に渡って行われる為、最初の一日目は新人から行われるのが常になっていたる。なので、私は今日必ず出場する事になっているのだ。

「エマ、エマ、エマ……お、あったぞ。お前が出場する試合は六試合目だそうだ。時間は──そうだな、午後からになりそうだな。午後になるにはまだ時間はあるが……どうする?練習でもして行くか?それとも観戦するか?」

「そうですね……エヴァにも休憩させる時間が欲しいので暫くは観戦しようと思います」

 控え室からでも聞こえる、観戦者の歓声が今の私にとっては何よりの緊張を与えている。
 心を休める為にも今は他の選手の試合を見た方が私にとっては良いと思った。

「分かった。じゃ、とっておきの席を用意してあるから行こうぜ」

 先生は楽しそうに私の手を取って私を引っ張りながら歩き出した。






「こんな良い席、よく取れましたね……」

 案内されたのはまるでVIP席の様に普通の観客席とは別の場所から観戦出来る観客席だった。
 普通の観客席よりも位置が高いため、試合全体が見通せる。
 それに席の座席もまるで玉座のような煌びやかな席で座り心地も体にすぐに馴染んで最高だった。

「ま、こんなん朝飯前だよ」

 先生は自慢げにそう話した。

「あ、後ろにいる執事に頼めば食べ物でも飲み物でも何でも持ってきてくれるからな。自由に頼んでいいぞ」

 彼は私たちの後ろにいる燕尾服を着た男性に向かってそう言う。私は戸惑いがちに軽く会釈をした。

「先生って、ほんとに何者……」

「それは大会が終わってからのお楽しみなー」

 騎士って結構お金を貰っていそうな仕事だとは思っているが、こんな風なことをしているということは、もっと地位のある人間かもしれないと、私は更に頭を悩ませたのだった。

「お、どうやらもうそろそろで試合が始まるみたいだぞ」

 試合場所である草原に五人の選手が姿を見せる。
 全員騎士団の制服を着ており、マントは羽織っていないようなのでおそらく新人の騎士達なのだろう。

 そして、選手達はそれぞれの持ち場に着くと試合開始の旗が勢いよく振り下ろされた───。










「………………」

「ま、こうなるよな」

 結論から言おう。試合は選手全員退場になった。

 理由としては色々あるが、彼らの試合は旗が振り下ろされた瞬間からグダグダになっていたのだ。

 まず、旗が振り下ろされた後、一人の選手が勢いよく馬を走らせたせいで転げ落ち気絶してしまったため退場。

 もう一人は隣にいた選手と走っている途中に衝突し馬も人も再起不能で退場。

 残りの二人の片方は馬が暴走しレース外へ出てしまったことで退場。もっとう片方は馬が言うことを聞かず、ずっとその場に留まり続けてしまった為、自分から退場した。

 一言で言うと、地獄のような試合だった。

 まともな選手や馬が一人も一頭もいなかった。
 私は呆気に取られているが、先生は何故か妙に納得していた。本当になんで?

「こ、こんな試合が本当に現実で起こりうるんですね……」

「ん?いやこんなん決定事項だっただろ」

 元から結果が分かっていたような口振りの先生を疑問に思いつつ、観客は全てブーイングに包まれていた。
 中には卵や野菜、石を投げる人だっていた。怖い。

 そしてその後の試合も似たようなものばかりだった。まともな試合が一つも無い。

 そして会場の中に席を立とうとする者が現れ始めた時、救世主が現れた。

「……ん?……アイツは──……」

 先生の目線を目で追うと、四試合目の選手が走っている中で一際美しいフォームで障害物を難なく飛び越えるジェイの姿があった。

 彼は素早く、そして的確に障害物を飛び越えると、一番でゴールに辿り着いた。

「………」

 私はただひたすら無言で観戦していると、観客席から初めて歓喜の声が上がる。
 彼はそんな観客達に笑顔で手を振っている。女性達の黄色い叫び声が聞こえた。

「っ……!」

 一瞬、彼が私の方を見て怪しく笑ったような気がした。

 すぐ様不快感が胸を占めて、私は安心させる為に先生の顔を見る。

「………?」
 
 先生はまるで何かを思案している顔で眉間に皺を作りながら考えていた。









 昼食には選手専用の食堂で早めに食べてお腹を満たした。
 その後私は焦るように自主練習に没頭したのだった。

 ──少しでも不安を取り除くために。







 




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