女王候補になりまして

くじら

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脱・引きこもり姫

救出作戦③

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「そういえば、王子様方の専属執事っていつも何をなされているのですか?」

「えぇ~、大したことは何もしていませんよ。ただ単に殿下のお世話をしているまでです」

「わぁ!そんな、大したことなんて。十分すごいことだと思いますよ。そんな風に謙遜するなんて、お優しいんですね」

「あはは、ありがとうございます~!」

「………………おい、顔が笑ってるぞ」

 リルとゾイが楽しく談笑しているのを呆れた様子でセラはため息混じりにそう言った。

「俺たちの主が危険な状態にあるかもしれないのに、俺たちがこんなふうに過ごして良いのかよ」

「大丈夫だ、セラ。主のアルビー様はこういう時、必ず爆発やらなんやらしでかしてからが本番だからな」

「意味が分からない…………つまり爆発を起こしたら助けに行った方が良いってことか?」

「そういうことさ。ま、これは冗談のつも─────」

 瞬間、目の前の薄暗く気味の悪い酒場が大きな音と共に弾け飛び、周囲は火の海と化した。

 その様子を離れた場所で見ていた三人は唖然とした様子で眺めていた。

「…………………はっ!こんなことをしている場合じゃない!ゾイ!早くお助けしに行くぞ!」

「あ、ああ!リル様は危険ですから、そこでお待ちになっていて下さい!絶対に動かないように!」

「は、はい!」

 そう言って、二人は顔を青くさせながら駆け出した。















「ふははははは!これで、終わりだ!!」

 火の海と化した酒場の中、大男は一人でその場に立っていた。

「俺が、何の施しもなく身体に爆弾巻き付ける馬鹿に見えたか?はははは!この馬鹿共め!俺はハナから魔法をかけていて、死ぬつもりなんて無かったんだよ!」

 大男はひとしきり笑ったあと、熱を感じない身体で火が燃え移った木材の板や瓦礫を踏みながら立ち去ろうとした。

 しかし、その足を掴む者がいた。

「──馬鹿はどっちよ、この間抜け男」

「!?何故、生きて────」 

 瓦礫の中から顔を出したエマに大男は足をとられ、その場で尻餅をついてしまう。

 大男が次に目を開けた時には自分の喉仏に二本の刃が向けられていた。

「お前が雑魚を蹴散らしてくれたお陰で、余計な手間が省けたぜ」

「ほんと、魔法を使えるのは君だけだと思わないでね」

 アルビーとルイズが冷酷な瞳で大男を見下ろしていた。

 ルイズの片腕にはアテナも抱き抱えられていた。

「アルビー様、ルイズ様、助けて頂きありがとうございます」

 瓦礫の中から起き上がった私は二人にお礼を言った。

「ううん、エマの為なら勿論さ」

「お前は俺が守るって言っただろ」

 安堵の表情を浮かべたエマに、大男は目を泳がせながら問う。

「な、なんで生きてるんだよ!俺はお前を離さないでずっと掴んで──!」

「そもそも、その判断が間違いなんだよ」

「は…………?」

 ルイズは大男に刃を向けたまま、奴の顔にずいっと近づいた。

「僕たちは最初から炎耐性、水耐性、電気耐性、土耐性の魔法を施していた。何が起きても良いようにね」

「ど、どういうことだ!魔法は人間の身体では二つまでしか付与できないんだぞ!それ以上は付与される側もする側も負担になって倒れると───」

「うん、だから何?」

「──なっ!!」

 ルイズは大男の髪をぐしゃりと乱暴に掴むと、今までにないほど低い声で答えた。

「それはお前たちの限界だ。僕の限界はそんな安い程度ではない。そもそも僕を君の常識で判断するのはやめた方がいい。それと、僕の大切な人達を何の防御も無しに危険な場所に行かせる訳無いだろう?少しは考えたらどうなんだ。この弱小愚民が」

 私はアルビー様のようにルイズ様と長い時間ずっと一緒にいた訳ではないので、ルイズ様に関しては分からないことが沢山ある。
 しかし、今、この状態の彼は私でも判断出来るくらいに、とても深く、恐ろしく、激怒していた。普段、紳士的な顔をしてニコニコ笑っているルイズ様が、だ。

 (ルイズ様は多分、大切な人を誰よりも大切にしてくれるんだろうなぁ)

 ルイズ様は意外にも人思いの人間なのだ。

 反射的に隣のアルビー様を見ると、冷静に相手を捉えて絶対に逃がさないという気持ちを瞳から感じた。しかし、剣を持っている手が少し震えている。
 らしくないアルビー様の行動に私は疑問を抱きつつ、自分も剣を持ち、相手に刃を向けながら大男の腕をキツく縄で縛った。

 (縄を携帯していて良かった………燃えたら元も子もないもんね)

 私はようやく終わったと思い、爆発した周囲を見渡す。そこで私はとある人物と目が合い、思考を停止させた。

 轟々と燃え盛っている炎の奥の奥。

 アザーブルーの吸い込まれそうな瞳に、一本一本が眩い輝きを放っている金色の髪。
 白い肌は陶器のようで、頬だけはほんのりと赤い色で染まっている、誰もが二度見する程の絶世の美少女。

「───リル…………キャロメ…………!」

頭の中では、なぜここにいるのか、どうして私の居場所が分かったのか、たくさんの疑問が浮かび上がり、私の頭はショートした。

そう、つまり私はその場でぶっ倒れてしまったのだった。

「エマ!!」

「エマ!?」

アルビー様とルイズ様の私を呼ぶ声が聞こえたが、私の視界は暗くなり、何も聞こえなくなっていった。
最後に見えたのはアルビー様とルイズ様が私を抱えた姿だった。







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