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2. 病み人眠る

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発症後、特にすることない僕はとにかく寝た。夜に寝た。昼寝をした。夜になるとやっぱり寝た。過眠を憂慮して、「寝てばかりいないでたまにはお日様の光浴びてきなさい!」と言って、父は僕を外に追い出したが、それでも僕は外で寝た。公園のベンチで、芝生の上で、漫画喫茶で、電車の座席で、やはり寝た。
   秋は過ごしやすくて眠いし、冬は寒くて布団から出られない、春は春眠暁を覚えず、夏は寝苦しく、それでも寝た。
   特に夏は、外で寝るのが困難だった。図書館で寝ていると、注意されてしまうし、二級の障害者年金(国民年金)でもらえるわずかなお金では、いつもお店でというわけにはいかない。大体、飲食店なんかでは長時間の睡眠は憚られる。日陰を求めて寝る場所を探すが、寝床の具合も硬すぎると身体の節々が痛い。やっと見つけたのが、近くに木の生えた芝生の上だったが、日の傾きによって影が移動するためそれに合わせて移動するのが骨が折れた。しかも、日陰といえど夏は暑い。そんな、昼寝で、体力を消耗して夜は寝る。
   今思えば、あれ程眠たかったのは病状よりも、それを抑える精神薬の副作用の影響が大きかったのだと思う。また、これだけ寝ていると、流石に寝過ぎてねれない時もあり、それに対して睡眠薬を服薬して眠る。睡眠薬を飲むと朝目を覚ましても眠気が抜けず、昼寝をする。夕方起きて、夜ねれない、眠剤を飲んで寝る。あとはエンドレスリピートだ。
   その頃僕がお気に入りだった曲がある。まだ僕が健常者だった頃、高校の体操部の友達の家で聞いた曲。タイトルはスリーピングマンだった。メロディーや、声質も良かったが、その歌詞が秀逸だった。

   ※あーまたやってしまった
      13時間も眠ってしまったよ
      あーまたやってしまった
      1日を、無駄に過ごした

      誰かを、傷つけることもなく
      誰かに、傷つけられることもなく
      そんな風に毎日無駄に過ごしてる

※※僕は、僕は、僕はスリーピングマン
      一生眠ってる
      スリーピングマン
      一生眠ってろ
      スリーピングマン
      夢の中で泣いてる
      人生の半分以上を夢の中で過ごしてる

   ※リピート
   
      誰かに愛されることもなく
      誰かを密かに愛して
      そんな風に毎日無駄に過ごしてる

※※リピート

      あーまたやってしまった
      13時間も眠ってしまったよ
      あーまたやってしまった
      今度は18時間いや25時間くらい寝ていよう

      おやすみ

   確かこんな歌詞だった。これだけ寝て、寝るのが嫌になった時期もあった僕だが、それでも思うことがある。
 「人生に寝るより楽はなかりけり」
   この格言は、とても的を得ているということだ。実際この頃の僕は、結婚相手は人間が無理な時はお布団かなと、考えていたほどだった。
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