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保護施設
結界の外で
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真夜中過ぎ、月明かりの中、施設の前で見上げるように、三人の獣人が立ち止まっていた。
「かなり立派な結界じゃないか…」
ユーリがいる施設の魔道具の結界を眺めながら、豹族のヒイロはのんびりと呟いた。
ヒイロはグオルクの役所を運営している、豹獣人の一族の後継者であり、チイの番だ。
そしてグオルクの役所を取り仕切っているのも、ヒイロだ。
ヒイロの兄弟であり親友である、リーンの子供の事が心配になって、一緒に出向いていた。
「だって、私が協力したんだもの」
隣で楽しそうに、金茶色の狐族のシズがはしゃぎ、二つの尻尾をブンブンと揺らす。
シズはユーリの暮らす寮に住んでいて、ユーリが魔道具の改良を教わった獣人だ。
そして、ヒイロがいる役所の結界の魔道具を作り、起動させているのもシズだった。
「ちょっとシズ!ユーリちゃんに何を教えているのよ!」
シズとは反対側にいる豹族のチイが、シズに怒鳴る。
「だって、覚えるの早いし、機転が利くし…。いろいろ教えちゃった」
シズは悪びれもなく楽しそうに言う。
「…この結界、役所に有る魔道具並みに強度があるよな…」
ヒイロは結界を眺めながら、感心して言う。
「でも急ぎだったから、綻びの修正までは出来なかったのよね」
シズがのんびりとそう言うと、施設の侵入者感知の結界をおおっていた、濁った色の結界が解かれた。
「外の二人は確保した。シズ」
ヒイロがそう言うと、シズが頷き侵入者感知の結界に近付き、辺りを眺め、しばらくすると「この辺かな」と、言って、手にしていた道具を結界の側に置いた。
そして馬車が一台通れそうなくらい空けてもう一つ…。
するとジジッと音がして、二つの道具の間に光が走る。
シズはもう一つの道具を持ったまま手を伸ばし、結界の上に近付けると、その道具からも光が走り、三角形に三つの道具が光で繋がった。
その道具が作る三角形の内側だけが結界を遮断し、結界の中へと入れるようになった。
中から風の流れと、騒ぐ声が微かに響いてくる。
「これくらい開いていれば、良いでしょう」
シズはニコリと微笑んでヒイロとチイを見る。
「上出来よ」
チイはそう言って、背後に控えていた彼女の部隊の五人の獣人と共に中へと入っていった。
「ヒイロさんは行かないの?」
シズが動こうとしないヒイロに聞いてくる。
「チイの役目だからな」
ヒイロはそう言って微笑むと、外側にいた、施設をおおっていた結界を作っていた獣人二人を、ヒイロの部下が連れてくる。
「取り敢えず、地下牢屋行き」
ヒイロがそう言うと、転移の魔法を使ってその場から姿を消した。
そしてもう一人が、大きめの魔道具を二つ持ってヒイロとシズの元にやって来る。
「…ソレ、取り調べが終わったら、欲しいな」
シズが目を輝かせて、二つの魔道具を眺める。
ヒイロはジロリとシズを見て、深いため息をつく。
「…考えとく。ソレは保管庫に置いておいてくれ」
魔道具を運んできた獣人は頷き、転移の魔法で姿を消した。
グオルクの役所の隣に有る建物に、地下牢屋や取り調べ室、保管庫など、一時的に獣人達を拘束する場所があり、今回のような事件を起こした者が入っている。
そこは魔法が使えず、じんわりと魔力を吸い取られ、その建物の結界を作っていると言う、変わった魔道具が使われている。
魔力が有り余って事件を起こすなら、ソレを使って結界作ると、シズが作り出した魔道具だ。
ヒイロはチラリとシズを見て、何かまた、変わったものを作ろうと思っているな…と、思い苦笑いした。
「そろそろ、チイの方も片付いたかな…」
ヒイロは中に入っていったチイの方に、感知魔法を向けた。
「かなり立派な結界じゃないか…」
ユーリがいる施設の魔道具の結界を眺めながら、豹族のヒイロはのんびりと呟いた。
ヒイロはグオルクの役所を運営している、豹獣人の一族の後継者であり、チイの番だ。
そしてグオルクの役所を取り仕切っているのも、ヒイロだ。
ヒイロの兄弟であり親友である、リーンの子供の事が心配になって、一緒に出向いていた。
「だって、私が協力したんだもの」
隣で楽しそうに、金茶色の狐族のシズがはしゃぎ、二つの尻尾をブンブンと揺らす。
シズはユーリの暮らす寮に住んでいて、ユーリが魔道具の改良を教わった獣人だ。
そして、ヒイロがいる役所の結界の魔道具を作り、起動させているのもシズだった。
「ちょっとシズ!ユーリちゃんに何を教えているのよ!」
シズとは反対側にいる豹族のチイが、シズに怒鳴る。
「だって、覚えるの早いし、機転が利くし…。いろいろ教えちゃった」
シズは悪びれもなく楽しそうに言う。
「…この結界、役所に有る魔道具並みに強度があるよな…」
ヒイロは結界を眺めながら、感心して言う。
「でも急ぎだったから、綻びの修正までは出来なかったのよね」
シズがのんびりとそう言うと、施設の侵入者感知の結界をおおっていた、濁った色の結界が解かれた。
「外の二人は確保した。シズ」
ヒイロがそう言うと、シズが頷き侵入者感知の結界に近付き、辺りを眺め、しばらくすると「この辺かな」と、言って、手にしていた道具を結界の側に置いた。
そして馬車が一台通れそうなくらい空けてもう一つ…。
するとジジッと音がして、二つの道具の間に光が走る。
シズはもう一つの道具を持ったまま手を伸ばし、結界の上に近付けると、その道具からも光が走り、三角形に三つの道具が光で繋がった。
その道具が作る三角形の内側だけが結界を遮断し、結界の中へと入れるようになった。
中から風の流れと、騒ぐ声が微かに響いてくる。
「これくらい開いていれば、良いでしょう」
シズはニコリと微笑んでヒイロとチイを見る。
「上出来よ」
チイはそう言って、背後に控えていた彼女の部隊の五人の獣人と共に中へと入っていった。
「ヒイロさんは行かないの?」
シズが動こうとしないヒイロに聞いてくる。
「チイの役目だからな」
ヒイロはそう言って微笑むと、外側にいた、施設をおおっていた結界を作っていた獣人二人を、ヒイロの部下が連れてくる。
「取り敢えず、地下牢屋行き」
ヒイロがそう言うと、転移の魔法を使ってその場から姿を消した。
そしてもう一人が、大きめの魔道具を二つ持ってヒイロとシズの元にやって来る。
「…ソレ、取り調べが終わったら、欲しいな」
シズが目を輝かせて、二つの魔道具を眺める。
ヒイロはジロリとシズを見て、深いため息をつく。
「…考えとく。ソレは保管庫に置いておいてくれ」
魔道具を運んできた獣人は頷き、転移の魔法で姿を消した。
グオルクの役所の隣に有る建物に、地下牢屋や取り調べ室、保管庫など、一時的に獣人達を拘束する場所があり、今回のような事件を起こした者が入っている。
そこは魔法が使えず、じんわりと魔力を吸い取られ、その建物の結界を作っていると言う、変わった魔道具が使われている。
魔力が有り余って事件を起こすなら、ソレを使って結界作ると、シズが作り出した魔道具だ。
ヒイロはチラリとシズを見て、何かまた、変わったものを作ろうと思っているな…と、思い苦笑いした。
「そろそろ、チイの方も片付いたかな…」
ヒイロは中に入っていったチイの方に、感知魔法を向けた。
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