神の宿り木~旅の途中~ジン~

ゆう

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5 欠片 ~カケラ~

*リマ商会

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 リーンは『移動』を使って村から一番近い町、ヤマツカ町へ向かった。
 ここには、仲良くしているリマ商会がある。
 薬草や山菜を買い取ってくれたり、森や川の情報を伝えたり、お互いに協力し合ったり、何より『森の管理者』の事も知っている。
 そして、人族に擬態出来る獣人達を雇用してくれる数少ない商会だ。
「リーンさん。ちょうどよかった。品薄になりそうな薬草が有って!」
 リマ商会の茶髪の若い主が、リーンの顔をみて嬉しそうに微笑んだ。
「後で出します。先にちょっと話が…」
 そう言って、奥の部屋へ入っていく。
「約三十年前に、タミネキ村から大木が運ばれて行ったみたいなんだけど、何か知りませんか?」 
「…三十年前ね…。ちょっと待ってて、オヤジに聞いてくる」
 そう言って部屋を出ていった。
 しばらくすると、恰幅かっぷくのいい若者の父親が息を荒くしてやって来た。
「やっぱりあの木は、大切な木だったのか!」
「オヤジ、落ち着け!」
 若者は必死に宥める。
「…村の『御神木』です。ここ最近、多かった地震は、そのエネルギーが尽きかけていたからです」
 父親の方がドンと椅子に座る。
「ああ、あの時は何処からそんな大木を切ってきたのかと、話題になってた…」
 やはり記憶にあるくらいの事だったんだな。
「その木の行方が知りたいんです」
「待ってろ、仲間に調べて貰う」
 そう言って部屋を出ていった。
「…村の『御神木』を切った者がいるのか…」
「はい。なので結界石もほとんど機能せず、大地が痩せ細り風が止まって…。後少し遅かったら、あの一帯は朽ちていた…」
 若者は頭を抱える。
 ここの人達は『宿り木』の大切さを知っている。
「…なんて事を…。それで、今は大丈夫なのか?」
「とりあえずは…。後は、『御神木』の欠片が少しでも多く残っていることを祈ります」
「そうだな」
 詳しく聞かずとも、協力してくれる彼らは、とても貴重だ。
 こちらでは、わからない人族の事を調べてくれる。
「今日は泊まって行くだろ?あと、さっき言ってた薬草、薬棚の方を見てくれないか」
「ええ」
 リーンは若者と一緒に部屋を出た。

 翌日。
「隣町の貴族の豪邸に運ばれたらしい」
 と、その家の地図と、それを切ってきた商会の詳細など、色々と調べて来てくれた。
「ありがとうございます」
 一晩でコレだけ集めれる彼らは、やはり凄い。
「あと、荷馬車も要るだろ。手配しておいた。いつでも運べるからな」
 ありがたいことに、荷馬車まで準備済みだなんて…。
「もしかして、隣町まで来る気ですか?」
「ああ、リーンは先に行ってしまうだろうが、荷馬車を連れて向かう。回収したら、乗せて村へ戻れば良い。急ぐんだろう…」
 父親の方は嬉しそうに笑う。
「リーンが俺達に頼みに来るなんて滅多に無いし、頼りにしてくれて嬉しいんだ」
「よろしくお願いします」
 …そうだね。
 お互い協力しあって、平穏な生活を守ろう。と、約束したんだものね…。

 そして、隣町の貴族の豪邸に向かった。 
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