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聖(ひじり)の生い立ち
幼い頃 2
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その日は紗羅の母親が、友人達と一泊旅行に出かけ、寂しいと言う紗羅が、布団に潜り込んできて、一緒に眠ることになった。
幼く可愛い妹のおねだりに、断れるわけがなく、一緒に眠った。
眠りが浅かった聖は、カタンと音がして、ふと目を覚ますと、知らない男がナイフを布団に突き刺そうと、振り下ろした所だった。
びっくりして飛び起きると、そのナイフの先が一緒に寝ていた紗羅に刺さっていた。
紗羅!!
紗羅は目を開け、何が起こったのか分からず、ぼんやりとしていて、痛みに顔を歪め、視線が身体に刺さるナイフを見下ろすと声にならない悲鳴を上げた。
紗羅!!紗羅!!
声が出ないのが、もどかしい!
「…さ…ら…」
微かに声が出た気がした。
「…だ…れか…さ…らを…助け…」
必死に声を出そうとするが、掠れて囁くようにしか、出ない。
男はナイフを布団から引き抜き、紗羅から血が溢れてきて、布団を真っ赤に染めていく…。
そのナイフの先が聖に向いて、後退り、手に何かが触れて、見ると御守りだと兄から貰った角笛。
聖はソレを手に取り、おもいっきり吹き、かん高い音が鳴り響く。
振り下ろされるナイフをギリギリ避けて、逃げ惑いながら再び吹いた。
誰か、気付いて!
紗羅が!紗羅が!
バタバタと廊下を走る音がして、飛び込んできたのは兄だった。
「聖!?」
男はナイフの先を兄に向け、兄は持ってきた木刀で、ナイフを交わすが、子供が大人に勝てるわけがなく、力負けする兄を助けるために、聖は廊下に出て、再び笛を鳴らした。
気付いた大人達が慌ててやって来て、男を取り押さえようと奮闘し始め、聖は紗羅にかけよった。
「…さ…ら…」
紗羅の弱い眼差しが、聖を見上げてくる。
「医者を早く!」
兄が紗羅の側に駆け寄ってきて、大人達に怒鳴っている。
「…ひじ…り…兄…さ…ん…」
ダメだ…。このままでは…。
母さんが亡くなった時と同じ…。
もう、誰も…側から居なくならないで…。
大切に思うものを奪わないで…。
紗羅の目がゆっくりと閉じていく…。
ダメ!死なないで!
「…さ…ら…さら…逝…くな!!」
そう叫んだ時、眩い光が二人を包んだ。
何が起こったのか分からなかった。
…そのまま、聖も意識を失ってしまったせいだ。
その時、夢を見た。
亡くなったお母さんが、紗羅の傷口に手を当てて、そこへ聖の手を添えるように触れさせた。
…逝かないで…!
そう願うと、傷口が塞がっていく。
『二人で半分こ』
そう言った、お母さんの声が聞こえた気がした。
紗羅が目を開け、聖をみる。
「帰ろう。皆の所へ…」
そう言って、二人は手を繋ぎ、眩い光に包まれた。
二人で半分。
ナイフで切られた傷跡は聖にも現れ、傷口は塞がっても、内側は回復しておらず、二人とも、三日間、熱にうなされる事になった。
沙羅は、三日目に目を覚ました。
聖は初めてその力を使った反動と、元々の体力の無さから、三日目に目覚めたが、生死をさ迷っていた。
高熱が出たかと思うと、血の気か引いて青ざめたり、夢なのか現実なのか、分からなくなってしまうくらい、朦朧としていた。
そして、また目覚めると別の場所にいた。
だいぶん意識がしっかりとしてきて、ココが父親の親友の経営する宿の別館で、本宅と渡り廊下で繋がっている建物だと教えられた。
そして、その息子の、同い年の大輔が、時々、覗きに来ていた。
ゆっくりと回復しながら、何が起こったのかを父親から聞いた。
再度、兄の母親が刺客を送ってきたと言うことだった。
監視付きの田舎に追いやられていた兄の母親が、聖の命を狙ってきたと、そして、一緒にいた沙羅を刺してしまい、僕が光って沙羅を助けたと言うことだった。
この力の事も、教えてくれた。
母も同じ力を持っていて、悪い奴らに利用され、偶然父親達が助け、怪我した父親も母にその力で助けられたのだと。
そして、兄が苦しい立場に追いやられてしまったと。
「僕は兄さんと約束した。兄さんの力になると。兄さんは悪くない。父さんの後を継ぐのは兄さんが一番だ」
「お前は、どうしたい?」
「僕は…静かに本を読んで、暮らしたい」
大切な家族の側にいることで、誰が傷付くなら、一人のほうが良い…。
「分かった。沙羅は心配するな。あれは強い。兄の尻を叩いて、奮闘していたぞ」
父は楽しそうに笑う。
「…。」
「しばらくココで身体を休めろ。…そうだな。静かで良い場所がある。そこの準備が出来たら、そこで暮らすと良い…」
一ヶ月後。
聖は山の麓に有る、木造二階建ての家に住むことになった。
そこは、かつて父が学生の頃、仲間と共に暮らした、思い出の家だった。
幼く可愛い妹のおねだりに、断れるわけがなく、一緒に眠った。
眠りが浅かった聖は、カタンと音がして、ふと目を覚ますと、知らない男がナイフを布団に突き刺そうと、振り下ろした所だった。
びっくりして飛び起きると、そのナイフの先が一緒に寝ていた紗羅に刺さっていた。
紗羅!!
紗羅は目を開け、何が起こったのか分からず、ぼんやりとしていて、痛みに顔を歪め、視線が身体に刺さるナイフを見下ろすと声にならない悲鳴を上げた。
紗羅!!紗羅!!
声が出ないのが、もどかしい!
「…さ…ら…」
微かに声が出た気がした。
「…だ…れか…さ…らを…助け…」
必死に声を出そうとするが、掠れて囁くようにしか、出ない。
男はナイフを布団から引き抜き、紗羅から血が溢れてきて、布団を真っ赤に染めていく…。
そのナイフの先が聖に向いて、後退り、手に何かが触れて、見ると御守りだと兄から貰った角笛。
聖はソレを手に取り、おもいっきり吹き、かん高い音が鳴り響く。
振り下ろされるナイフをギリギリ避けて、逃げ惑いながら再び吹いた。
誰か、気付いて!
紗羅が!紗羅が!
バタバタと廊下を走る音がして、飛び込んできたのは兄だった。
「聖!?」
男はナイフの先を兄に向け、兄は持ってきた木刀で、ナイフを交わすが、子供が大人に勝てるわけがなく、力負けする兄を助けるために、聖は廊下に出て、再び笛を鳴らした。
気付いた大人達が慌ててやって来て、男を取り押さえようと奮闘し始め、聖は紗羅にかけよった。
「…さ…ら…」
紗羅の弱い眼差しが、聖を見上げてくる。
「医者を早く!」
兄が紗羅の側に駆け寄ってきて、大人達に怒鳴っている。
「…ひじ…り…兄…さ…ん…」
ダメだ…。このままでは…。
母さんが亡くなった時と同じ…。
もう、誰も…側から居なくならないで…。
大切に思うものを奪わないで…。
紗羅の目がゆっくりと閉じていく…。
ダメ!死なないで!
「…さ…ら…さら…逝…くな!!」
そう叫んだ時、眩い光が二人を包んだ。
何が起こったのか分からなかった。
…そのまま、聖も意識を失ってしまったせいだ。
その時、夢を見た。
亡くなったお母さんが、紗羅の傷口に手を当てて、そこへ聖の手を添えるように触れさせた。
…逝かないで…!
そう願うと、傷口が塞がっていく。
『二人で半分こ』
そう言った、お母さんの声が聞こえた気がした。
紗羅が目を開け、聖をみる。
「帰ろう。皆の所へ…」
そう言って、二人は手を繋ぎ、眩い光に包まれた。
二人で半分。
ナイフで切られた傷跡は聖にも現れ、傷口は塞がっても、内側は回復しておらず、二人とも、三日間、熱にうなされる事になった。
沙羅は、三日目に目を覚ました。
聖は初めてその力を使った反動と、元々の体力の無さから、三日目に目覚めたが、生死をさ迷っていた。
高熱が出たかと思うと、血の気か引いて青ざめたり、夢なのか現実なのか、分からなくなってしまうくらい、朦朧としていた。
そして、また目覚めると別の場所にいた。
だいぶん意識がしっかりとしてきて、ココが父親の親友の経営する宿の別館で、本宅と渡り廊下で繋がっている建物だと教えられた。
そして、その息子の、同い年の大輔が、時々、覗きに来ていた。
ゆっくりと回復しながら、何が起こったのかを父親から聞いた。
再度、兄の母親が刺客を送ってきたと言うことだった。
監視付きの田舎に追いやられていた兄の母親が、聖の命を狙ってきたと、そして、一緒にいた沙羅を刺してしまい、僕が光って沙羅を助けたと言うことだった。
この力の事も、教えてくれた。
母も同じ力を持っていて、悪い奴らに利用され、偶然父親達が助け、怪我した父親も母にその力で助けられたのだと。
そして、兄が苦しい立場に追いやられてしまったと。
「僕は兄さんと約束した。兄さんの力になると。兄さんは悪くない。父さんの後を継ぐのは兄さんが一番だ」
「お前は、どうしたい?」
「僕は…静かに本を読んで、暮らしたい」
大切な家族の側にいることで、誰が傷付くなら、一人のほうが良い…。
「分かった。沙羅は心配するな。あれは強い。兄の尻を叩いて、奮闘していたぞ」
父は楽しそうに笑う。
「…。」
「しばらくココで身体を休めろ。…そうだな。静かで良い場所がある。そこの準備が出来たら、そこで暮らすと良い…」
一ヶ月後。
聖は山の麓に有る、木造二階建ての家に住むことになった。
そこは、かつて父が学生の頃、仲間と共に暮らした、思い出の家だった。
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