聖~ひじり~ ソレを恋と呼ぶならば。⦅完結⦆

ゆう

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車の中

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 黒龍は、中古で買った車の後部座席を、平らにして横たわり、聖と一緒に昼寝をすることになった。
 聖にお願いされると断れない俺は、少し窮屈な体制で聖を抱えるように、横たわっていた。
 いつの間にか、聖は眠っていて、微かに寝息が聞こえる。
 …どうしよう。
 昨日の夜は無理させたし、起こすのも悪い…。
 黒龍が顔を上げると、窓の外からの木漏れ日が差し込んでくる。
 ココは人通りがないから良いが、外から丸見えだ。
 中で昼寝をするなる、カーテンを付けないといけないな…。
 足元も、何か置いて、もう少し安定して足を置けるようにしないと、眠るどころではない。
 後部座席の前に靴だけ置けるスペースを残して、同じ高さくらいに台を…収納できる丈夫な箱でも良いか…を、置いて、上に座布団でも乗せて高さを調整して、広々とした場所を作ろう。
 そうすれば、多少動いても落ちることはないだろう…。
 聖を抱えながら、そんな事を思っていると、車を停めてある空き地に、車が一台入ってきた。
 横たわっているから、誰が来たのかわからない。
 車が止まって、誰かが降りてきた。
 足音がこちらに近付いてくる。
 …気付かれるだろうか…。
 それに、この時間帯に来るとなると…。
「…何やってんのよ!」
 やっぱり、紅緒さん…。
 彼女は車の外から窓を覗き込んで、睨み付けていた。
 紅緒が車の扉を開き、目を丸くする。
「…ひーちゃん」
 そりゃ驚くだろう。
 まさか、ココにいるとは思ってもいないだろうから…。
「…あ…聖を起こしてくれませんか…」
 黒龍はここぞとばかりに、紅緒に頼む。
 さすがに腕の限界が来ている。
 離しても落ちはしないだろうが、心理的に俺が離せない。
「…聖。起きなさい!」
 紅緒が聖を揺さぶって、目を覚まさせてくれる。
「んん…っ…紅…ちゃん…?」
 聖がぼんやりと目を覚まし、身体を起こす。
 黒龍は落ちないように支え、聖が身体を起こしきったところで、手を離した。
「冷たい水まんじゅうを買ってきたの。おやつに食べましょう」
 紅緒が何事も無かったかのように、聖に話しかける。
「うん」
「麦茶ある?先に部屋に準備してくれるかしら」
「良いよ。麦茶は冷蔵庫に有るし、お皿も準備するね」
 聖はそう言って、靴を履き、家の中に戻っていった。
 それを二人で見送ると、紅緒が黒龍を睨んできた。
 黒龍は身体を起こし、ため息をつく。
「ちょっと!人気がないからって言っても、中、丸見えよ!」
「…俺も思った。…カーテンつける」
 紅緒も呆れた顔をして、ため息をつく。
「でも、来てくれて助かった。急に車で昼寝が始まったから、どうしようかと…」
「断れないものね…」
「ああ。甘えてくる聖を、断れる分けないだろ…」
「…ほどほどにね」
 紅緒はそう言って、家の中に入っていく。
 黒龍は再びため息をつき、車から降りて靴を履いて、車のドアを閉めると、家の中に戻っていった。  

 


 
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